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えぴそど88 Begin Again

「お姉ちゃんこれ読んで!」


「あっ!ジャンパー!次は私の番なのに!」


「いいじゃん!ホクリはまだ仕事終わって無いだろ!」


「ジャンパーだっ…て……お、終わ…ってる…。」


「へへーん!ねぇ!お姉ちゃん!ホクリが終わるまでこれ読んでよ!ね!アルネロ姉ちゃん!」


「はいはい、ホクリも早く終わらせてこっちにいらっしゃい。待っててあげるから。」


「うん!ありがとうお姉ちゃん!すぐ終わらせるから!」





────血は繋がっていなくとも

私のかけがえのない大切な家族の思い出


そして

二度と思い出したく無い大切な家族の思い出────





18歳になった私は、時間を見つけては勉学に励んでいた。歴史、政治、経済など、とにかく手当り次第に知識を詰め込んでいく。


学校へなど通えない私がどう学んでいたか。


集落に住む老人達の身の回りの世話をする代わりに、それぞれが持つ専門知識を教えて貰っていた。


元王宮勤めの者に商会の幹部だった者、軍部の管理職にランク持ちの冒険者など、多種多様の先生達が私に知恵を授けてくれた。


親は既に亡くなり、その日食べるのが精一杯の生活の中、小さな希望の光を失わんとし、なけなしの銭を貯め薄い参考書を買う。それが私の日常だった。



兎人種の中でも、筋力に恵まれない為戦闘能力が低く、かといって商売や農畜の才も無い為、独自の集落を築く事が困難な部族。


それが私達【立耳白兎たてみみしろうさぎ族】


常に他の亜人部族に依存して生きており、奴隷となんら変わらない待遇と、劣悪な環境下で生きていた。


立耳白兎を一言で揶揄すれば『役立たず』


兎人のアイデンティティである筈の聴力と脚力、危機察知能力が軒並み低い。まともな教育を受けていないので知性も低く、雑用程度しかこなせない。


何かを手にしなければ、何も変わらないこの生活を変えようと、当時の私は躍起になっていた。


それでも昔からそうだった訳では無い。


元々は亜人の中でも見た目が人に近いという事もあり、立耳白兎族は人と共に街で暮らし、仲良くしていた時代もあった。


その為、狩りに必要な能力が低くとも、人と同じ様に生活する分にはなんら問題無い。


そう、全ての元凶は六代目拳王ワルド・ミュラーの貴族至上主義に準ずる排外政策に依るものだった。


神託後、ワルド・ミュラーは爵位と領地を授かると、真っ先に領内に居る全ての亜人種を奴隷化する方針を発表した。


当初は反対意見も多く、全ての亜人と共に、ワルド・ミュラーに対抗する勢力が抗戦し、各地で戦闘も起きた。


特に当時のアスタリア国王の弟、王弟ザイオンは奴隷制そのものに激しく異を唱え、ミュラーの爵位剥奪と領地没収を要望し、王都を出て民衆を先導した上で内戦に発展させた。


国王セリジンは、実力と人望を兼ね備えた弟に事ある事に反発しており、この件でもザイオンが反対を表明するやいなや、セリジンはワルド・ミュラーを公では無かったものの支持した。


これにより、セリジン派はザイオン派への妨害を秘密裏に度々行い、ミュラーを陰から助力する形となる。


ザイオン派は数が多く、序盤は各地で優勢を保っていたが、度重なるセリジン派の妨害と、拳王の圧倒的武力の前に成す術も無く、各地で敗戦が目立ち出すと、排外政策は徐々に推し進められて行き始めた。


またこの年の暮れ、亜人達の最大の頼みの綱であった王弟ザイオンが、宿営地で何者かに暗殺されてしまう事件が起きる。


反対派閥の急速な弱体化により、ワルド・ミュラーが治める領地とその周辺地域では、一気に亜人の奴隷制が敷かれる事となった。


当時、その地域では多くの種族が捕まり奴隷に落とされ、多くの種族が殺された。


逃げ延び生き残った亜人達は、王弟ザイオン派だった貴族達により保護される事となる。


その中心となったのは三代目拳王の直系子孫に当たるフルブライト家と、四代目拳王の子孫であるジャクシン家だった。


幾度と無く帝国の侵攻を食い止めて来た、二大華族を中心とした勢力に対し、非公式ながら王家公認のミュラーと言えど簡単には太刀打ち出来ず、ミュラーの発した奴隷制は、アスタリア西部の一部に留まる結果となった。


しかし、その後の亜人種が安泰に過ごせたかと言えばそうでも無い。


一度に大量の難民と化した亜人達により、アスタリア東部は深刻な食料難に陥ったのだ。


その中でも一番多く難民を受け入れたオライオス地方の治安は一気に悪化し、食料や金品の強奪等の犯罪が日々相次いだ。


これにより、最初は快く手を差し伸べていたオライオス地方の民の不満が爆発し、各地で領主へ向けた暴動が起きる様になってしまう。


状況を重く見た当時のフルブライト家当主、ドルフォーラ・フルブライトは、自身の所有する財産のほとんどを売り払い、人と亜人、双方の救済に尽力する。


しかし、財政難により統治が難しくなったフルブライト家の領地から、人々の姿は徐々に消え、代わりに亜人の集落が増え始めた。


亜人のほとんどが難民だった為、税の徴収も難しく、まともな統治が行えない状況の中、ドルフォーラ・フルブライトは文化の違うそれぞれの亜人達に、領内での特別自治権を与え、最期まで庇護の姿勢を貫いた。


こうして、オライオス地方の北部はフルブライト家の管理下の元、亜人達の住む場所となり、南部は人々が暮らす街が増え、ジャクシン家が統治した。


しかし、こんな事で平和になれば争いなど起きない。



自治権の統治者に成らんと

今度は亜人同士での争いが勃発する

次話多少の胸糞が含まれます

お読み頂く場合はご注意ください

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