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133 死の体現者

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女神フレイに飛ばされた直後、ファイスとセレナはゼノンの予想通りアルトミー連合国のアカデミアへと転移していた。

現在はそのアカデミアの町周辺、外壁あたりである。

アルトミー連合国の戦力が集中するアカデミアに対し、上位の神聖騎士達が正面から直撃する構図のようだ。


「最初に落すべき重要拠点であるアカミデアは完全に戦場になっていると思ったが、ここから見える限りじゃこれからってとか。これならまだ間に合うんじゃねぇか?」

「……ん。あの女神の言う通り、まだ間に合う」

「まあ、本来なら敵陣に正面衝突なんて避けて通るべきなんだがな、舐めていやがる」


(しかしこれは好都合だぜ。既に乱戦になっているなら兎も角、今から正面衝突する前提なら魔法が十全に発揮できる。奴らが連合の本質、国単体での戦力の低さを侮っているってるうちが勝負か)



「とりあえず奴らがアカデミアに接触する前に、こちらから乗り込むぞ」

「……了解。私達のスキルは乱戦になると他人も巻き込む、やるなら今」


戦略を一瞬で組み立てたファイスとセレナは、町に接触する神聖騎士の数を減らすため攻勢に出たようだ。


(仮に俺達が数人の騎士をうちもらし、町や魔法学校に騎士が流れ込んでもそれはそれで構わねぇ。少数ならば校長や教師陣、町の冒険者共でなんとでもなるはずだ)


そしてファイスとセレナが敵陣に急接近すると、向こうもこちらの存在に気付いたようだ。


「……む? なんだ貴様ら、この大陸の原住民か?」

「ああ、そうだぜ? 簡単に言えば、お前たちを殺しに来た者だ」


(この騎士共、俺達に話しかけている隙に魔法攻撃の準備をしてやがるな。戦闘技術や魔法の構築はおざなりだが、頭まではなまくらではないようだ)


「悪いが俺はどっかの誰かさんみたいに、敵に手加減するつもりはねぇんだ。俺の故郷を襲った事を後悔して死んでくれ【連続魔法・アイスバーン】×10」

「なっ!? ……ッ」


ファイスが最大火力の魔法を唱えた瞬間、10人以上の上位騎士が氷漬けになった。

敵が100人ほどであることを踏まえても、大打撃となる不意打ちである。


「ほう、これがユニークスキルってやつか。さすがに中位から上位の騎士だけあって、一人二人落せれば上出来だと考えていたが、これほどとはな」


(ゼノンのやつはこのユニークスキルを複数所持して居やがるらしいからな、とんでもねぇ。だが、それはそれでいい、最強の目標は高くあるべきだからな)


「ばっ化け物!? ……まさか、この大陸の勇者か!?」

「そういうのは俺の理不尽ダチに言ってやれ、真顔で嫌がってくれるぜ? っと、次は敵さんの攻撃か。セレナ!!」

「……わかってる。黒龍召喚、白竜召喚。私達を向こうの魔法攻撃から守って」


ファイスの攻撃の直後、上位騎士から集団で魔法攻撃が飛んで来るが、セレナの召喚した2匹の竜王により全て阻まれている。

元々魔法耐性と物理耐性が高い黒竜と、攻撃型とはいえモンスターの頂点に立つ白竜の鱗相手では、今の魔法は火力不足だったようだ。


「なんだ、なんなんだこいつらはっ! 俺達はいったい何を相手にしているんだ!?」

「絶望しているところ悪いが、俺はお前たちを逃がすつもりなど毛頭ねぇ。安心して逝け」


──連続魔法・アイスバーン。


その後は一方的な展開により、勝敗は決した。

騎士達が相手にしていたのは、「死」の体現者であったのかもしれない。


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女神アテナを倒した俺は、解放されたミュラ姉さんに回復魔法をかけている。

仲間たちが少し心配でもあるけど、全員の実力を思い出して考えるのをやめた。

上位騎士レベルであいつらに太刀打ちできるわけがないからな。


「それにしても強くなったなゼノン、兄としてこれほど誇らしいこともない」

「ギル兄さんこそ、まさか王になってるなんて思わなかったよ」


というか、ギル兄さんが王になったってことは俺がクロスハート家を継ぐことになるのか?

まあでも、あののんびりとした土地でだらだらするのも悪くは無いかな。


「……ハッハッハ! そう思うか? まあまだ正式に王になったわけではないけどな」

「…フ、フンッ、それでも王は王だわ。国を守る王の責任に基づき、アテナ様相手に善戦したことは褒めてあげる」

「ユリアちゃん、あいかわらず態度がすさまじいね」


ツインテちゃんがまた暴走しだしたようだ。

胸を張ってギル兄さんを威嚇しているが、いったい何と戦っているんだユリアよ。


「すまんギル兄さん、ユリアは意地っ張りなんだ」

「ハハハッ! いや、構わん。弟の仲間は面白い奴が多いな。今後とも弟を頼むぞ」

「なっ!急に何を言うのよッ!?そんな、婚約なんて早いわ」

「「「そこまでは言ってないから」」」


今日も今日とて、ユリア爆弾が絶好調のようである。

むしろこの爆弾が不発に終わったところを俺は知らない。


さて、とりあえずミュラ姉さんの回復も済んだし、ここはギル兄さんに任せて俺は仲間の回収にでも行こうかな。

最初は一番早く終わりそうなファイスチームからだ、あいつはスキル構成的に殲滅速度重視だからな。





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