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消える流れるすり替わる  作者: 森とーま
1.消える流れるすり替わる
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後始末

 リンの両親は、結局リンの口添えもあって、上がった遺体を葵さんのものと認めた。ハナダ出版社の方からも警視庁に、社員の一人が葵さんの遺体に手を加えたいきさつと簡潔なお詫びが入ったはずだが、それがどこまでリンの両親に伝わったのかは分からない。闇町は外界から分断された一つの国家なのだ。人も情報も、滅多に出入りする事は無い。いずれにしろ、遺体が葵さんのものである事を証明する手立ては他にいくらでもあった。DNA鑑定したってそれまでだ。エイチ・ブルーの焼き印なんて、その際単なるあざでしかないのだ。


 この事件には、ジョーカー四世が生き別れの双子の弟と再会するという小さなエピソードがくっついていたらしい。珍しい出来事だが、特に興味は無い。生まれてすぐに引き離されたとは思えないほど息がぴったり、とはリンのコメント。顔が似ていればとりあえずそう見えるものなんだろう。


 自分ではあまり自覚していなかったんだが、どうも、私の泣く姿は変態のおっさん方にはかなりこたえたらしい。誰からともなく、あんたはもうここを出て行っていい、と言って私を解放した。変な奴らだ。それでいいんなら最初からそう言ってくれれば良かったのに……それとも、私の泣き方はそんなに哀れだったのか? そりゃ、あの時この世の終わりのような気分だったのは確かだけど、今思い返せば、単に頭に来て興奮してただけのような気がする。どうなんだろう。少し、拍子抜けの感があるのは、私がおかしいんだろうか。


 まあなんでもいいだろう。結局兄貴と二人でラーメン屋を開ける事になったのだ。あんた本当にあたしに惚れたんですかと聞いたら、言葉の綾だろとのご返答。どうも微妙な感じだ。これからもこの関係が持続するらしい、面白きかな。


 そうそう。愛しの大介さまに告白したら、いま俺はそんな事にかまけてる暇は無いんだと怒られてしまった。何と言う偏屈野郎だ。流すとか逃げるとかならまだ可愛げがあるのに、怒るとは。あんまりだ。ハナダ青失恋まっしぐら。兄貴に言うとどうせ爆笑されると思って、黙って耐える事にする。


 あと、当然だがハナダの新しいボスは八羽島やはしまになった。どうも頼りない感じがするからそのうち様子を見に行ってみたいんだけど、そういう事やるからいけないんだな。兄貴みたいにきっぱりと手を切るべきなんだ……。北泉は、結局リンチを免れたらしい。




 秋はそろそろ後姿だ。


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