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20 光vs闇のデュエル

エレンの主人公補正は勇者そのものですね

冒険者ギルドに戻ってきたとき、ギルド内部は大騒ぎだった。

ゴブリンロードの死体を引きずった7歳児がいたらそりゃそうなるわな。


曰く「伝説の再来」、曰く「金色の聖騎士」などなど……。

すべてイケメン君の称号だ。


「さすがイケメン王子、これだからイケメンは……」

「イケメンって…?よくわからないけど、僕のことはエレンでいいって言ってるじゃないか。それにゼノンだっていろいろ言われてるみたいだよ」

「おまえ、「漆黒の腰巾着」、「騎士の威を借るウルフ」って褒めてないじゃん」

「は、ははは……」


ゴブリンロードを持ってきたのも、装備の豪華さも含めて成果はエレンが出したことになってしまった。

エレンは俺がやったと何度も説明したが、助け出された狼獣人の女の子がエレンをベタ褒めしていたことで、謙遜だと思われて終わってしまったのだ。

まぁ俺がなにも言わなかったからでもあるけどね、話す余地がなかったとも言う。


帰る途中いろいろ話して仲良くなった俺たちは、お互いに自己紹介をして今までの修行や戦闘スタイルに華を咲かせていた。

狼少女の名前はミーシャで、獣人村の村長の娘だったらしい。

村の子供たちと遊んでいたら盗賊に捕まり、奴隷商へと売られてしまったとかなんとか。

そして結局奴隷商も、モンスターに襲われミーシャを囮にして逃げてしまったという流れのようだ。


エレンの主人公補正が半端ない。


ちなみに獣人には年齢を数える習慣がなく、「なんとなくこんくらい」で自己申告みたいだ。

本人曰く「たぶんエレン様と同じ」だそうだが、俺にはわかる。

それ、ぜったい今考えただろ……。


「まぁロードの売却値と依頼の報酬はお前が持っとけよ、もうここで俺がもらえる雰囲気じゃないし」

「はぁ、わかったよ。ミーシャの奴隷解放代にしよう」

「あぁ、エレン様……」


ミーシャはすでにエレンにベタ惚れで、エレンが望むなら奴隷解放をしなくてもいいとまで言っている。

たぶん、メイドさんから見た俺とフィッテもこう映っているのだろうと思うと、頭が痛くなるな…


「だけど、ただ受け取ったんじゃ僕の気も済まない、本来お礼をするのは僕の方なのに。だからゼノン、僕は君に決闘を申し込むよ」

「ふぁっ?」


……ふぁっ?


「ああ、勘違いしないでくれ……、君からなにかを奪おうっていうんじゃない。僕と戦えば周りも君への評価を正すだろうし、なにより僕のスキルが気になるんだろ? 自分でもこのスキルの価値は分かっているつもりだ。ここに来るまで話していた内容もスキルのことばかりだったからね」


そう言うエレンの顔は、好敵手をみつけた戦士のようにニヤついていた。

あぁ、そういうことね。

スキルの効果は知っているが、ここでツッコミを入れるのはナシだろう。


「いいぜ、強すぎて泣くんじゃないぞ?」

「ははっ、君こそっ」


「「「おおおおぉっ!?」」」


エレンの話で持ちきりだったギルドが盛り上がった。


「金色の聖騎士の実力が見れるぞっ」

「いや、案外あのウルフもただものじゃないな…重心がブレていない」

「重心もなにもお前魔法職だろ…」

「うるせー」

「金色の聖騎士×漆黒のウルフかしら…それとも漆黒のウルフ×金色の……」


おい最後の!決闘と関係ないだろ!


そうこうしているうちに野次馬たちにせっつかれて、俺はギルドの訓練スペースへとやってきた。


「じゃあ、審判はとりあえず私がするわね…準備ができたらいってちょうだい」


結局どちらが攻めか受けかで議論していた女性冒険者の一人が、代表して審判になったらしい。

周りからは男性冒険者からの期待と、お姉さん方の熱い視線が集まる。


「準備はできてるよ」

「ははっ余裕だね、僕もいつでも大丈夫さ」


まあ余裕か余裕じゃないかでいえば、どちらかといえば余裕だ。


「エレン様、がんばって……」


vs肥満体のときのデジャヴを感じる。

今回はヒロインが向こう側だが。


「では、開始っ!」

「「……フッ!!」」


俺は身体強化を、エレンは光騎士を全力でかけはじめた。

確かに身体強化のほうが効率は劣るだろうが、俺のほうがスキルそのもののレベルが違う…純粋なパワーならこちらに分がある。


しかし、遺伝魔法の光騎士の真価はそこじゃない。

身体強化と違い、自分の肉体以外にも装備に補正をかけられるのだ。

しかも、最初に感じた違和感の通り、あいつの魔力そのものが変質していた。

おそらく光魔法にも限定的に補正がかかっているのだろう。


対する俺は、いつもの縛りがあるため限定的な魔法しかつかえない。

ここで使って勝ってもいいが、聖女からの口止めやパパンやママンなど俺を守る人が極端に少ないこの状況下での勇者騒動は避けたいのだ。


まぁ、だからといって、負けるつもりでやるくらいなら最初から戦わないし、この条件で勝てると思ったからこその決闘なんだけどな。


「決闘中に考え事かい?…僕の準備は整った、こちらからいくよっ!【極光剣・閃】!!」


うぉお!?あれってパパンの技の光属性版かっ!

こうやってみると、剣術スキルの技っていうのはけっこう体系化されているんだな。

……だが。


「そんな遠くからで当たるかよっ」


俺は余裕で回避する事に成功した。

甘いぜ、甘っちょろいぜイケメン。


でも、あれがパパン並みの人外になると一撃必殺になるんだよなぁ。

やっぱり基本的なステータスが大事だってことだね。


「もちろん分かってるさっ!」


エレンは最初から計算済みだとでも言うかのように俺が避けた場所に剣を合わせてきた。

俺は態勢が若干崩れているので、今度の剣は避けるわけにはいかない。

それだと次の剣がどんどん続きジリ貧だからだ。


なのでここは、弾くっ!


「よっと!」


俺は回し蹴りで剣の腹を弾き飛ばし、そのまま軸にしていた片足で1回転して勢いの乗ったかかと落としを放った。


ズバンッ!


「うわっ!? なんて威力の蹴りだ!!」

「おらおら、どんどんいくぜ?」


俺はそのまま片足を軸にして、回し蹴り→かかと落とし→回し蹴り→かかと落としの順番で回転しながら追い詰めていった。

エレンは剣を構えなおそうとするまえに弾かれ、避けて追い詰められ、また弾かれを繰り返し、ついに態勢が崩れ一撃を受けてしまう。


「……グッ! ガハァッ!!」


もろに回し蹴りが脇腹にクリーンヒットし、呼吸が乱れたエレンの足は止まった。

回避ができないなら、次は大技だな。


「これでもくらいなっ!【正拳突き・陰】」


これは俺が作ったオリジナル技だ。

放っているのも威力もただの正拳突きだが、闇魔法で拳の幻影を数個作りだし、相手に防御のポイントを錯覚させることができる。


拳のスピード故、技の派手さ的に試合の相手しか何が起こったのかわからないだろうし、もしバレても「高レベル格闘術です」で言い訳できるところが長所だ。

肥満体戦で決めた、バレない程度の元素魔法だな。


「なぁっ!? ゴホォッ!!!」


エレンの鳩尾に、正拳突きがもろにめり込んだ。

回避ができない以上、エレンは防御するつもりだっただろうが、そんなことはこっちもわかってる。


「くっ、やっぱりまだ勝てな「……そこまでです!魔王」いな。……え?」


エレンが膝を折り、これで決着かと思った直後…シスターの恰好をした6~8歳くらいの少女が割り込んできた。


なんぞなんぞ?

って、あの子昨日の子じゃんっ!

一目散に逃げていった子。

こんなとこでなにしてんだ。


それに魔王なんてどこにもいないと思うんだが。


「大丈夫ですか! 光の聖騎士様っいま私が回復してさしあげますっ!」

「えっ? ……君は?」

シスターはエレンの元に駆け寄っていった。

なるほど、だんだん読めてきたぞ。


これはつまり、……どういうことだってばよ?


少女シスターちゃん、目が合ったときから君の事がわからなかったよ。


主人公の圧倒的戦闘力。

ちなみに現在はC級の上位くらいです。

無系統以外の魔法込みでB級下位に届くか届かないかくらい。

魔法とのシナジーができればもっと上にいけますが、本人曰く現在模索中らしいです。

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