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消える流れるすり替わる  作者: 羊毛
4.氷の目隠し【過去篇】
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亀裂のある風景(4)

 激しい音を立てて、襖が開け放たれた。


 皆はそろって首をすくめ、部屋の入口を振り返った。額に三番目の瞳をもつ少年が、右手に緑色のバンダナ、左手に襖の縁を掴んで仁王立ちになっていた。


「おい、八つ当たりは余所でやってくれ」黒猫が慣れた調子でのんびりと言った。

 玲磨れいまは構わずずんずん部屋に入って来て、ちゃぶ台の前に正座していた岸の所へ真っ直ぐやって来るなり、彼の胸倉を掴んで持ち上げた。岸は目を見開いたが、特に騒ぐこともなく相手を見返した。

「――死ねよてめえ」

「玲磨! 二度目だぞ」黒猫がぱっと立ち上がって怒鳴った。

「いいか、クチ」玲磨は真っ青な顔で叫んだ。「僕のことが嫌いならその口でそう言え。僕が一番嫌いなのは嘘つきと偽善者だ。今度その口で口先だけ都合のいい事ほざいたら、この手で絞め殺してやる」


 岸はびっくりしていたが、やがて静かな声で言った。

「本当にそう思うならそうして下さい。そんな風に思われるんなら僕だってうんざりですから」

「言い逃れか?」


「玲磨、血が出てる」千種ちぐさが畳にてんてんとついた血痕に気付いて叫んだ。「足から血が出てるよ」

「うるさい!」玲磨は振り返って怒鳴りつけた。「白々しいんだよ! 僕を蔑んで楽しいか! そうだろうよ! 勝手にやってろ!」


 皆は呆れて玲磨を見詰めた。彼が理由もなく癇癪を起こすのはいつもの事だったので、ただ、また始まったかと思うだけだった。しかし岸は顔をくしゃくしゃにした。玲磨は今にも岸を蹴飛ばして部屋から出て行こうとしていたが、それより先に岸のほうが立ち上がって、大股で出て行ってしまった。


 玲磨は壁に背中を打ち付けて座り込んだ。


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