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118 カーネイン・マモン

今回はちょっと長いです。

孤児院の管理者であるアリサさんについていき、とある一室へとたどりついた。


「…ここね、え~っと渡したい物があったんだけど、どこだったかしらぁ~」


アリサさんがゴソゴソと物を漁り始めた。

どうやらこの一室は物置のようで、そこら中にいろんな道具が散らばっているのが見受けられる。

…俺も手伝ったほうがいのかな?


「役に立つかわからないけど、俺も探すの手伝った方がいい?」

「気にしなくていいわよぉ、どうせすぐ見つかるから。…あと、いまから不用意にこの部屋から出ちゃダメよ?次元結界が張られているから、一度出たらどこにつながるか分からないわぁ」


うそやろ…

この人俺を閉じ込める気満々じゃないか。

ていうか次元結界ってなんだ、空間魔法とか時空魔法とは違うのかな…?

試しに容器の魔力を探ってみよう。


「……う~ん、わずかに把握できるレベル、かなぁ…」


次元結界かなんかのせいで遠くの容器の位置があやふやになってきている。

まあでも、皆の元に戻るレベルなら大丈夫そうだな…よかったよかった。


ちなみにアリサさんには気づかれていないっぽい、部屋の隅で何かを探し続けているようだ。


「あら、…やっと見つけたわぁ。いつ見ても感動的な輝きねぇ~」


どれどれ…

…ん?これってアレじゃないか?


「…ねぇ、これ<勇者の願い>ってやつじゃないの?」


色が青じゃなくて赤だけど、それ以外はまったく一緒だ。


「…やっぱりあのアイテムを知っているのね。大正解…って言ってあげたいところだけど、ちょっと違うわね。あなたの鑑定スキルで見ればわかるわよぉ」

「やっぱ鑑定の事がバレバレだったってわけか…」


まあとにかく、アイテムの鑑定だ。


【魔王の怒り】

└リベンジャーLv.--

└破壊の手Lv.--

└不滅Lv.--


(アクセサリースキル)

【リベンジャー】

神々への復讐を誓った証。

神次元の者に対して全ての攻撃が有効になる。

人と出会い、人の愛を知った大悪魔の怒りが込められている。


【破壊の手】

装備し続けている限り、少しずつだが装備者がダメージを負う。

また、自分の攻撃力が若干上昇する。


【不滅】

絶対に壊れない



な、なんだこれ…呪いのアイテムか?

だが、破壊の手に関しては<勇者の願い>スキルの、救いの手で相殺できるみたいだな。


…もしかして対になるアイテムなのか?


「なんでこんな物がここにあるのかは知らないけど、鑑定では色々わかったよ。…この流れ的に、それを俺にくれるってことでいいの?」

「…そのつもりだわ。だけど少しだけ…昔話を聞いてからにしてくれないかしら。子供に聞かせるような楽しい話じゃないかもしれないけど…」

「…ん?ああ、そういや俺子供か。まあこういうのには耐性があるし問題ないよ」


思い返せば小・中・高・大学と、十何年間も昔話聞いてきたからな、歴史とか。

ぶっちゃけ今更だ。


「…そうねぇ、じゃあまずは<邪神>と<魔王>についてのお話からしましょうか────」


──────


今からおよそ数千年前…

魔国ヴァンゲイムに、歴代最悪の魔王と恐れられる大悪魔が存在していたとされている。

その悪魔は人を人とも思わぬ所業などでは留まらず、配下である魔族でさえ自らのエサと見做し、世界をただ食い潰すだけの日々に興じていた。


「…つまらないね。両側の人間大陸からやってくる勇者とやらも何度も殺しているし、そろそろ手応えがなくなってきたよ」

「…それでは、次は神々にでも挑まれますかな?」


…世界の頂点であるはずの大悪魔だったが、少々その顔からは飽きが来ているように感じ取れる。

もうこの魔大陸では全てをやり尽くしたのだろう。


「んん~神々もいいけどさ、どうせなら人間大陸とやらに行ってみたいなぁ…ほら!もう僕より強いやつなんていないし?ちょっとヴァカンスでも行こうかなって」

「全ては、魔王様の仰せのままに…」


そうして世界の頂点を手にした大悪魔は、彼にとって「少しだけ」レベルが高い人間大陸へと向かうのだった。



──そして1年後。


「…ふむふむ、人間っていうのは面白いね!?最初はただ弱いだけの劣等種族かと思ったけど、これがなかなか…ユーモアがあるよ!」

「私にはわかりかねます…あ、お客さん来ましたよ」

「おっ!いらっしゃい!この大陸最大の魔道具店<人形屋>へようこそっ!」


…完全に溶け込んでいた。

彼はこの大陸に来てから1年、冒険者ギルドや商人のシステム…または闘技場など様々な分野の体験をし続け、少しずつ人間の事が好きになっていったのである。

まあそれもそのはず、彼はもともと<楽しい事>が好きなだけであり、最初に感じた楽しさが殺戮や食事だったからそれに興じただけなのである。


…そして現在、自身のユニークスキルを活かした<人形屋>で生計を立てているようだ。


「…あの、あの。お人形さんください」

「いいよっ、ひとつ銀貨1枚さぁ!さあ何個でももっていきなよっ!」


小さな女の子が現れ、大悪魔に人形を要求した。


「…シュールですな」

「…きみ、死にたいのかい?」

「いえ、とても喜ばしい光景かと。…それよりも、あのお客様はお金を持っていないように見受けられますが?」

「…ひぅ!?」


小さな女の子はお金をもっていなかった。

ただこの店の動く人形が大好きでたまらくなり、見ているうちについ口に出してしまったのである。


「んん~、取引っていうのは対価がなきゃ釣り合わないんだけどね~。どうしようかなぁ、…ところで、君はなんでこの人形が欲しいんだい?まあこんなの幾らでもつくれるけど…それっほぃっよっと!」


大悪魔がその場で3つの人形を瞬時に作り上げた。


「わぁっ!すごいすごいっ、お人形さんが動いてるっ!」

「くはははは、まあこんなもの朝飯まえさ!…で、質問の答えは?」

「あぅ。…それは、楽しそうだった…から…」


少女は正直に答えた…

ここで嘘をついて同情を引くことも考えたが、自分が好きな理由を誤魔化したくなかったのである。


「…楽しそう、ねぇ。く、くはっ!…気が変わったよ、好きなだけ人形を持っていくと良い」

「…えっ!?ありがとう人形のひと!…またくるね?」

「いつでも来るといいさ」


大悪魔は少女に自分と似た何かを感じ取ったようだ。

…ただそれは自分のそれより、とても暖かく、キラキラしたものに感じられた…


「うんっ!…決めたっ。僕はいまから人間をエサにするのはやめるよ、人間は素晴らしいっ!」


そうして大悪魔による「ある意味」人間大陸の制覇が始まった。

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