神の名・弌
捏造しまくりです。
時刻は深夜に近い。
閑静な住宅地より離れた場所にある庭付きの一軒家。
家主の名は──紫崎嶺。
陰陽道においての二大宗家の血を引く、陰陽師である彼は銜えタバコをしながら、十二神将の二人に笑顔で言ってくる。
「──俺サマの納得がいく、説明が出来るんだろうねえ? 玄武に白虎」
にっこりと、それはもう満面の笑顔である嶺に玄武と白虎と呼ばれた二人は言葉に詰まる。
「どうしたー? 説明できねえの?」
ほれほれと促す嶺に、ますます二人は項垂れる。
「まあ、俺の占い通りに狙われたんだろー、薙の奴。誰だっけ、薙を狙った奴」
前に聞いていたが、だいぶ昔だったので、嶺はうろ覚えだ。
「黒帝が息子……叶」
「そうそう、そいつ。そんで、突き落とされた薙はいまだに目を覚まさないと」
「──夢を見ているのよ」
「朱雀」
嶺は朱雀の言葉に「夢ねえ」と呟き、
「夢って、アレか。母親に封じられている記憶」
「ええ、そうよ。下界へ来る前の記憶」
すべてが始まるのと、朱雀は静かに嶺に言った。
漆黒の髪を持つ女性は己の背後に立つ──薙を襲った人物に視線を移す。
「……失敗したのね」
漆黒の髪と同じように黒の瞳が、彼を蔑むように見つめる。
「申し訳ありません……〝母上〟」
彼は瞼をふせ、母親に謝る。
母親は冷たい視線を向けていた息子から、目の前にある巨大な水晶に視線を移す。
「お前に奴が殺せないことは、わかっていたことだものね」
それよりも、と彼女は言葉を紡ぐ。
「お前に与えられた役目を果たせばそれでいいわ。忘れてはいないわね?」
叶の方を見ることなく、彼女は淡々と言う。
「忘れてはいません……」
「それならいいのよ。すべては〝わが夫〟、〝お前の父〟……〝あの方〟のためだということを忘れていなければね」
話は終わったとばかりに、彼女は手を振って、叶をさがらせる。息子が唇を強く噛みしめていたことには気づかぬまま────。