4話
「殿下、ご報告がございます。」
私は聖女様付きの侍女、アリスです!
最近の私の日課は王太子殿下に聖女様の様子を報告すること。
殿下に、「聖女とは我々のわがままで帰ることもできないのにいきなり異世界に召喚され国のために働く人物だ。俺の考えなのだが、召喚されてすぐの頃はやはり精神的にも不安になると思うんだ。俺はミコトのことが心配だ。そこで、侍女であるアリスにミコトについて報告をしてほしい。」って言われて3日間報告し続けています。と言っても昨日、一昨日は世間話の内容をお伝えするだけだったのですが。
「言ってくれ。」
「まず、聖女様に治癒魔法で昨日の怪我を治していただきました。」
「聖女の術は問題ないことが分かったんだな。他にもあるのか?」
「はい。元々治癒していただく予定ではなかったのですが、聖女様が治癒魔法を試されたいと言うことで治していただいたんです。なのですが、聖女様はご自分の指をナイフのようなもので傷つけて、その傷に治癒魔法を試されようとしていました。さらに、“これくらいの傷はつけられ慣れている”とおっしゃってまして…。」
そこまで言うと、黙々と仕事をされながら聞かれていた殿下の顔が一気に険しくなりました。
「つまり、元いた世界で虐待、もしくはいじめを受けていた可能性があると言うことか。…後で各役職の長を呼んでミコトには誠心誠意勤めるよう言っておこう。報告ご苦労、下がっていいぞ。」
「はい、失礼致します。」
部屋を出てから、私はもう1度、聖女様に治していただいた右手の傷を見ました。
厨房のヘルプで洗い物をしているとき、うっかり包丁でざっくり切ってしまったんです。痕が残るかもなと思っていた傷でしたが、今は見る影もありませんし、ついでにささむけも治っていました。
あんなことを言っていた聖女様は少し心配ですが、かなり明るい性格の方らしいですし杞憂かもしれませんね。