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「うちの娘は前々から縁談があって、夕べ式をあげて夫婦めおとになったんですよ。」

次の日の集会で長は皆の前でそう言った。


 なんてことだ!

 長は自分の娘をやりたくないだけだ

 自分勝手にもほどがある


人々は心の中で不満を爆発させた。



 しかし、長の娘が既婚者となった今、どの娘が生贄になるのだ…?

人々は自分の娘がやり玉にあがらぬよう、誰も目を合わせなかった。その時、誰かが呟いた。


 おたかの娘のソヨはどうだ?


それを聞いた人々は、


「そう言えば、ソヨがいたな…。」

「そうだ、ソヨが適任だ!」

「ソヨしかいるまい。」


皆、一同にうなづいた。


「ま…まって下さい! うちの子は…あんな不憫ふびんな子にそんなことをさせるなんて…。」

ソヨの母親おタカはへなへなと泣き崩れた。


「今まであんたら親子はこの村へ散々迷惑をかけてきたんだ! 村を救う為だ。少しは役に立ってくれても罰は当たらない!」

村人はおタカを責めた。


「…そんな…」





 おタカが家に帰るとソヨはいつもと変わらず、一生懸命に籠を編んでいた。


「おかえり、お母ちゃん。」


「…ただいま。」


「どうしたの? 暗い顔して…。」

何も知らず無邪気に微笑みかけた。


「どうしたもこうしたもない。みんなが寄って掛かってお前を沼の主さまへ人身御供ひとみごくうに差し出せなんて言い出したんだよ。」

おタカの目から涙が溢れ出た。


「あいつら…今まで散々おまえのことを酷く言ってきたのにそれだけじゃ足りないってのかい!? やつら人間じゃ無いよ!」

おタカは悔しくて悔しくて気がどうにかなりそうだった。


 ソヨは母親を抱きしめてじっと考え込んだ。


「…分かった。私やってみる!」

急にソヨは笑顔で言った。


「あんたは何もわかっちゃいない! 行ったらもう帰っては来れないんだよ! 死んじまうかもしれないんだよ!」

おタカは叫んだ。


「分かってるよ。だけどもう決まってるんでしょ? でももし私がそのお役目を引き受けたら…村の人達のお母ちゃんに対する態度も変わると思う…。」


「…ソヨ…」




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