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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

勇者がボス部屋に入らない!

作者:月猫
最新エピソード掲載日:2025/12/25
 魔王城最深部――玉座の間。
 重厚な静寂が満ちるその部屋で、魔王≪ヒビキ・イ・テア≫は華やかな座に腰を沈めている。

 視線の先には、深紅の巨大な両開きの扉。
 しかし魔王の意識が捉えているのは、その扉の奥の存在である。
 直接目にせずともわかる、明らかな【強者】。
 有象無象とは格が違う誰かが、この部屋の目前まで迫っている。

 ギギィ…と、扉が僅かに軋む。
 ゆっくりと広がる扉の隙間から、冷たい風が流れ込む。
 現れたのは、一人の男。

「よくぞここまでたどり着いた、勇者よ。」

 重厚な威厳のある声で、魔王は勇者を労った。
 毎度のことながら、よくこんな声がこの華奢な喉から出るものだと、自分でも感心する。
 
 しかし、男は一切の動揺を見せない。静かに、魔王の言葉を受け止めた。
 腰のベルトから下げた2本の短刀に、全身を覆う泥と返り血にまみれたボロ布。
 男は、おとぎ話に出てくるような煌びやかな聖剣も、その栄光をたたえるかのような黄金の鎧も身に着けていない。
 それでも魔王は、その男のことを【勇者】と呼んだ。

 男の足元に倒れる魔王城直属の部下たち、彼らも例外なく【強者】の筈である。
 それは、この男が紛れもなく【勇ましき者】であることを表していた。

 テアは玉座から腰を上げ、ゆっくりと立ち上がり、二歩三歩と勇者の方へ歩み寄る。
 その間も、男から視線を外すことはない。

「重ねて歓迎しよう。われこそが魔王、ヒビキ・イ・テアである。さあ、その双剣を抜き――」

 テアが言葉を発したその直後、それを遮るように男が動く。
 ぼろ布のローブをわずかに翻し、両の短剣の柄に手を当て、深く姿勢を沈み込ませた。

「──っ来るのか!?」

 それまで綴っていた常套句を打ち止め、テアも両の手を構える。
 練り上げられる魔力、震える空気。
 周囲の誰もが今この瞬間にも始まりそうな、果てしない規模の戦いに身構える。
 伝説の戦いが…今始まる!!
 

 ────はずであった。
 次の瞬間、男はさらに重心を下げ走り出したかと思うと、目にもとまらぬ速さで廊下を逆戻りし始める。
 ガシャーンという派手な音とともに、男は窓の一つから闇夜へと姿を消した…。

「……帰ってもうた……」

 勇者は、魔王を目前にして帰宅していった。
第0章
プロローグ
2025/12/08 09:03
第1章
目覚め①
2025/12/09 00:08
目覚め②
2025/12/09 01:33
生きるしかないと言うこと
2025/12/09 08:03
この体に流れるのは…①
2025/12/11 18:10
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