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29 決勝だけどなんか様子がおかしい

俺が試合からもどってきた時には既にエレンの試合が始まっていた。


現状はエレンが【光騎士】による圧倒的装備差でギル兄さんを押しているように見えるが、ギル兄さんの顔には焦りなど微塵もなかった。

それどころか、徐々に体力に差が出始めてきている。


攻めより守りのほうが持久力は上だ、エレンが全力で攻めて押し切れない以上はこうなるか。


「さきほどの女子と力量は同じくらいだが、お前のほうが戦い馴れしているな」

「はぁっはぁっ。……それはどうも」


エレンが攻撃の手を緩め、後ろに飛び下がった。

その隙をギル兄さんが見逃すはずもなく、攻勢に出ることにしたようだ。


しかし、なぜここで引くんだ?

ワンチャンスにかけて最後まで出し切らないと、守勢にまわっても今の体力じゃ押し切られるぞ。


「……【紅蓮剣・豪】」


ギル兄さんが火属性の剣技を繰り出した、「閃」がビームなら「豪」は接触対象への爆発だ。


「……くっ【光盾】ッ!!」


しかしその爆発に対し、エレンが光の盾を空中に浮かべた。

てか、なんだあの技。

あんなことできたんかエレン。


ドンッ!


密度の高い爆発が光の盾とせめぎあい、相殺された。


「今だっ!【極光連剣・閃】!!」

「……」


まだ爆発で視界が悪くなっているところに、エレンがまた俺の知らない技を繰り出してきた。

エレンの剣から次々とビームが連射されていく、あんなん食らったら痛いじゃすまないぞ。

だが、ギル兄さんは紅蓮剣のオーラをまとった剣でビームを全て弾いているようだ。


「はぁっはぁっ。ゼノンへの、切り札だったんだけどね。参ったな、ははは」

「いや、悪くない攻撃だった。1年前の俺ならどこかで攻撃をもらっていただろう」


あれ俺にやるきだったんか。

おじちゃんシューティングとかけっこう苦手なんや、勘弁してくれ。


「……はは、でも、もうその剣は使い物にならないよね? この勝負もらったよ」

「……」


ギル兄さんの剣は大きくヒビが入り、今にも折れそうだった。

さすがにこれはキツイそうだな。

だが、あの余裕が気になる。

どう考えてもまだ負けを認めていない。



「これで終わりさ、【極光剣・豪】ッ!!」


エレンがありったけの魔力をこめて最後の追い打ちにかかった、これで決めにきたようだ。


「【魔力剣・瞬】」


ドスッ!


「……ガハッ!?」


……はっ!?

いまの一瞬で何が起きたんだ。


よくみると、エレンの「豪」をギリギリで回避した兄さんは、自らの魔力で剣を作り出しカウンターを決めていた。

強すぎだろ、エレンは気絶したようだ。


そのままドサリと倒れていった。


「逆転につぐ逆転ッ! 勝者ァアアアアッ! ギィイイイイル・クロスハートォオオ!!」

「「「オオオオオオオッ!!」」」


まじかよ……。


その後、少しあっけに取られた俺だったが、気をとりなおしてエレンのもとにかけつけた。

エレンはすぐに気絶から回復していたようだっただが、自分が敗北したのを悟ると悔し涙を流していた。


「くっ、ごめん。……少し一人にさせてくれ」


エレンが闘技場から走り去っていってしまった…

……放っておけない感じだったが、俺も次の試合がある。

あいつなら大丈夫だと思いたい。


そして、俺vs魔導学園のリーンとの試合だったが、どうにもエレンが気になった俺はオーバードライブを使って全力で戦っていた。

思いっきり一撃を入れてしまったため、すぐに試合は終わってしまったが周りに見えないように治癒魔法をかけておいたので大丈夫だろう。

治癒魔法はシスターちゃんに教えてもらった。


そして、目立った敵もいなくなりBブロックを優勝した俺と、ヨハンさんに打ち勝ったギル兄さんとの決勝の時がやってきた。

まぁ、ヨハンさんは魔法はすごいけど戦闘向きではないからな、魔法だけで戦えるわけじゃないし。

ここまで残ったのは、その魔法が身体能力を凌駕していたからだけどね。


とりあえず、心を落ち着けよう。

フィッテも心配そうにしているしな。


「大陸闘技大会もいよいよ大詰めぇええ! Aブロック優勝のギール・クロスハートとォ! Bブロック優勝のゼノン・クロスハートの頂上決戦だぁああああ! どちらもこの大会に相応しい実力をもった天才、クロスハート家の最終決戦をとくとご覧あれだぁ!」


「「「ウオオオオオオオオオオオっ!!」」」


「……久しぶりだなゼノン、数年ぶりといったところだな」

「……」

やべぇよ、ギル兄さんの目がマジだよ、やさしい言葉を血走った眼で言ってくる……

なんか手とか足とかもぷるぷる震えているし、どうしよう。


「無言、か。そうだな、全ては試合で語ろう」


あ、はい。


「それではァアアアア! 試合ッ! 開始ィイイイイ!」


やるしかないか……。


「「「オオオオオオオオオォオッ!!!」」」


「「ッハァ!!」」


俺たちは全力で魔力を高め、身体強化を行った。




──────────

──────────


ゼノンの決勝試合の少し前、エレンは闘技場を飛び出し無我夢中で走っていた。

悔しかった、自分の全てを出し切っても歯が立たなかったことが。

友に、目標に、過去の自分の期待に応えることのできない自分が惨めだったのだ。


「くっ、はぁはぁ……。ダメだな、僕は。でも、走ってたらすこしスッキリしたみたいだ。そうさ、まだ僕はこんなものじゃない。まだ、僕には未来があるんだ、絶対に追いついてやる」


しかし、エレンは強かった。

挫折してもそこで挫けず、以前より前に進んだ精神ですぐに立ち上がる力を持っている者だったのだ。


……しかし、この日ばかりは運が悪かった。


「あらぁ? あの筋肉達磨の立案でメンドクサイことになったと思ったけど、ワタシ好みの良い子がいるじゃなぁぃ。……ふふっ」


そこには、悪魔が居た。



──────────

──────────



エレンに不吉な影が。

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