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ベランダの青虫

作者: 桶 文人

まだ残暑の暑さが抜け切らないある日の朝のことである。

私はボロいマンションの3階に住んでいて、ベランダにはプランターひとつと鉢がいくつかある。

植えているものはすべて食べられるものでプランターにはイタリアンパセリ、鉢にはミントとニラ、

あとはネギをスーパーで買ってくるとその根っこだけ残して植えている。

いつものように朝起きてベランダに出ると、もうほとんど枯れて種を残してるイタリアンパセリのところにけっこう大きめな青虫を見つけた。

プランターの手前側に一匹と奥のほうに二匹。もう動かずにじっとしていた。

私はギョッと驚いた。どうやってこんなとこまできたのだろうと。

尺取虫のように壁を伝って登ってきたのだろうか、まぁ飛んでくるわけないからそれしか考えられない。

でもなんでわざわざ三階にまで上ってきたのかはわからなかった。しかも二匹。

じっとしているからもうすぐさなぎになって蝶になるんだろうなとは察しがついた。

まぁわざわざせっかくここを選んで三階まで上ってきたのだから地面に返すのも気の毒だし、放っておくことにした。

一日立ち、二日が立ち、三日目の朝には二匹ともいなくなっていた。さなぎの姿は見ていなかったので、虫のまま別のとこに移動したのか、蝶になったのかはわからなかった。


あの青虫たち今頃どうしてるのかなぁとちょっと不安に思っていた、その直後のことである。

アゲハチョウがまるで「どうもお世話になりました。」と挨拶するように2、3分ヒラヒラとベランダの周りを飛び続け、去っていくともう一匹のアゲハチョウが同じように2、3分ベランダの周りを飛び、そして去っていった。私は二匹にそれぞれのああそうか蝶になれたんだ、よかったね、きれいだね、と念を送った。

もう長いことこの部屋に住んでいるのだが、このベランダにアゲハチョウがやってきたのは今回が初めてである。

そしてなんとなくだが、もう二度とこんなことは起こらないんじゃないかと思っている。


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