表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千春  作者: 古砂糖
第1章 邂逅編
12/18

11-1、ロマンチスト①

「誰だ?今の」


根中は車に乗り込むなり言った。手から提げた袋には季節外れのアイスが入っているようだが、根中はそんなものはどうでも良くなっているらしい。

彼は僕の口から飛び出す真実に夢中なように見えた。


「根中、今僕が話していた女は白いワンピースを着ていない、そうだろう?」

「・・・!!」



根中は黙って、元々大きな瞳が飛び出しやしないかと心配になるほど目を見開いた。

その言葉を待っていたと言わんばかりだ。



「ああ、着ていなかった。着ていなかったよ!

 つまりこうだ、俺たちそれぞれが見た”白いワンピースの女”は、俺たちそれぞれにしか”白いワンピースの女”として見えていない」

「どうやらそうみたいだね」


根中は軽快にプッとクラクションを鳴らし、エンジンを掛けた。

どうやら千春さんに合図したつもりらしいが、千春さんが乗り込んだ黒い車は一切応じることなく、駐車場の向こう側で石のように止まっている。

根中は余り気にすることなく車を滑らせ、再びドライブが始まった。




「その言い方からすると、根中の家にいた彼女も白いワンピースの女ってことだよね」

「ああそうだ、彼女は白いワンピースを着ている。

 でもお前にもそう見えていないんだな。そうかそうか」


気づくと車は知らない町を走っていた。かなり小高い丘の上で、もう数分走ればそれは山道に変わりそうだった。


「彼女との出会いを説明させてくれ。いずれお前には全部話さなきゃって思ってたんだ」


このドライブは長くなるぞ、と一人で根中は笑った。


「彼女に会ったのは1ヶ月半前だった。

 お前と話してからというもの、俺は町をほっつき歩いて彼女を捜し回った」

「僕と同じだ」

「でも会えなかっただろう?そんな気はしたんだ。探して会えるようなもんじゃないってね。

 だから、一旦彼女のことは忘れることにした。

 いや、まあ忘れざるをえないというか・・・」


根中は覚悟を決めたように息を小さく吐いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ