第一話 また逢う日まで①
皆さんは太宰治の代表作「走れメロス」を知っていますか?今作はそんな走れメロスをもとに製作したバトルストーリーです。
シラクス…それは王家ディオニス家が250年にわたり統括している大国。その広大な大地を韋駄天がごとく駆ける男がいた。
「っ…必ず間に合わせる…!」
名はメロス。囚われの身であったが妹の結婚式に参加するため、親友のセリヌンティウスを代わりに磔になっていた。そして三日以内に戻らなけりゃセリヌンティウスは死ぬ。タイムリミットは刻々と迫っていた。一方そのころ、セリヌンティウスは疲弊しきっていた。70時間以上も磔にされているため当然だ。すると、王ディオニスが歩み寄り言い放った。
「もう時間が近いぞ。」
「はい…。」
弱々しく答えるセリヌンティウスの瞳は黒かった。
それから数分後のことだった。群衆をかき分け、一人の男が処刑場に突入した。メロスだ。
「ディオニス王、待ってくれ!死ぬのは…この俺だ!」
澄んだ瞳。虚言はなかった。ディオニスは数秒考えたのち、静かにセリヌンティウスを解放した。
「本物の信頼というものを見せてもらったぞ。お前らは自由だ。」
歓声が上がり、二人は抱擁を交わした。
「ありがとうメロス、でも実は一度君を疑ってしまった。そのまま逃げるのではとね。とんでもない失態だ。どうか一度俺を殴ってくれ。」
「そうか、わかったよ。」
ボガッと音が響き、セリヌンティウスの頬が赤く腫れた。続けてメロスも言った。
「どうか俺のことも殴ってくれ。身体の限界に負け、一度諦めそうになってしまったのだ。」
「…メロス、お前ならそういうと思ったよ。では、殴るね。」
次の瞬間、セリヌンティウスの右腕がボコボコと隆起した。そして…
ドゴオオオォォッ!
轟音が響いた。人の胴ほどの太さの腕は、メロスの首を吹き飛ばしていた。メロスは…即死だった。セリヌンティウスは腕をもとに戻し、首を拾い上げ言い捨てた。
「悪いなメロス。俺が進んで磔にかけられた時にはもう、こうなる運命だったんだよ。」
「よくメロスを討ったな。わしは先に城へ戻る。復活を防ぐためその首は持って帰ってこい。」
こうしてこの物語は、一つの裏切りで幕をあけた。歓声は悲鳴に変わっていた。
次回第二話 動く山の同志




