新興国興る
案内された謁見の間は豪奢だった。
30メートルはあるのではないだろうか。赤い絨毯が50センチほど高くなった金色の玉座へと延び、床は大理石を敷き詰められている。白亜の壁にはアルフォンスミュシャ風のテイストの高さ2メートルほどの絵画が数点飾られている。天井は高く美しい壁画が僕たちを見下ろしている。日の光を彩らせるスンテンドグラスも美しく、そのほかの光源は壁と天井の間に埋められているようLEDライトのようなモノであり、そこだけ近未来な印象を与えた。
総じて言うなら絵画やステンドグラスは宗教染みているようで全てアニメ調なのは、あの方が創生者だからだろうか。
「マスター、玉座へどうぞ。そちらの方もご一緒に」
僕のことは知らない素振りで、ファルナさんはルーネシアさんと僕を玉座の方へと誘う。
ルーネシアさんはゆっくり玉座に座り、僕はその傍らに立つ。
同席しているミオさんや宗也さんは僕が王の素質を持っていることを知っているが、四之宮さんは知らない。四之宮さんがいなければ、こんな子芝居めいたことをする必要もないのだが、何も知らない四之宮さんがいるからこそ『ルーネシアさんが王である』と証明できる。
「…最終認証が完了しました。立国にあたり、国の名称はどういたしましょう?」
「…え?」
全員が発言者であるファルナさんに視線が集まる。
「国の名称はどうなさいしょう?」
もう一度、その言葉を口にした。
「作戦タイムだ!」
全員がミオさんの元に集まる。
「えー、ボクは日本でいいんじゃないかと思うんだけど」
「いやいや、竜人であるルーネシアが『日本』なんて国名、おかしくないか?」
「ドラゴン…ドラゴン王国、とかいかがでしょう?」
「四之宮さん、見かけによらず名づけのセンスが独特ですね」
今の候補は、日本とドラゴン王国か。
…酷い選択肢だ。
「ボクは日本人であることを誇らしく思っているんだ」
「いや、宗也、君、死んでいるだぞ?日本人というより死人だ」
「そうか、そうだったねぇ」
「ドラゴン王国がダメなら、ドラゴンキングダム?」
「意味変わってませんよね、それ。竜人が王をしている国は他にもあるんですよ?それだと『この国が真の竜人の国』といっているみたいで、敵視されちゃわないですか?」
僕は四人の会話をぽけっと眺めていた。
ん?
少し離れたところで、ファルナさんが僕に手招きをしている。
近づくと、ファルナさんは苦笑いを浮かべていた。ちゃんとそういう顔ができるのか。
「…蓮華さま、その表情があるんだ?みたいな顔、やめていただけません?わたくし、蓮華さまと同じワルキューレなんですよ?」
「え?」
「昨日、慌ててお城に来て、魔法で出来る限り掃除をしたんですから」
だから、中庭は草が茂っていたのか。
「改めまして、わたくしは天衣織女命、ファルナ・エステュード。月読命さまの命で、この城のシステム管理を任されることとなりました」
「つくよみのみこと...?」
「天照大御神さまの妹君でございます。セントラルテンプルの最上階でこの世界のシステム管理をしておられます。現在のわたくしの上司ですね」
「そうですか…」
「国の名称の件ですが『聖エルフォーリム王国』でいかがでしょう?変な名前になるようなら、お城の名前を付けた方がよろしいかと」
「…確かに。ありがとうございます」
ファルナさんに頭を下げて。再び混とんとした会議の場へ向かう。
「もう、『それいけ!ジャパン』でよくなぁい?」
「それはだめだと思うぞ?」
「でしたら、『ドラゴンキャスルランド』は?」
「私たちが存じ上げないだけで、そういう名前のゲームがありそうじゃないですか?」
なんかより一層、混とんとしていた。
「あの」
僕の声に『ボクに味方が!』『わたくしの意見に賛同者が?』みたいな表情を浮かべる二人に、『助けて』という表情を浮かべる二人の視線が僕に集まる。
「あの、『聖エルフォーリム王国』はいかがですか?」
「それがいい!!」
ミオさんとルーネシアさんの力強い賛同の言葉が響いた。
「ん~…日本っぽくないけど、まぁ、いいか」
「ドラゴンはつけます?つけません?」
と、とりあえず賛同を得たとこうことにしようか。
「ファルナさん。この国の名前は『聖エルフォーリム王国』で」
「承知いたしました。これより、この国の名称を『聖エルフォーリム王国』と致します」
天歴215年4月21日。実に155年ぶりに12番目の新興国が生まれることになったのである。




