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ハロウィン異話

作者: 雪猫
掲載日:2026/10/31

ジャック・オー・ランタンは立ち上がった。

カボチャの中の魂の火は燃えていた。


ジャックは世間の噂とは違い、

生前、悪事を働いたことが無かった。

真面目な農家で、主にカボチャを栽培していた。

ただ彼には、おかしな友人が多かった。


ジャックの友人は、

吸血鬼、狼男、フランケンシュタインの怪物、幽霊、魔女、ゴブリン、ゾンビ…

人間に怖がられている者達だった。


最初の頃は皆、人間であるジャックが、

友人になりたがるのを変に思い、

怖がらせて追い払おうと、酷い悪戯を仕掛けた。


彼は酷い悪戯に引っ掛かっても、毎回笑いながら許し、

会えたのが嬉しいと、お菓子を用意して配った。


彼は本当に嬉しそうで、

無視されても、

会う度に「こんにちは」と挨拶をした。


彼が本気であることが分かり、

次第に、変化が訪れた。

小さな声で「こんにちは」と返す者が現れた。


やがて、皆、彼に心を許すようになっていった。

彼の家に遊びに行くようになった。


いつしか、彼の家のドアを開ける時の合言葉は、


「トリック・オア・トリート」

になっていた。

皆笑いながら、家の中に入った。


人間ではない友人達は、夜に活動することが多い。

夜中に彼らは、楽しく遊び、語らった。


ジャックは皆を楽しませるのが好きだった。

カボチャの皮を削って、友人の顔、人形、船や家など、

様々なものを作り、明かりを灯した。


中でも一番好評だったのは、

カボチャに彫った悪魔のような顔だった。

彼自身も気に入り、カボチャの顔を被って、

友人達と会うようになった。

その方が、人間の姿よりも、

友人達の一員になれている気がした。


ジャックは工夫して、

被っているカボチャの中から、

小さな明かりを灯すことに成功した。

より非人間的な不気味さ、悪魔感が増した。


友人達は大喜びだった。

フランケンシュタインの怪物が、

恥ずかしそうに、そっと呟いた名前、

「ジャック・オー・ランタン」が、

皆に気に入られ、その日から彼は、

ジャック・オー・ランタンと呼ばれるようになった。


やがて年月が流れ、

彼は大往生で、この世を去った。

当然、天国行きだった。


だが、彼は、

一緒に付いて来ようとした友人達が、

天国の門をくぐれないことに、抗議した。


分からず屋の天使達の前で、

彼は啖呵を切った。


「この友人達と一緒でない限り、

僕は、天国の門をくぐらない」、と。


彼らは天国を後にした。


それでも彼は、落ち込んではいなかった。

死者が行く所は一つではない。

地獄ならば、皆一緒に居られるはずだ。


彼は地獄に向かう途中、

地上で、自分のカボチャ畑に立ち寄り、

カボチャを頭に被った。


カボチャの頭の中を、

綺麗な魂の火が照らし、

何の工夫をしなくても、

彼はジャック・オー・ランタンになった。



地獄に辿り着いた彼は、

地獄の門の前で愕然とした。


友人達は地獄の門を通れるが、

生前、悪事を働かなかった彼は、

地獄に入ることは出来なかった。


地獄の門番に、バーカあーほと言ってみたが、

その程度では地獄に入れないし、

評価されるのは生前の行いなので、

今更遅いと言われた。


彼は落ち込みながら、地獄の門を後にした。

友人達は、啖呵を切った。


「友人ジャック・オー・ランタンと一緒でない限り、

我々は、地獄の門をくぐらない」、と。


地上に戻ったが、彼らは当て所無く、

遠くの街の光を見つめていた。

すすり泣きが、あちこちで聞こえていた。


彼らは、天国にも地獄にも居場所を失ったのだ。


上を見上げると、

曇り空の中に星が、自分達と同じ様に、一つだけあった。

一つでも、その星は美しく眩しかった。


ジャック・オー・ランタンは立ち上がった。

カボチャの中の魂の火は燃えていた。


「居場所がないなら作ればいい。

この地上に。

今日、この日から。


地上を、イタズラとお菓子で埋め尽くせばいい」


友人達は立ち上がり、

喚声を上げた。


そして、彼らは街へ下りていった。



長い長い年月の後、

人間達の中で最初に受け入れてくれたのは、

子ども達だった。

その後、大人達も

次第に受け入れてくれるようになった。


もちろん、

教会や、国によって、

無視される所もあるが、

彼らは、

地上に居場所を手に入れた。



ある日、友人達が、

彼に尋ねた。


「あの時、成功すると確信があったか?」


ジャック・オー・ランタンは、

もう時代遅れの、

あの頃の古い言語を使って、答えた。


「確信なんて無かった。

でも、僕は信じたんだ。


こんにちは『Hallo』を、信じた『ween』


あの時のように」



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