122 王城へレッツゴー!
人物紹介その3に、竜王状態のギールの挿絵を追加しました。
挿絵に抵抗のある方はお気を付けください。
なんちゃって囲碁大会の翌日、いつものメンバーを連れてアリサさんの孤児院へ戻って来た。
ちなみにクロスハート領へと戻った一日の間に、ユリアには別大陸について色々と語っておいた。
とりあえず理解はしたみたいだが、向こうの大陸で別大陸といえば魔大陸というのが一般的なので、色々と大発見であると興奮しっぱなしだったみたいだ。
まあ確かに別大陸があるというのはこっちの大陸にも広まってないしね。
ハドウも俺たちや信用のおける首脳陣たちにしか秘密を明かしていないだろうし、闘技大会から一か月経ったとはいえ、この情報は上層部ですら知っているものは僅かだろう…
まあ今はとりあえず勇者の動向が先だ。
「…というわけで、一日隠れてたわけなんだけど。勇者の方でなんか騒ぎとかあったりした?」
「あらぁ、もう外は大変よ?町を巡回している騎士や兵士がどんどん入れ替わっているわ。…おそらく勇者の差し金でしょうね、好きな子の動向が掴めなくなっただけでヒステリーなんて…男の風上にもおけないわぁ」
…アリサさんの男子論は置いておくとして、どうやら勇者が思いっきりボロを出し始めているようだ。
行動の読みやすい奴で助かる。
まあユリアや伯爵から聞いた限りでは、こういう性格のやつなんだろうなっていうのは知っていたし、なんら不思議ではないんだけどね。
…ただ伯爵の管轄下である領内で、ここまで一気に崩せるのがちょっと違和感だ。
もしかしたら、向こうの準備は既にほとんど整っていたのかもしれない。
「…やっぱりこうなったね。ゼノンがだいたいは予想していたみたいだけど、これだと流石に動きづらいかもしれないよ」
エレンも俺の予想が分かっていたみたいだ。
だが動きづらいっていうのはちょっと違う、むしろ好都合だ。
「確かにここまでは予想の範疇だな。…それで次にどうするかなんだけど、とりあえず騎士に捕まりに行こう。牢屋へレッツゴーだっ!」
「「「…えぇっ!?」」」
いやいや、大マジですよみなさん。
「…いや、俺は賛成だぜ。こういうのは喧嘩でも言える事だが、裏で動いてる奴を放置して下っ端に対応しててもロクなことにはならねぇ」
「さすがはアカデミアの番長、ここらへんは得意分野ってことか」
ファイスも元々こういう作戦で俺たちに接近してきたしな、勇者の悪知恵なんて全部お見通しってことなんだろう。
「…番長は余計だ。んで、だいたいそういう奴は下がどうなろうと知った事じゃねぇ。むしろそうやって俺たちをあぶり出したり、戦闘なんかをさせて暴動の既成事実を作るのが狙いなんだろうぜ。…他にも色々見え隠れしてるが、何にしろここで下手に逃げ回ったら相手の思うつぼだな」
まあ俺の考えも似たり寄ったりだし、そういうことになるな…
相手側が権力層を味方につけている以上、貴族の権力が強いこの大陸でチマチマ話し合いなんてしてても無駄だ。
こういうのは直接乗り込んでぶっとばすに限る。
勇者っていう強力なカードが切れ無くなれば、権力層は一気にこちらの味方につくだろうしな。
「そういう事なんで、とりあえず俺とユリアはありがたく勇者の元へ輸送されとくよ。皆はあとから追尾してくれると助かるかな、なんかしらで脱出が必要な時とかは瞬間移動使うしね」
「…何かあった時の援軍ですわね?それなら私たちに任せておけばいいですわっ!オホホホホッ!」
くれぐれも目立たないように頼むよヴァニエさん。
まあ、こういう事に関してはファイスがいるから大丈夫か。
というわけで、まずは俺とユリア以外のメンバーが外で適当に散開し、そのあとしばらくしてから俺たちが孤児院を出た。
ちらほらと騎士が見えるし、そのまま素通りすれば勝手に捕まえてくれるだろう。
ほら、ここだよー。
「あ、ああアンタなんでそんなに余裕なのよ、私たち今から捕まるのよ…」
めずらしくユリアが弱気になっている…
まあこういうのは慣れだな、正直言って逃げ出すならいつでもできるし緊張も何もない。
そして騎士の前をちらちら素通りしていると、3人目を素通りする頃くらいで騎士がアクションを起こした。
最初の2人はこちらの背後を塞いだようだ。
「そこのお前、なぜ行方不明になった伯爵家の令嬢と一緒にいる。…さては誘拐だな」
行方不明ってあんた…話がとびすぎだろ。
今ちょっと笑いそうになったぞ。
「はぁ!?なんで私が行方不明になったことになってるのよ!」
「お嬢様はお下がりください。お嬢様には王城にて召集がかかっているようですので、一度王都へ連れていくことになります。黒髪の少年は王城で審判を受けてもらう事になるが、抵抗するならここで切り捨てる許可も出ている。…どうする?」
ふむ、つまり勇者は王城にいるのか。
この国の王都がどこらへんかは知らないけど、結構根が深そうだな。
…ちなみにだが、鑑定の結果ではこの騎士さんが何人いても俺にダメージを与えることすらできないっぽい。
能力的にはレベルだけ高い中位騎士クラスってとこかな、移動時の安全性は確保されたってわけだ。
「あー、みつかっちゃったかー。特に抵抗する気はないし、もうあきらめたよー」
「(…バカ、いくらなんでも芝居が下手すぎるわよ)」
…すまん、芝居スキルとってないんだ。
「ふむ、良い心がけだ。ではさっそく馬車へと乗ってもらおう」
その後なんやかんやしてるうちに、後ろの騎士さんに手錠っぽいものをつけられて連行されていった。
…なにやら手錠には魔法封じの効果がついているみたいだが、俺には何の効果もないようだ。
理由は地球の神爺さんの加護かと思われるが、マイナスエネルギーみたいなのを使ってるのかな?
向こうの大陸にはこんな物なかったが、魔族が身近にいるだけあっていろいろあるのかもしれない。
まあ手錠で魔法が封じられていても、服の中に隠れてるスラキューに切断してもらえばいいだけなんだけどね。
とにかくこのまま王城へひとっとびだ!




