時姫の最後
もう、私も長くはありません。もうすぐ五十に手が届くころですが、おそらく届かないことでしょう。
兼家様は、長く不遇の時を過ごされましたが、兼通殿がお亡くなりになったのち、再び昇進されるようにおなりです。今は、右大臣をお務めです。この後、太政大臣になられるかどうかは、わかりません。
太郎君は、御年二十八におなりだ。今では道隆さまと名乗られ、男ぶりもよく、右近衛権中将に任じられ、備中権守を兼任していらっしゃる。賢い男の孫、かわいらしい女の孫に恵まれ、先々が楽しみです。
次郎君は、道兼様。御年二十。侍従に任じられ、昇殿を許されたばかり。
三郎君は、道長様。御年十五。従五位下なので、まだ昇殿も許されていない。
一の姫は、超子様。冷泉院の女御で二の宮をお産みになった。宮は現在五つになっていらっしゃる。
二の姫は、詮子様。なかなか入内が決まらなかったが、安子様のお産みになった円融天皇の女御となられ、おなかにややがいらっしゃる。
それぞれに心配なことであるが、どの方もしっかりとお育ちになっていらっしゃる。夫も、お子様方も、「位人臣を極め」たり、「国母」におなり遊ばしたわけではないが、そろそろお別れが近い。
わたしは、いつまでも、あなた方を見守っていますよ。
道隆の娘が定子。清少納言の仕えた女御。
超子の息子が三条天皇。
詮子の息子が一条天皇。
道長の娘が彰子。紫式部が仕えた女御。
道隆も、道兼も、道長も、摂政になります。
時姫、すごい!!




