えぴそど93 ダン深-部
俺は腹部の苦しさで目を覚ました。
「ぐぇっ!!」
「きさま!いつまでねている!さっさとじゃくしんさまとごうりゅうするぞ!」
気を失っている状態で、腹の上にアルネロが立っていた。
「う…げほっ、げほっ…う、ウサ耳。もう大丈夫なのか?」
「…?……なにがだ。」
「気を失っている間、寝言を言いながら凄く苦しそうだったからさ。」
「なんでもない………わたしはどれくらいきをうしなっていた。」
「2時間くらいだと思うけど…てかさ!ちょっとは感謝してもらいたいんけどな!ウサ耳が気を失ってる間も魔物が襲ってきてさ!あれ!ほら!あいつら!めちゃくちゃ頑張ったんですけど!」
「きさまがワナにかかるからこんなことになってるんだろうがぼけがあああああ!!!」
ボケガー))
ボケガー)))
ボケガー))))
◇
そんなこんなのやりとりの後、アルネロの指示に従い、先へと進む事にした。
「ちなみにアレって食べれたのか?鞄が無くて食料も水も無いんだよな。」
俺は転送された場所で倒した禍々しい魔物を指差しながら、念の為に確認をとっておいた。
「あれは…たべれないことはないが、やめておいたほうがいい。しんぱいするな、わたしのガントレットにひじょうしょくとみずがたしょうはいっている。」
アルネロがそう言い右手を少し上げると、爪の下部装甲がパカッと開き、中から筒とバケットが姿を現した。
「お、おお。無骨に見えて機能性重視だったのかそれ。」
「ふんっ………それよりも、かいそうがわからないいま、うえにのぼるかいだんをみつけることがさいゆうせんではあるのだが…。」
俺達の前に現れたのは降り階段だ。
アルネロは階段の周りを観察しながら、少し悩んだ様な表情で考えを張り巡らせている様だった。
「とりあえずさウサ耳、Bランクダンジョンは30階層までなんだろ?だったらいっそ先に進んでみないか?」
「ううむぅ…きさまがたおしたまものをみるに、すくなくとも20かいそうのちゅうばんからこうはんのはずだ。うえにあがるよりはこうりつてきではあるが…。」
「かなり慎重に見えるけど、ウサ耳はBランクダンジョンを踏破した事は無いのか?」
「なんどもある。このダンジョンにしゅつげんするまものはすべてはあくしているからもんだいはない。あるとすれば、ていきてきにかわるワナのいちとしゅるいだ。のろいやいのちをうばうたぐいのものもある。」
アルネロは頻りに辺りをキョロキョロをとしながら俺の前を歩いて行く。
「俺の鎌スキルを使えば、魔物は問題無いと思うんだ。それにウサ耳…アルネロのコーディネートがあれば罠だって。」
「ふんっ、そのワナにかかったアホウがよくいうな……まあこれもいいべんきょうだ。いいか?ダンジョンでパーティとはぐれてしまったばあい、2じかんはそのばでまて。ちかくならもどってくるかもしれない。」
「ふむふむ。」
俺は咄嗟にメモに書きながら、アルネロの後を付いていく。アルネロはこちらを向かず、壁や天井、床などを入念に見ながら少しづつ進んで行った。
「もし、もどってこなければ、そとにでてふつかまて。まてないじょうきょうのばあいはかならずしるしをのこせ。」
「2日待って合流出来なかったら…?」
「しんだものとし、ギルドへほうこくしろ。」
「まじっすか。」
「まじだ。ダンジョンでは、はんすういじょうがこういったワナではなればなれになり、そこでやられしんでいる。だから、わたしのようなレンジャーをつれていくのが、いまはスタンダードだ。」
「レンジャー、メイエリオが勉強中だって言ってたような…。」
「おい、そのみぎのかべはさわるなワナだ……いちりゅうのレンジャーになるには、ひたすらけいけんをつむしかないが、はっきりいってこれは、カンのするどさがかんけいしてくる。ま、センスしだいだな。」
アルネロは幾分か気さくに喋ってくれている様に感じた。どこでそうなったかは分からないが、俺の先を歩き始めてから少し優しくなった気がする。
「おい、まものだ。30かいそうにいくまえに、わたしのたたかいかたをみせておく、そこでまっていろ。」
「了解……って!あの魔物でかくない!?アルネロいける!?あれいける!?」
俺達の前に現れたのは、サイズの合っていない鎧や兜を着けたでっぷり太った鬼、オーガ種が二匹いた。
すぐさまレベルの鑑定を行うが、レベルは23と思ったよりは高く無かったが、それでも同時に2匹だとどおなんだろうか。
「ガアアアアァァァ!!」
オーガもこちらに気付き雄叫びをあげた。
近くに置いてあった大きな剣を掴み、たるんだ腹で隠れた短い足を必死に動かしこちらに向かってくる。
「ア、アルネロ!」
「だいじょうぶだ。みておけ。あんなのはざこだ。」
俺はあまりの大きさに危惧してしまい、アルネロを見るが、なんとも涼しい顔で周りの壁や天井を見ている。
「ふふ…ひさびさにあれをやるか。」
ポツリと何かを呟いたアルネロの顔は
少し笑っている様に見えた




