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112 …いや、勝てるな

伯爵家のツインテお嬢様にだらだらついていってると、宿屋や酒場などの生活感のある店がチラチラ見えてきた。

全体的に中世という以外は個性が希薄だが、強さは違えど同じ人間なんだなと実感できる街並みだな。


「なあ、この町に冒険者ギルドとかってないのか?ちょっと用事があるんだけど」

「へぇ、アンタたちってやっぱり冒険者だったのね。冒険者ギルドなら教会にいくまでの道にあるから行ってくれば?どうせ素材の買い取りとかでしょ。…ただしそこの黒髪、アンタは私ときなさい。逃げたら承知しないわよ」


すごい形相で睨まれた…

なんで逃げるのが読まれているのか物凄い謎だが、俺だけが別行動という条件なら何の問題もない。

容器を預けた仲間にギルドに登録してもらって、依頼を受けているだろう時間帯で瞬間移動を使いパパッと仲間の元へオサラバすればいいだけだ。

時空魔法って反則すぎる。


「別にいいよ、俺だけ一緒に行動すればいいんだろ?え~っと、じゃあフィッテこの容器もっといて」

「了解しましたっ!えへへ~」


フィッテも余裕で気づいたみたいだ。


「なによその容器…魔道具かなんかなの?それにしてはただの容器にしか見えないけど…」

「ただの容器で間違いないな。まあ冒険の必需品ってやつだ」

「…嘘はいってないようね?フン、まあいいわ…とりあえず信じといてあげる」


なんか一々ピンポイントで核心をついて来るるな、出し方にちょっと違和感があったのかもしれない。


そんなわけで、途中で皆と別れて俺だけがツインテお嬢に連行されて行った。

護衛の人たちは終始申し訳なさそうにしていたが、別に責任を感じることはないと思うよ…お仕事がんばれ。


そして別れてから10分ほど歩いたところで教会が見えてきた。

良くも悪くもパッと見で教会だってわかる教会だな…個性がそれしかないとも言える。


「はぁ~、やっと着いたわ。あ~~もうっ、お淑やかにしてたから肩凝っちゃったじゃないのっ!外は色々と体裁が面倒で嫌だわ」


…あのレベルで気をつけていた状態だったのか、ある意味凄いパワーだ。

今後どうなるのか恐ろしくて予想したくない…


「アンタ今失礼な事思ったでしょ…?」

「いやいや、そんな滅相もない」

「…嘘よね?」

「…ホントダヨ?」

「絶対に嘘よね?」

「…はい」


なんでや!

なんでバレるんや…!!

スラキューのときはコロッと嘘が通ったのに!


「あら、ずいぶんあっさり認めるのね。神聖国の伯爵家であるこの私を愚弄した事がバレて、そこまで冷静で居られる庶民は初めて見たわ。…アンタいいわね、顔も悪くないみたいだし今日から私の世話をしなさい。命令よ」


もう俺が世話係になった前提で話が進み始めている。

…それにしてもこっちの貴族っていうのは権力をかなり大事にするんだなぁ、向こうの大陸じゃ結構そこらへんの壁が薄かったみたいだけど。

…パパンやエレンを基準にしてるからそう見えるだけかな?

まあいいや。


「悪いけど俺は世話係になる気もなければ駒になる気もない。冒険者ってのは自分の責任の範囲で自由に行動できるから冒険者なんだよ。自己責任の塊ってことだな」


こっちのルールが同じかは知らないけど、まあ似たようなもんだろう。

魔大陸のハンターギルドも似たようなもんだったしな。


「……は?……ぷっ、…ぷはははははははっ!そ、それ本気で言ってるのっ!?ぷくくくっ…こ、こんな庶民初めてだわっ新種の庶民よっ!いや、珍種よ!!」

「まあ新種でも珍種でも何でもいいけどな」

「いいわね、ますます気に入ったわ。アンタは絶対に私のモノにしてやる…」


こわっ!

目からハイライトが消え始めている、性格キツイとかいうレベルじゃないだろもう…


教会の入り口でツインテお嬢が俺を舐めまわすように見ていると、魔力感知に誰かの反応がひっかかった。

しばらく話してる間に、見習い騎士さんが誰かを連れて来たっぽい。

横にはフル装備の白騎士がいるし、正規の騎士さんってとこかな?

髪は若干薄めの金髪で20歳くらいだ、エレンを大人にしてだいぶ男っぽくするとこんな感じだと思う。


「お嬢様、正規の神聖騎士団員の者を連れてまいりました」

「お客様も一緒でしたか…私は神聖騎士団中位のライナーと申します。その桃髪、…やはり何度見ても美しい」

「遅かったじゃないの…まあこの庶民のせいで暇ではなかったから許してあげる。さっそくだけど私を神聖騎士に任命しなさい、お父様とお母様が来てからでは遅いわ。…それにそっちも私のユニークスキルが喉から手が出る程ほしいんでしょ?バレバレよ…教会の付近で嘘が通用すると思わなことね」

「…やはり、分かってしまいますか」


伯爵家のお嬢様のワガママとはいえ妙に協力的だなと思ったら、ツインテお嬢のユニークスキルが目当てだったらしい。

それに教会の近くでは嘘がバレるって言ってるし、町についてから鋭かったのもこれが原因か…

こりゃ早いところトンズラしないとボロでがでそうだなぁ、…だがまだ瞬間移動には早すぎるし待つしかないか。



「まあそんなのどうでもいいから、さっさと任命しなさい。…はぁ~、これでやっとミュラ様にお近づきになれるわっ!」

「…ふむ、残念だがそれは無理な相談だな。多少感情が読めるスキルと聞いていたが、やはり経験が浅いようだ。おい、このお嬢様を魔封じの檻に入れて監禁しろ。前線基地近くの騎士団本部に連れて行き、取引の材料にするぞ」


…ん?なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。

なんか話がかみ合ってない。


すると見習い騎士3人が剣を抜いた。


「ライナー様、あの冒険者の魔道具にも価値があるようなので、同時に確保するのが宜しいかと。…おそらく迷宮産の高ランク魔道具だと思われます」

「こんな子供が高ランク魔道具だと?…親から受け継いだかなにかか。…ではこの子供は私が始末するとしよう」

「…ちょっと、どういうことよ!話が違うわっ」

「…当然です、最初から約束を守る気などありませんでしたので」


ようするにツインテお嬢……、もうツインテちゃんでいいか、ツインテちゃんをダシにしてなんかの利益を得ようとしていたらしい。

騎士団が堂々と貴族に謀反を起こすことはないと思うし、可能性があるとするなら魔族との取引かな。


おそらく本部にも腐った人間ってのが多少はいるんだろう。

…正直トンズラする絶好の機会なんだが、まるで人の自由を奪うのが当たり前っていう態度が気に入らない。

ちょっくらぶっ飛ばそうかな。


「…悪いけど、来るなら抵抗させてもらうぞ」

「はぁ!?何言ってんのアンタ、正規の神聖騎士に勝てる訳ないじゃないっ!戦うとかじゃなくて逃げる事に頭使いなさいよっ」

「…いや、勝てるさ」


話している間に鑑定した結果では、正規の騎士さんとやらのレベルは60くらいだ。

中位でこれってことは上位はA級最上位の冒険者くらいありそうだなぁ…

上位が騎士のてっぺんってことはないだろうし、いろいろ手ごわそうだ。


「【各属性強化】【オーバードライブ】」


…それと見習いさんの背後に内緒で分身×3

敵側からは見えない配置だし、これでツインテちゃんへの保険は整ったかな。


「…なめるなよ小僧、【芭蕉剣・突】っ!」

「【瞬間移動】…からの、右ストレートぉ!!」

「…なっ、は、速…」


…ズンッ!


「…ガハッ……ッ……」


…うん、一撃で終わったっぽい。

同じレベル60付近のハドウはもっとしぶとかったけど、やっぱり勇者補正と装備の差かな?

この騎士さんめっちゃ脆い。


分身の方を見るとそっちも見習いを片付け終わったみたいなので、これでトンズラできるな。


「ふぅ…終わったか。ツインテちゃんもスキルを過信しすぎるのはよくないぜ?じゃ、俺はこれで失礼するよ」

「…な、な、な。なによアンタ強かったんじゃないの!!それなら最初から言いなさいよっ…ちょっとだけ怖かったじゃないの!」


ちょっとというか、だいぶ怖かったらしい。

今も腰が抜けてへたりこんじゃってるよ…


「違うわ、ちょっとよ!」

「わかった、チョットダナ」

「くっ…良い度胸ね…?」


あ、はいすみません調子乗りました…

お願いだから指名手配だけはしないで…


まあ、何はともあれトンズラだ。


「指名手配だけはやめてね…じゃ、こんどこそサイナラ」

「私をここに放置するつもり!?立てないんだから背負ってでも助けるのが男でしょっ!…指名手配するわよ?」

「……えぇぇ…」


うそやん、この子まだついて来るきなの…



…だけど言ってることは事実だったし、しょうがないのでみんなの所へ瞬間移動することにした。

なんか凄いメンドクサイ事に巻き込まれた気がする…






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