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111 ほら、この金属を…ぐにょーんっと

倒れている魔族の山を素通りして馬車へ向かったところ、向こうの護衛と思われる人がこちらにも警戒を示してきた。

…どうやら俺達の立場を図りかねているようだな、だが武器を向けてはいるが攻めて来る様子はないっぽい。

馬車の護衛は3人で騎士のような恰好をしている事から、3人とも15歳くらいなのを考慮すると見習い騎士って線が妥当かな。


まあとりあえず、緊張をほぐさないと何を言っても疑ってきそうだ。


「そこで止まれ!…お前たちは何物だ?それに今の攻撃、恐らく教会の神聖騎士団員クラスの威力があった。高ランク冒険者かなにかか?」


どうやらこの国にも冒険者ギルドはあるらしい。

だがあの威力で最高ランクを視野に入れてない所をみると、やはり強さの平均が何ランクか高そうだ。


「あ~どうもどうも、いまのは故郷に伝わる魔道具の効果だよ。ほら、頭の上にツルツルの金属あるでしょ? これもってると色々できちゃったり。これを、こうグニョーンっと」

「(…完全におちょくってますわね…)」

「(説明する気ねぇだろあいつ…)」

「(きっと緊張をほぐしてるんだよ…)」


いたって真面目なんだが、オアシスしか理解者がいない…


まあそれはさておき、スラキューはそもそもモンスターだしスキルは装備によるものだが、いまここで俺の力だと伝えても警戒を与えるだけだと思うのでこうした訳だ。

嘘だとバレてもバカバカしすぎる言い訳だし、今のは冗談でしたですむしな。

いうなれば茶番だ。


もちろんスラキューで属性魔力を圧縮して解放するなら、今以上の威力がでる訳だけどね。

かなり時間はかかるけど。


「ふむ、見たことのない金属だな。だがそのような高ランクの魔道具を使ってまで助太刀してくれたことに感謝する。私たちは教会の神聖騎士団の見習いとして、伯爵家の令嬢を護衛する任務を受けている最中だったのだ。…それにまさか、中級魔族がここまで計画的に襲ってくるとは…」


…信じたっぽい。

どうやら中級魔族があそこまでの規模で襲ってくることは異例だったらしい。

見習いの神聖騎士3人を鑑定してみたところ、中級魔族にギリギリ勝てるくらいの装備とレベルだったし妥当な護衛量なんだろう。

そもそも前線基地で普通は食い止めるしね、魔族が教会側まで来るなんてことはほとんどないんだと思う。


「それより伯爵家の人にケガはない?馬車の屋根吹っ飛んでるみたいだけど」

「はっ!?お、おい!お嬢様の具合はどうだ!?」


見習い騎士さんが慌てて仲間に確認をとったが、後ろの二人が問題ないとジェスチャーしているのでやっぱり無傷だったようだ。


すると中から13歳くらいの桃髪ツインテちゃんが現れた…


「…危ない所を助けて頂いて感謝するわ。さっそくだけどアンタたち私の駒になりなさい、お父様とお母様が探しに来る前に教会に逃げ込むわよ」


…ん?

なんでや、なんでいつの間に駒になってるんだ。

もしかしてこの子ヴァニエと違う方向で高飛車なのか…?


「…なんですって?いつからこの私があなたの駒になったんですの?それにこの者達は私の家臣でしてよっ無礼は許しませんわ!」

「…はぁ?アンタがどこの貴族だか知らないけど、この大陸最大国家であるラグナ神聖国に喧嘩を売るなんていい度胸じゃない。…後悔するわよ?」


ああ、分かった。

これ混ぜるな危険ってやつだ、アーゼインで学んだ…


なんとかせねば。


「ヴァニエ、そこまでにしとけって。(町に入る手段が手に入ったんだから好都合だ)」


耳打ちで現実を伝えておいた。

駒だかなんだか知らないけど、冒険者ギルドがあるなら町で証明書を作っちゃえばこっちのもんだ。

あとはここの通貨を稼いでなんやかんやすればいい。


「ハッ!?……ごほん。まあいいでしょう。一時的ではありますがあなたに力を貸してあげますわ」

「…ふーん、なんか急に大人しくなったわね。まあいいわ、それなら教会までいくわよ。馬車の屋根は壊れたけど本体は無事だから全員のりなさい」


それじゃお言葉に甘えて…


その後、無料タクシーを拾った気分でガタゴト1時間くらい揺れて空を眺めていた。

本日は晴天なり。


「それにしてもアンタ、面白い魔道具持ってるのね?」

「…ん?あーー、まあスラキューは便利だな。うん」

「スラキューっていう魔道具なのね、…興味が湧いたわ。確か神聖国最強の騎士であるミュラ様も魔道具に詳しい弟がいるっていってたし、あんたの魔道具があればお近づきになれるかもしれないわね。貸しなさいよ」


ミュラ…?

んー…いや、姉さんなわけないか。


「ミュラ・クロスハートって人の事じゃないよね?まあスラキューは魔力認証が必要だから他の人には使えないかなー」


大嘘こいた。


「ミュラ・ヴァルキュリア様よ。アンタそんなことも知らないの?常識じゃない。まあ魔力認証式で使えないならもういいうわ、アンタを連れて行けばいいだけだし」

「オ、オホホホ…ずいぶんな態度ですわね」

「…もうヤッちゃっていいかな?ね、どう思う?」

「「…Zzz」」

「ははは…」


なんかもうめんどくさくなったので、俺とファイスは狸寝入りした。

町に入るいい機会だし放っておいても手は出さないと思うよ…たぶん。

真面目なエレンがいるからきっと大丈夫だ、あとは頼んだぜエレン…



…それからさらに30分したくらいで町に辿り着いた。

大陸の端っこに来る人はそんなに多くないらしく、お忍びとはいえ伯爵家の力が働いたようですんなり入れたみたいだ。

ここまで来る頃にはエレンの顔がやつれていたので相当がんばったんだと思う…

いつか借りは返すよ…


「すまんエレン」

「いいさ、こういうのはお互い様だよ…」

「…金髪おまえ、漢だな…」


いつも通りエレンがイケメンすぎた…


「本当にすまない、お嬢様も悪気があったわけじゃないんだ…ただ性格がキツいだけで…」

「まったくです、あんな高飛車な貴族は初めてですわ」

「むぅ~、納得いかないけど今は我慢だね。あとヴァニエちゃんも同じくらいだよ?」

「そうなんですのっ!?」


到着した頃に見習い騎士さんたちも必死に謝ってたので、ヴァニエとフィッテも矛を収めてくれたようだ…

ちなみにセレナに関しては終始興味がなさそうな態度で無視を決め込んでいた。


さて、あとはギルドに登録する手段だけ探してトンズラしますかね。


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