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法案置き場  作者: カトーSOS


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11/11

老朽危険区分所有建物再生促進法(案)

立法趣旨


近年、我が国においては、高度経済成長期及びその後の都市開発期に建設された分譲マンションの老朽化が急速に進行している。


築五十年を超える区分所有建物は今後大幅に増加することが見込まれ、耐震性能の不足、設備の劣化、修繕費の増大及び管理組合機能の低下等の問題が顕在化している。


特に、区分所有建物は多数の権利者による共有形態であるため、建物としての寿命を迎えた後も、権利関係の複雑さから建替え又は再生に関する意思決定が困難となる場合が多い。


その結果、本来であれば更新又は建替えが必要な建物が長期間放置され、居住者の安全を脅かすのみならず、周辺地域の防災、景観及び都市機能にも悪影響を及ぼす事例が増加している。


一方で、現行制度においては、建替え決議に高度な合意形成が求められており、高齢化した区分所有者、相続未了による権利関係の複雑化、管理組合の機能不全等により、現実的に再生事業が進まない事例が少なくない。


また、地方公共団体が個人資産であるマンションの建替え費用を公費によって負担することについては、財政上の制約及び公平性の観点から限界がある。


本法は、このような状況を踏まえ、老朽化及び危険性が認められる区分所有建物について、専門家による客観的評価に基づく認定制度を創設するとともに、管理組合の法人化、再生事業の円滑化、権利変換制度の整備及び容積率特例等を通じて、民間主導による建替え及び再生を促進することを目的とする。


本法の基本的な考え方は、公費による救済ではなく、既存の土地利用価値及び民間活力を活用することで、危険建物の解消と資産価値の再生を同時に実現する点にある。


老朽マンション問題は、単なる建築物の老朽化問題ではない。


それは、都市機能、防災、相続、人口構造及び住宅政策が複雑に交差する社会問題である。


本法は、建物の寿命という現実を正面から受け止め、危険な建物を放置するのではなく、安全な住宅ストックへ転換するための新たな制度的枠組みを提供するものである。


また、本法は既存の区分所有者を排除することを目的とするものではない。


従前の権利者に対しては、新たな建物への権利変換及び再入居の機会を確保し、可能な限り居住の継続及び財産権の保護を図るものとする。


さらに、建替えによって創出される新たな住宅供給は、地域の活性化、税収の維持向上及び都市の持続可能性にも寄与することが期待される。


よって、本法は、老朽危険区分所有建物の再生を促進し、国民の生命及び財産を保護するとともに、将来世代へ安全で持続可能な都市環境を継承することを目的として制定するものである。

老朽危険区分所有建物再生促進法(案)


第一章 総則


(目的)


第一条


この法律は、老朽化し、かつ安全性に重大な懸念を有する区分所有建物について、適切な再生、建替え又は敷地の有効利用を促進することにより、国民の生命及び身体の安全を確保するとともに、住宅ストックの更新、都市機能の維持及び地域経済の活性化を図ることを目的とする。


(基本理念)


第二条


1 区分所有建物には寿命が存在することを前提とし、適切な時期に再生又は建替えを行うものとする。


2 再生に要する費用は、原則として民間資金及び再生事業収益により賄うものとし、公費投入は必要最小限とする。


3 行政は再生事業の主体ではなく、権利調整及び事業促進のための環境整備を行うものとする。


4 居住者の居住継続及び財産権に十分配慮するものとする。


第二章 危険建物認定


(対象建物)


第三条


次の各号のいずれかに該当する区分所有建物は、本法の対象とすることができる。


一 築五十年以上を経過したもの


二 耐震基準を満たしていないもの


三 主要構造部に著しい劣化が認められるもの


四 設備の老朽化により継続使用が困難なもの


五 その他国土交通省令で定めるもの


(調査申請)


第四条


次の者は危険建物認定の申請を行うことができる。


一 管理組合


二 区分所有者の五分の一以上


三 市町村長


四 都道府県知事


(専門家調査)


第五条


危険建物認定を行う場合は、次の専門家による調査を要する。


一 一級建築士二名以上


又は


二 一級建築士一名及び行政が指定する第三者専門家一名以上


(危険建物認定)


第六条


調査の結果、継続使用が困難であると認められる場合、市町村長又は都道府県知事は危険建物として認定することができる。


第三章 管理組合法人


(法人化)


第七条


危険建物認定を受けた管理組合は、認定日から一年以内に法人化しなければならない。


(権限)


第八条


管理組合法人は次の業務を行う。


一 建替え事業


二 金融機関との融資契約


三 事業者選定


四 権利変換


五 土地処分


六 その他再生事業に必要な業務


第四章 再生事業


(再生計画)


第九条


管理組合法人は再生計画を策定し、総会の議決を経なければならない。


(容積率特例)


第十条


地方公共団体は、再生事業を促進するため、都市計画法その他関係法令の範囲内で容積率及び高さ制限の特例を定めることができる。


(事業者選定)


第十一条


管理組合法人は公募により事業者を選定するものとする。


(金融支援)


第十二条


金融機関は再生事業に対し融資を行うことができる。


第五章 権利変換


(基本原則)


第十三条


従前の区分所有権は、新たな建物における権利へ変換することができる。


(評価基準)


第十四条


権利変換は次の事項を考慮して行う。


一 従前の専有面積


二 共有持分割合


三 事業収益


四 その他公平性確保のため必要な事項


(再入居権)


第十五条


従前所有者は優先的に再入居する権利を有する。


(低層階原則)


第十六条


無償又は低負担での権利変換は低層階を基本とする。


高層階については事業計画に基づき販売又は追加取得を行うことができる。


第六章 決議


(再生決議)


第十七条


危険建物認定後の再生計画は、区分所有議決権の三分の二以上で可決する。


(行政承認)


第十八条


再生決議は行政の承認を受けなければならない。


第七章 反対者の取扱い


(買取請求)


第十九条


反対者に対しては適正価格による買取請求を行うことができる。


(評価)


第二十条


買取価格は土地持分及び事業計画を基礎として算定する。


(明渡し)


第二十一条


補償金支払後、明渡しを求めることができる。


第八章 居住者保護


(仮住居支援)


第二十二条


再生期間中の居住者に対し仮住居支援を行うことができる。


(高齢者支援)


第二十三条


地方公共団体は高齢者に対し公営住宅等の情報提供を行う。


第九章 雑則


(国土交通省令への委任)


第二十四条


本法の施行に必要な事項は国土交通省令で定める。


附則


(施行期日)


第一条


この法律は公布の日から一年以内に施行する。

【制度の運用について(実務レベルの説明)】


本法は、老朽危険マンションを行政が買い取る制度ではない。


また、公費によって個人資産を救済する制度でもない。


本制度の目的は、建替えが可能な案件について、権利関係及び意思決定上の障害を取り除き、民間主導による再生を実現することである。


行政は事業主体ではなく、制度運営及び権利調整のための環境整備を行う立場とする。


────────────────


1.制度の基本構造


────────────────


本制度は、建物の老朽化そのものではなく、「建替え不能状態」を解消することを目的とする。


現行制度では、多数の区分所有者による合意形成が困難であり、建物としての寿命を迎えていても建替えが進まない場合がある。


本制度では、


・専門家による危険認定


・管理組合法人化


・権利変換制度


・容積率特例


を組み合わせることで、建替え事業を実行可能な状態にする。


────────────────


2.危険認定の流れ


────────────────


(1) 申請


次の者は危険建物調査を申請できる。


・管理組合


・区分所有者総数の20%以上


・市町村


・都道府県


(2) 調査


一級建築士二名以上による調査を実施する。


必要に応じて、


・構造設計一級建築士


・耐震診断専門家


・設備専門家


を追加する。


(3) 判定


次のいずれかに該当する場合は危険建物候補とする。


・耐震性能不足


・主要構造部の重大劣化


・設備更新費用が著しく高額


・修繕費が建替え費を大幅に超過


・その他継続利用が不合理な場合


(4) 指定


行政は審査を行い、危険建物として指定する。


────────────────


3.管理組合法人


────────────────


危険認定後は管理組合法人へ移行する。


目的は事業主体を明確化するためである。


法人化後は、


・銀行融資


・事業契約


・デベロッパー選定


・権利変換契約


を法人名義で行う。


────────────────


4.再生事業者の選定


────────────────


管理組合法人は公募により再生事業者を募集する。


提出事項は次のとおりとする。


・事業計画


・資金計画


・建築計画


・住民対応計画


・仮住居計画


・再入居計画


選定は第三者委員会の意見を聴取して決定する。


────────────────


5.容積率特例


────────────────


本制度の中心となる仕組みである。


危険認定マンションについては、都市計画上の特例として容積率及び高さ制限の緩和を認めることができる。



既存


10階建て

100戸


再生後


20階建て

200戸


増加した住戸の販売収益を建替え費用へ充当する。


これにより公費投入を行わずに再生事業を成立させる。


────────────────


6.権利変換


────────────────


既存区分所有者には新建物への権利変換を認める。


基本原則は次のとおりとする。


・従前専有面積を基準とする


・再入居権を保障する


・低層階を基本とする


・高層階は販売住戸とする


希望者は再入居後に売却することができる。


これにより従前所有者は建替え利益を享受することが可能となる。


────────────────


7.反対者への対応


────────────────


再生決議後も反対する区分所有者については、適正補償による買取制度を適用する。


評価対象は次のとおりとする。


・土地持分


・事業計画


・周辺相場


ただし危険認定後の建物価値は限定的評価とする。


補償金支払後は明渡し請求を可能とする。


────────────────


8.居住者保護


────────────────


建替え期間中の居住者保護を行う。


主な支援内容


・仮住居の紹介


・転居支援


・高齢者相談窓口


・福祉サービス連携


高齢者については公営住宅等の情報提供を行う。


────────────────


9.制度の到達点


────────────────


本制度は老朽マンションを行政が救済する制度ではない。


また、反対者を排除する制度でもない。


本制度は、建物の寿命という現実を前提に、区分所有制度の行き詰まりを解消し、民間の資金と事業能力によって再生を実現するための制度である。


危険な建物を放置するのではなく、安全な住宅へ更新すること。


そして、従前の所有者がその利益を享受できること。


これが本制度の最終目的である。




【想定される反対意見と本法案の考え方】


本法案は老朽危険マンションの再生を目的とするものであるが、制度の性質上、様々な懸念や反対意見が想定される。


以下、本法案に対して想定される主な意見と、それに対する考え方を示す。


────────────────


反対意見①


私有財産権の侵害ではないか


────────────────


本法案は私有財産権を否定するものではない。


危険建物認定は、一級建築士等の専門家による客観的調査及び行政手続を経て行われる。


また、従前所有者には、


・再入居権


・権利変換


・適正補償


が保障されている。


本法案は財産を奪う制度ではなく、建物としての利用が困難となった資産を再生するための制度である。


────────────────


反対意見②


少数意見を切り捨てる制度ではないか


────────────────


現行制度においても多数決原理は存在する。


本法案は危険建物に限定して特例を設けるものであり、通常のマンション管理には適用されない。


また反対者については適正な補償を前提としている。


少数者の権利を保護しつつ、建物全体の安全を確保するための制度である。


────────────────


反対意見③


高齢者が住む場所を失うのではないか


────────────────


本法案は高齢者の排除を目的としない。


むしろ危険建物に居住し続けることによる事故リスクを軽減することを目的としている。


再入居権を保障するとともに、


・仮住居支援


・転居支援


・行政相談


を制度として整備する。


また建替え後の住戸を取得することにより、居住環境及び資産価値の向上が期待される。


────────────────


反対意見④


行政が民間事業へ介入しすぎではないか


────────────────


本法案において行政は事業主体ではない。


行政は


・危険認定


・権利調整


・容積率特例


等を担当するのみであり、建替え事業そのものは民間主導で行われる。


行政の役割は市場の代替ではなく、市場が機能する環境を整備することにある。


────────────────


反対意見⑤


税金で個人資産を救済する制度ではないか


────────────────


本法案は原則として公費による建替え費用負担を想定していない。


建替え費用は、


・容積率特例


・新規住戸販売


・民間融資


・民間投資


によって賄う。


行政は制度設計及び手続支援を行うのみである。


したがって、本法案は個人資産救済制度ではなく、危険建物の再生促進制度である。


────────────────


反対意見⑥


デベロッパーだけが利益を得るのではないか


────────────────


再生事業には民間事業者の参加が不可欠である。


しかし、本法案では従前所有者にも権利変換による利益が生じる。


建替えによって新築住戸を取得した所有者は、


・継続居住


又は


・売却


を選択することができる。


利益はデベロッパーだけでなく、既存所有者にも還元される構造となっている。


────────────────


反対意見⑦


古いマンションを修繕すればよいのではないか


────────────────


大規模修繕は有効な手段である。


しかし一定以上老朽化した建物では、


・耐震性能不足


・設備更新費の増大


・修繕費の累積


により、修繕より建替えが合理的となる場合がある。


本法案はそのような建物を対象としている。


────────────────


反対意見⑧


建物に寿命があるという考え方自体がおかしい


────────────────


建築技術の進歩により長寿命化は可能である。


しかし、現実には構造、設備、維持管理コスト及び社会的要請には限界がある。


本法案は建物を一律に寿命とするものではなく、専門家による個別判断を前提としている。


────────────────


本法案の基本的な考え方


────────────────


本法案は、


「マンションを壊す法律」


ではない。


また、


「所有者を追い出す法律」


でもない。


本法案は、


建物の寿命という現実を受け入れ、


危険な建物を安全な住宅へ更新し、


その利益を既存所有者にも還元するための制度である。


放置による価値の喪失ではなく、


再生による価値の創出を目的とする。


それが本法案の基本理念である。



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