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消える流れるすり替わる  作者: 羊毛
3.辿れない糸口
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離陸は夕方(2)

 出国ゲートのほんの数歩手前で、ダンは待ち伏せていた。どうせそうだろうと思っていたので驚かなかったが、嬉しい事に変わりはない。


 しばし、相手が何か言うんじゃないかと思って、二人は黙って構えるが、その結果黙って見つめ合うことになる。こういうのも沈黙と呼ぶのだろうか。


「この次会う時は、敵同士ね」青はダンが喋る気がなさそうなのを見て、先に沈黙を切り上げた。

「じゃ、この次の次に期待しよう」ダンはめげずに言った。

「この次の次があればねえ」青は投げやりな感じに言って、「あたしは自分が負けるために闘うわけだから、結構手抜き出来るけど、あなたは勝つために闘うんだから、真面目にやって下さいね。しかるべき状況がくれば、あなたが私を殺さなきゃいけないかも知れない」

「俺はやらんぞ」

「いえ、それは大介さん我儘というものです。今、許可を出しとく。あなただけは私を殺してもいい。分かった? 私が他の誰かに殺されそうになったら、必ずそれを妨害してあなたが、私を殺して下さい。他の人だと浮かばれないからね」

「浮かばれないのは俺だ」ダンはすごく嫌そうに言った。「そういう状況が来ないように祈ればいい事だ。祈ればなんでも叶えてくれるからな、流れ星は」

「本当? 私は、流れ星みたいな岩の塊に頼むよりは、噴水に小銭を投げた方がご利益あると思うけどね……まあ人それぞれでしょ。できるだけ生き残るように努力するよ。死ぬと生き返れないからね」


「青」ダンは短く呼んだ。

「はあ……」青は全くやる気のない返事をした。「なんでしょう。私もうそろそろ行きますけど……」

「大切にしたいから。好きだから」ダンはよくよく考えて選んできたらしい言葉を、よくよく練習してきたらしい調子で言った。まるで棒読みだった。別にいいけど。


「ってか、今さら考えさせてくれとかまだ分からないとか言われてもかなりキレるけどね」

「さっきからいちいち、はぐらかしてないか?」

「そういう仕様なんですよ」

「死ぬなよ」ダンは低く這うように、釘を刺すように言った。「勝手に消えるのも、無しだ」

「どうしてそうなっちゃうのかね。約束は出来ないよ」

「お前が一人でどこかへ行けるもんか」

「俺もそう思うね。そう祈るよ」


 本当にそう祈っている。今だけ一瞬、叶う気がするのだ。


                                  


(「辿れない糸口」・終)


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