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「父さんが倒れた?」

塾に行く前にコンビニで腹ごしらえをしていた玖珂くが直哉なおやの元に母親から連絡が入った。


「直哉、どうした?」

同じ高校を目指し共に塾に通っている親友の岩国みなとが聞いた。


「父さんが病院に運ばれたらしい。俺、行ってくる。」

直哉は食べていたメロンパンを急いで口に押し込んだ。


「俺も行くよ。」

湊が言った。


「大丈夫。湊は俺の分まで勉強してて!」

直哉はそう言うと急いで自転車に乗って父のいる病院へ向かった。


 病院へ着くと、すぐに母親と合流した。


「…原因は…分からないんですか?」

母親が医者に言った。


「これといった原因が見つからないんです。とにかく今は様子を見るしか…」

医者は困って呟いた。


「いつ目を覚ますんですか?」

直哉は聞いた。


「それもまだなんとも言えません。」

医者は歯切れ悪そうに呟いた。


「…そんな…」


 二人は父の横たわる病室に向かった。今朝、何事も無く仕事に向かった父が、今は意識も無く横たわっている。直哉はまだそのことを信じられないでいた。




 直哉の父・恭介きょうすけはあれ以来目を覚ましていない。直哉は学校の帰り、毎日父の入院する病院へ行った。


「直哉…気持ちは分かるけど、あなたは今受験勉強に集中しなさい。お父さんだってきっと同じことを思っていると思う。」

母親が直哉に言った。


「…分かった。父さんの為にも必ず黎明れいめいに合格してみせるよ!」

直哉はその言葉通り、見事黎明学院に合格した。親友の岩国湊も合格して、直哉はほっとした。






「父さん、俺、合格したよ。」

直哉は横たわる父に話しかけた。しかし父・恭介からは何の返事も無い。


「直哉、お腹空いたでしょ? 何か食べに行こうか?」

母親が言った。


「俺さっきメロンパン食ったから大丈夫。母さんだけ食べてきて。」


「そっか…。じゃあ、何か買ってくるから、その間お父さん頼むね。」

そう言うと母親は病室を出て行った。


 静まり返った病室で、直哉は改めて父親の顔を眺めた。スポーツマンで仕事の出来る父親は直哉の憧れだった。


―何でこんなことになってしまったんだよ…

直哉は溜息をついた。


その時、父親の口が微かに動いた。


「…ほ…ぉ…おお…ほこ…ら…」


「何? 父さん! ほこら? 今、祠って言ったの?」

直哉は必死に話しかけた。しかしそれっきり父親が何かを口走ることは無かった。


―祠って…何なんだ…?


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