116 あぁっ!?やめてください、ハゲたくないんですっ!
─翌朝。
昨日一回起きてしまい寝不足なためか、寝坊気味なところをフィッテが起こしに来てくれたようだ。
「ゼノンくん、朝ですよ~?」
「…あの、フィッテさん、普通に起こすっていうのは無しなのでしょうか?」
目の前には布団にもぐり込み、ものすごく自然にぬくぬくしているオアシスがいた…
なんでや、あんた起こしにきたんじゃないんか。
…いや、悪い気分じゃないんだけどね。
「普通に起こしたらもったいないよね?」
どうやら今回も確信犯だったようだ…
その後は謎のエネルギーを充電し、妙にツヤツヤしているフィッテをつれて客間へ向かった。
執事さんは責任を取るって言ってたけど、俺から言わせて貰えばそれは避けておきたいのが本音なんだよね。
この大陸の一般人よりはそこそこ鍛えてるみたいだし、スキルはおざなりだったとはいえ中級魔族くらいなら相手取れる。
なによりツインテちゃん、ユリアの事を第一に考える人が伯爵家にいるのは大きな財産だ。
最後まで味方でいる存在っていうのは、実力云々に関わらず手放しちゃいけないと思うんだよね。
…ってわけで、色々考えてるうちに客間へたどり着いた。
「…おっす、みんなもう集まってたみたいだな」
「おはようゼノン。昨日はウィリアムさんと戦ったって聞いたけど…」
エレンたちも既に聞いていたようだ、…まあここは変に言い訳せず正直に言うべきだろうな。
「ああ、戦ったな。俺の実力を直接みたいってことで腕試しを申し込まれたんだ」
「理不尽に単騎で挑んだのかあの執事…すげぇ勇気だな」
「…さすがにびっくりした、かも」
「オホホホホッ!ゼノンは個人戦最強でしてよっ!…その覚悟に免じて疑ったことは許してさしあげますわっ」
理不尽やめぃ。
「すまないゼノン殿、うちの執事が迷惑をかけてしまったようだ…パーティーメンバーの方はああ言ってくれているが、こうなってしまった以上は厳しいを処分をせざるを得ないだろう。…それでこの件を水に流せとはいわないが、ウィリアムの事を許してやってほしい」
…ん?
なんか領主さんが勘違いしているな。
そもそも俺は処分なんて望んでないし、そんなことしたら護衛面でも執事本来の仕事面でも不利益しかない。
それでは関係をもった俺にとっても損失なんだが…
「まず誤解から解かせてもらうけど、俺は執事さんに対してなにも悪い感情をもっていない。…で、それとは別に執事さんの処分には絶対に反対だ。…主である領主に反対してまでユリアの事を考え、終わった後自分が消える覚悟までして勝負を挑んだ人材を処分とか、…ありえないよ。力量とかもろもろ抜きにしたって、ここで手放すのは最悪の手だ」
というか、この執事さんがいままでユリアの支えになってきた事は誰が見ても明らかだ。
本当に娘の事を考えた場合、絶対に手放しちゃいけないはずだ。
「…そうか、許してくれるか。…ならばこちらも君達の誠意に答えなくてはな。仮にもお客人に取る対応ではなかったことから何らかのペナルティは免れんが、処分の件に関しては不問とさせてもらおう」
「ああ、そうしてくれ」
どうやら話しはまとまったようだな…
…その後は執事さんが静かに頭をさげてこの話しは一旦終了となった。
「それで話しは変わるけど、結局のところ俺達は依頼を受けたわけじゃないし行動に制限はないんだよね?」
まあ制限かけようがないけどね、あくまでも強制力がない前提だし。
…ただそうなった場合ユリアの護衛がどうなるのかって事になるし、一緒に行動するなら一応確認をとっておかなきゃならない。
「…そうだな、確かにこちらとしては私の目の届かない所に行かれるのは不安だ。しかしあの勇者相手にいつまでも伯爵家の力で守りきれるわけでもない、ここに篭っていてはいずれジリ貧になることは間違いないだろう。…となれば、一番安全な場所である君達のそばに居るのがどんな状況だろうと正解なのだろうな。…決断の時という奴だよ」
「そっか…じゃあ俺たちと行動を共にするってことで。勇者の件はこちらも首を突っ込む気だったし、もしユリアを守るべきだと判断したら絶対に解決することを約束するよ」
まあ昨日の件で既に答えは出たんだけどね。
この執事さんが仕える価値のない相手にここまで本気になるはずがない、おそらく領主さんの言ってることは全て本当のことなんだろう。
「な、なによアンタっ!そういう恥ずかしいセリフは私がいないところでしなさいよっ、…照れるじゃない」
「…ツインテが照れたぞ」
「ぷくくっ、て、照れてますわっ」
「えへへ…(ニヤァ…)」
お、おい煽っちゃだめだってっ!
とくにオアシス、その笑い方はやばい…煽るのがうますぎるだろ…
…あんまり追い詰めるとこのツインテちゃん何するか分からないぞ。
…すると案の定、ツインテちゃんが暴走し始めた。
「あ、あああアンタに何がわかるのよバカーッ!!」
「って標的俺なの!?…なんでや!」
その後1時間ほど、ツインテちゃんの逆鱗が俺に炸裂していた…
あ、髪ひっぱるのはやめてくださいっ!ハゲたくないんやっ!




