昼は堕落(1)
「信じられない」偵察から戻って来たヨアは青ざめていた。
「あの本でしたか?」規真が、ベンチからすらっと立ち上がった。
「そうだと思う。よく似ていた。だけど粉々だ。紙吹雪。しかも、本人がいるのに!」
「本人?」
「リン君だよ。リン君が第一発見者なんだ。気付いてるよ、あいつ。こっちのほう睨んでた」
「あいつからさっき電話があったんだ」夕が携帯電話を取り出して言った。「俺らがやったんだと思い込んでて、やめてくれって言うから、うちじゃないって言っといたけど」
「でも、初めにあれを持ち出したのは俺らなんだ」満次がつぶやいた。
「この際関係ないよ」ヨアは激しく言い返した。「あんなに粉々にやっちゃったら、確実に悪いのはあっちだよ。チクっちゃえ」
「いやよ」規真はきっぱりと言い放った。「これは奈香からあたしに売られた喧嘩。買います」
「買ってどうすんだよ」
「こっちからも宣戦布告を出すの」
「本を破る気か?」
「そんな野蛮な事しない」
「じゃあ、いいけど」
先頭に立った規真は図書館の入口に向かってすたすた歩いて行く。三人は困った顔で後に続いた。規真は、頭をフル回転させていた。絶対に、見せつけてやらねば。これが規真への当て付けだというのなら、三倍にして当て返してやる。自分達の犯罪がどれほど幼稚なものであるか、思い知らせてやる。度肝を抜いてやる。
「何か、やるつもりだね」ヨアが、規真を横から覗きこんで言った。少し心配そうだった。
「手伝わなくていいよ」規真は、ちょっと彼女から離れて言った。
「なんで?」
「ばれたら、怒られるよ」規真は、ヨアの潔癖をよく知っていたので、そう言った。
ヨアは複雑な顔をして、一瞬考え込んでから、「じゃあ、なおのこと、規真一人に任せておけないよ」
その言葉で、規真はもう後に引けないと思った。
「規真が何をやっても、うちは味方だからね」ヨアは重ねた。彼女は、何やら使命感に溢れていた。
規真は少し迷惑そうな顔をしたが、内心ほっとしていた。一人でやりとげる自信がなかったのだ。
女子二人がやる気のようなので、男子二人は顔を見あわせた。夕にも満次にも、規真が何をするつもりなのか見当が付かなかった。ただ、何か大きな事が行われる予感がした。それでとりあえず、なんとなく、付いて行く事にした。深い理由があったわけでもなく。




