えぴそど86 ダン負-傷
二匹のリス型魔物の叫び声に呼び寄せられ、魔物が思いの外たくさん集まってきた。
毛色もまったく一緒のリス達が所狭しと通路を塞ぎ、牙をこちらに向け『ふんすっ!ふんすっ!』威嚇している。
残念ながら、強そうには見えない。
数は多いが、なんだか可愛らしくも見えてきた。
「コースケ、いけるか?」
「ええ!お任せ下さい!囲まれてもトモが飛び込んで来ないように見てあげてください!」
「承知した。」
俺がピンチに見えるとトモが助けに来てしまう。
トモの事をジャクシンさんに任せ、背負っていた鞄を置くと、俺はジャックマルモッテの群れに向かい飛び込んだ。
『カキィ』
【経験値50を獲得しました】
『カキィ』
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【経験値10を獲得しました】
『カキィ』
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四方八方から飛びかかってくるリスに対し、俺は短槍を薙ぎ払い、確実に数を減らして行った。
強肉弱食のおかげで、数に翻弄される事なく対処できている。焦らず対応していけばいい。
そう思っていた矢先の事だった。
「いったぁ!!!」
俺は右足に走った激痛に表情を歪ませる。
右足にジャックマルモッテの牙が突き刺さっていたのだ。
「な!?なんで!?」
俺は慌てて足に噛み付いてきたリスの顔面に槍を刺すと、改めて魔物の群れを確認する。
すきる〈れべるかんていがん〉
レベル鑑定を行うと、ジャックマルモッテは基本的にレベル7~9程だったのだが、個体差が大きく、中にはレベル3や4も混じっていた。
そう、強肉弱食は自身のレベルより3以上高い者の攻撃を弾く。俺のレベルは現在2のままなので、レベル4以下の魔物の攻撃は普通に通ってしまうのだ。
「やばっ!また!…あっ!っつー!!!」
また一匹足にかじりつかれた。
ここにきて強肉弱食では、防具や服が守られない事が顕著にウィークポイントとして露見している。
基本的に背の低いリス達が執拗に足を責めた所為で、足回りの肌が完全に露出している。
そこに噛みつかれては、レベルが低い者同士、ダメージは普通に通ってしまう。
俺は、膝を突きつつ、肉が削られた右足に走る痛みに耐えながら、レベルが低いリスを優先し倒していった。
リス達は更に増援を呼びこんでいる。
ここはもぅ鎌を使い一掃しようと思ったその時だった。
「まったく、きさまはなにをしてるんだ。」
〈中級格闘スキル アイロニーショット〉
『カキィィィィィ』
【経験値50を獲得しました】
リスだらけの視界から、急に真っ白になったかと思い振り向くと、アルネロの右手はこちらに向けられていた。
アルネロは魔力を放つ技を俺を巻き込みながら使い、リス達を瞬殺してみせた。
「コースケ、それは噛み傷か?」
ジャクシンさんが俺の傷に気付く。
俺は正直にレベル差について話しておくべきかとも思ったが、まだ隠しておいた方が無難である。
「この数に囲まれたのは初めてで、もしかしたら同時に捌ける量が決まっているのかもしれません。迂闊でした。」
「そうか……何にせよ傷の手当をしなければな。トモ、奴に回復魔法を使ってやってくれるか?」
俺の咄嗟の嘘にジャクシンさんは恐らく気付いているだろうが、別段深く突っ込んで来る気配は無かった。
トモは基本頭がいい。
こちらの言葉をしっかりと理解しようとしてくれている。
トモは俺にゆっくりと近づくと、足元に魔法陣が展開され、回復魔法をかけてくれた。
「ありがとう、トモ。」
「わふっ。」
俺がトモの耳の下辺りを撫でると、トモは尻尾を振りながら俺の手に頬ずりしてくれた。
「おまえはあれくらいもたいしょできないのか?」
「う……す、すみません。」
「じゃくしんさま。このじょうきょうでかそうにすすむのはきけんとアルネロははんだんします。」
「そうだな。だが、コースケがカマなるスキルを使えば特に問題は無いだろう。今のは槍を試しておきたいという気持ちからなるものだ。このまま付き合ってやってくれアルネロ。」
ジャクシンさんには全てお見通しだった。
「あ、ありがとうございます。ジャクシンさん。ウサ耳も、助けてくれてありがとう。次からはもう少し慎重に行ってみるよ。」
アルネロは小さく舌打ちをした。
「スキルにかまけすぎだ、むやみにつっこむな。」
「あ、ああ。ありがとう。そこも意識してみるよ。」
再び、メモを取りながらダンジョンの三階層を進むと、前方に木の箱を見つけた。
「え、あれは…もしかして宝箱ですか?!」
「ああ、そうかもな。まもののかのうせいもあるから、あけるまえにうえのふたをやりでさしてみろ。」
そんな調べ方なのか!
と言うか、初めての宝箱!これはテンションが上がる!ゲームで良く見る様な装飾をされた様な箱では無く、単純に木の板で創られた質素な箱が置かれていた。
俺はアルネロに言われた通り、木箱のフタ部分に短槍を刺してみた。
「………も、もういいですかね?」
「いいだろ。あけてみろ。」
木箱を開けてみると、箱の底に無造作に葉っぱが置かれていた。
「えと、これは…。」
「あ?………めずらしいな。ポンデソウだ。」
「おお!珍しい草!?それで!?どんな効果が!」
「とてもニガいだけでやくにたたない。きさまといっしょでゴミだな。」
「くぅ……。」
「ふふっ、記念すべきダンジョンで初めての発掘アイテムじゃないかコースケ。記念に持っていても損はないさ。」
ジャクシンさんは笑いながも俺の肩をポンっと叩いて励ましてくれた。
「でも、不思議ですよね。これが人や魔物では無く、ダンジョンの変動と共に自然に置かれてるなんて。」
「まあ、色々な説はあるが、人をダンジョンに呼び込む為の餌だろうな。食虫植物に近いものだろう。」
「なるほど…納得です。」
人の欲に付け込んだやり方だが、自己欲の塊の神が創ったものだと思えば納得できる。
手にしたポンデ草を眺めた後、鞄に入れ俺は更に先に進んだ。
階段を見つけ
四階層へと進んでいく




