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143 邪神ゼノン


邪神戦がはじまり、どれだけの時間が過ぎただろうか。

こちら側の優勢は揺るがず、圧倒的なまでに押しているはずなのに、なぜか焦燥感が拭えない。


俺もスラキューを装備し、時空魔法で奴の動きを予測しながら戦っているのだが、不審な点はない。

この焦燥感はいったいなんなんだ。


そして傷つき弱りきった邪神に、最後の一撃と言わんばかりに振り下ろされたギル兄さんの剣が、奴の顔にめり込んだ。


「ウォオオオオッ!!」


ギル兄さんの剣はそのまま奴の体を頭上から切り下ろしていき、ついにはその体を両断した。

やはりこの戦力で奴に負ける訳がない、俺の思い過ごしだったか?


「はぁっ、はぁっ、ふー。弟よ、良いスキルだな、これは」

「まあ、これでも一応勇者のユニークスキルより上位の、アンリミテッドスキルだからね」

「そうかそうか、ついに勇者の格すらをも超えたかっ!! さすが俺の弟だ、目標にしがいがある。ハハハハハッ!!」


戦いが終わり、一息つこうとするギル兄さん。


だが、やはりおかしい。

あまりにも呆気ない。


これでもう全てが解決するはずなのに、俺の焦燥感は増すばかりだ。

なにか、なにか見落としていないか……?


戦いが終わり、未来予知の時空魔法もオフにしてしまったが、もう一度発動して……

そう思った時、奴の体から黒い何かが飛び出てきた。


「なぁっ!? ギル兄さん危ないっ!」


咄嗟とっさにギル兄さんを庇い、前に出る。


「グ、ガァアアアアッ!?」

「ゼノンくんっ!?」


邪神から飛び出た黒い飛来物は俺のスラキューシールドを透過し、胸の中に入り込む。

入り込んだ途端魔力がかき乱され、何かに寄生されたみたいに俺の思考を蝕み、黒く塗りつぶしていく。


まさかコイツ、最初からこの寄生が目的でワザとッ……!!


「ガアァアアアアアッ!!!」


────そして、目の前が真っ暗になり、俺の思考が塗りつぶされると同時に意識は途絶えた。


──────────

──────────


ゼノンが寄生された直後、体に黒い魔術模様を浮かび上がらせた邪神ゼノンが立ち上がった。

その姿は以前の彼とほとんど変わらぬものの、雰囲気はまるで違う。


黒く立ち上る魔力や、冷酷な雰囲気。

中身の何もかもが入れ替わってしまったのだ。


『フー、ようやく現世に到達できる、最強の肉体を手に入れたか。さしずめ、今の私は邪神ゼノンといったところかな?』

「なんだっ!? どうしたんだよてめぇっ!! おいなんとか言え、親友ゼノン!!」

『この魔力にスキルの羅列。当初はカーネインの肉体を狙っていたが、予想以上の収穫だ。おや? この体の記憶によると、君はファイスくんだね。いやいや、君の魔法も中々良かったが、さすがにこの肉体とでは比べる相手が間違っている。そう落ち込まなくてもいいよ』

「チイィッ!! ……おい親友ゼノン、こんな所でヘマするなんざ、俺は認めねぇぞっ!! いい機会だ、てめぇをぶっ飛ばして目を覚まさせてやらぁっ!! 【連続魔法・アイスバーン】ッ!!」


ファイスが叫ぶが、邪神はどこ吹く風で肉体に宿ったエクストラスキル、魔法反射を発動する。


「……ガハッ!!? ……クソが、てめぇそんなスキルまで隠し持ってやがったのか」

「ファイスッ!?」

「下がってろセレナッ!! こいつはお前の手に負える相手じゃねぇ!!」

「…………ッ」

『ふむ。記憶の全てを引き出すのには時間がかかりそうだが、能力全般は使いこなせるようだな』


魔法を反射され致命傷を受けるファイスだったが、セレナを近づけさせない。

彼とて、どうにもならない力量の差を熟知しているのだ。

そして、知っているのだ。


──このままでは、全滅するという事を。


「うそだよね? ……うそだよね、ゼノンくん」

「この馬鹿ゼノン、目を覚ましなさいっ!! あなた、こんな最後の最後で何をやっているんですのっ!?」

「無駄だっ!! 今は生きる事だけを考えろっ!!」


傷を負ったファイスが叫ぶ。


『さて、どうするカーネイン? お前の欲していた少女の魂は私が殺した以上、私の管轄だ。私をどうこうしない限り、開放される事はないよ?』

「……そういう事かい。お前の本体は邪心そのもので、肉体ではない。故に、ここで僕が倒されれば僕を乗っ取り、お前を倒しても乗っ取られるという事か」

『ご名答!! さぁ、全員我が下僕と成るがいい。全能神の奴に一泡吹かせるのも、もう少しだっ!! ハハハハハハッ!! ……と、思うじゃん?』

「「「はっ?」」」


──────────

──────────


えー、こちらゼノン。

邪神の奴に乗っ取られ、視界が黒く塗り潰された時はやばいと思ったが、そうでもなかった。

なんと俺の体に寄生していた邪神に反発するように、神の爺さんの加護が覚醒し、俺自身の意識が戻ったのだ。


ちなみに加護の進化はこんな感じ。


(アンリミテッド)

【地球の創造神の加護(覚醒)】

邪神の奴がちょっかい出してくると思うから、魂にプロテクトかけといたぞい。

by神の爺さん


とかいうふざけた説明だった。

なんだプロテクトかけといたぞいって。


まあ意識が戻ればなんでもいいから、別に文句はないんだけどね。


さて、意識が戻った俺だが、実はただ意識が戻ったわけではない。

なんと精神世界上で俺を乗っ取った奴の魂がくっきりハッキリ見えちゃってたりして、今なら攻撃し放題なのだ。


直感だが、たぶんここでの俺のステータスと、乗っ取った奴のステータスは同じ。

そしてお互いがぶつかり合い、どちらかが勝利すれば、どちらかが完全にこの世界から消える事になるだろう。

魂の集うここで魂の行き場を失うという事は、そういう事だ。


であるならば、やることは一つだ。


ここで奴を、完全に消滅させるっ!!!




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