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25 蠢く者たち

おや…魔族の様子が…

俺は資料を見て回っていた。

それにしても、オーバードライブの反動が効いているな。

魔力の方はいいんだが、スタミナの消費量がやばい。


スキルの判断かなにかで、優先的に魔力が削られていたみたいだが、それでもキツイ。

これでは連戦できそうにないな、このスキルを使いこなすには俺の成長待ちってとこだな。


それにしても悪魔にしては弱かった、俺に加護をくれた神の爺さんが警戒するレベルの存在だったはずだが…地球と異世界では悪魔のレベルに差が開いているのかもしれない。

なにせ悪魔や鬼は魔力が主なエネルギーのはずだ、俺に寄生していたみたいにな。


となると、地球の平均魔力量からしても悪魔のレベルが高いことは容易に想像できる。

確証はない、ただあいつが弱っていただけかもしれないしな。


そこまで考えたとき、俺は気になる資料を見つけた。

(なんだこれは?「勇者召喚」の記録?)

読んでみると、いろいろなことが分かった。


まず、あの悪魔はここの主なんかではなく、別の悪魔(もしくは悪魔側に味方する人間)が勇者召喚に対抗するために生んだ研究成果だということだ。

あの悪魔は培養カプセルに人間やモンスターを融合させたキメラに悪魔の精神が入り込んだ存在らしい。


ようするに「勇者召喚」ならぬ「悪魔召喚」だ。

しかし、この研究は途中で頓挫することになった…その時点での悪魔召喚の研究成果、最強の召喚体である準魔王級ですらたった一人の勇者に歯が立たなかったからだ。

そして残った悪魔たちはどこかへ散るか、培養カプセルのように勇者がいなくなるまで眠っていたということだ。


そして、勇者召喚そのものに関する記述も見つかった、それに関係する道具と共に。


「まじかよ、勇者は聖女が任意で召喚できるのかよ。条件はあるみたいだが。しかもこの計測器、マイナスエネルギーとプラスエネルギーの関係をみるに、もう準備が始まっているんじゃないのか?」


なにも、召喚だけが勇者の誕生方法ではないが、召喚でも勇者は誕生させられる。

そして召喚側の条件がプラスとマイナスのエネルギー関係だった。

勇者を召喚すれば多くのプラスエネルギーが消費されるらしい、その消費量が女神の加護と関係するらしい。

そして、今の計測器の数値は勇者召喚をするには十分な数値に達していた…しかもまだ増え続けている。


「おいおい、いったい何人の勇者を召喚する気だよ!」


さっきの悪魔が起きたのも、俺の侵入とエネルギーの変動によってカプセルが緊急性を感知したからだろう。


(いったいどこの聖女が勇者召喚なんて準備してやがる。魔王も出現していない時にこんな消費をしていたら、いざって時に切るカードがなくなるぞッ!)

俺は王国の聖女がチラついたが、あいつは俺が勇者であると認識しているしさらに召喚するとは思えない。

……まずいな。


そこまで考えた俺は、一旦引き上げて迷宮都市の教会で司祭にでも聖女たちの行動を聞けないか試すことにした。


「せめて誰が聖女なのかと、聖女の居場所さえわかれば片っ端からつぶせるはずだ」


──俺は走りだした。



──────────

──────────


人族・エルフ族・ドワーフ族・獣人族が暮らす大陸から海を渡った先にある大陸、魔大陸。


ちょうどゼノンが資料を漁っている頃、魔大陸最大の国【魔国ヴァンゲイム】では魔公爵たちが蠢いていた。


「やつらの大陸の迷宮に潜ませておいた結界が壊れた。ついでにカプセルの眷族も死んだみたいだな、繋がりを感じなくなった」

「あの結界はもうずいぶん放置していたじゃない、どうせ寿命でしょ。アンタの眷属のこともワタシに何の関係があるのよ」


数人いるうちの一人、筋骨隆々の魔人が呟くと背中に蝙蝠の羽を生やした女型の魔人が答えた。


「違うじゃん、問題はそこじゃないじゃん、エネルギーの変動と今回の一件の関係性の問題じゃん。どうみても教会が動き出したってことじゃん」


集った魔人の中でも子供のような体格の女型魔人が反論する、彼らが警戒しているのは勇者についてのようだ。


「確実に勇者が来る、魔王様がいない時を狙うつもりだろう、博打的な戦略だとは思うがな。だが、今こちらがその博打に付き合わされるのはいささか分が悪い、対抗するしかないだろう。召喚には召喚を、だ」

「筋肉達磨にしてはいいこと言うじゃん…?」

「フンッ」

「「「……」」」


発言をしていない公爵を含め、満場一致となったようであった。


「遅れをとりたくはない、強引な方法を取ったとしても先手を打つ。そうだな…2年後だ、やつらの大陸で行われる闘技大会がいい、そこで人間を生贄にするぞ。……それこそが、俺たち魔族だろ?」


──世界は動きだす。


──────────

──────────


結局、教会のシスターちゃんに案内してもらって司祭に聞いたのだが「聖女様はつい先日王都へ向かわれました。そして、他の聖女様方を含めそれ以上の情報は持ちえていません」だ、そうだった。

司祭のおっちゃんの態度が妙に親切だったのだが、なぜなのか。

勇者の件は王国の聖女しか知らないはずだぞ。


よって俺は打つ手が無くなり、とりあえず帝国の聖女が戻るのを待つことにした、無駄に動いても効率が悪い。


……数日後

そして俺は育成機関の年少組みで自己紹介を行っていた。

ちなみにクラスは冒険者のランクと同じ数だけある、Sはないけどな。

俺のパーティメンバーは全員Aだ。


みんな一撃で終わらせていた、まあそうなるよな……

わたあめ魔石もたんまり稼いだし、フィッテの武器でも新調してやって順調なスタートを切ったのだった。



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