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えぴそど81-勇24 神に捧げる舞

ベルの魔法が解除されると、二人は同時に魔物に向け駆け出した。


馬の魔物は投げつけた斧を既に拾っており、向かってきた男に振り下ろす。


男は難なく躱すと馬の顔すれすれに跳び抜け、壁を蹴る反動で馬の後頭部に向け急接近した。


ベルは牛の魔物の前蹴りを軽やかなステップで避けると、詠唱を行いながら両目を閉じ手を広げその場でターンをした。


スキル〈朱雀〉


「ふふっ…私ね!貴方に聞きたい事がたくさんあるんですの!」


杖の先から炎に包まれた不死鳥を象った魔法が発動される。それは、牛の魔物を翻弄する様に飛び回り、その様子を見ながらベルは嬉しそうに男に語りかける。


スキル〈身体強化(麒麟)〉


「ああ!何でも聞け!今は気分がいいぞ!…オラァ!」


「ビギィィィィィィン!!」


男の回し蹴りが後頭部に炸裂した馬の魔物は、叫び声をあげながら前のめりに倒れかけ、地面に手を突く。


「嬉しいわ!でも時間もありませんしひとつだけ!改めて、私はベル・ホロント!もう一度聞くわ!貴方の名前を教えて下さらないかしら!」


「ブモォォォォォォォ!!」


牛の周りを飛び回っていた朱雀は、狙いを定めた様に急降下し、膝に当たるとその部分を溶かし大きな穴を開け、牛の魔物は悲鳴をあげる。


男は手を突いた馬の魔物の肘関節を狙い、思い切り大振りなパンチを繰り出すと、馬の肘から先はちぎれ、壁まで飛ばされた。


「ビギァァァァァ!!」


「俺の名前はキラハ!ただのキラハだ!ハハハハッ!ベル!俺は今!この世界が何なのかが分かったかもしれない!」


牛の魔物はベルの死角から腕を薙ぎ払うが、ベルは攻撃を見ないまま目を閉じて大きく飛翔する。そのまま両手を広げ、自由落下に身を任せながら言葉を続ける。


「キラハ!私もですわ!この不条理な世界に秘めらた理が何なのか!見えた気がしますの!あぁ…世界はこんなにもキラキラしていて美しいのですわね。」


キラハは空中でベルを両手で受け止めると、ベルは不敵な笑みを見せながらキラハを覗き込む。


「私は今汚れていますわよ?」


「確かにな!ベル!汚いぞお前!!だが俺も一緒だ!見ろ!」


「ふふっ。あははははっ!」


「ハハハハッ!!」


キラハが着地すると同時にベルは立ち上がり、手を握ったままキラハの周りを何度も踊る様にターンをする。


キラハもベルのターンに合わせ、その手を強く握り、にこやかに顔を見合わせる。


そんな二人に対し、牛の魔物は両手を組みハンマーの様に振り下ろし、馬の魔物は斧を振り下ろす。


二人は二匹の攻撃を意に介さず、ベルの杖からは巨大な光の魔法が発射され、キラハはベルを再び抱きかかえ、馬の魔物の顔面を下から蹴り上げそのまま宙に舞う。


ベルの光の魔法は牛の頭部に穴を開け、キラハの蹴りで馬の魔物の頭部は吹き飛んだ。


物理無効を付与されていた牛の魔物にはベルの魔法が、魔力無効を付与されていた馬の魔物には、キラハの地の膂力で対抗し、見事二匹を打ち破った。


「ベル!!いいなお前!凄くいいぞ!俺はお前が欲しい!」


「あははっ!キラハ!私達は敵同士ですわよ!2つの国がある限り決して結ばれませんわ!」


「なら壊してやる!この世界から国境を無くしてやる!嘘じゃないぞ!俺がこの世界を新しくしてやる!」


「あら!そうなったら私は貴方のものになるしかなさそうですわね!どう致しましょ……期待してしまいますわ!ふふっ。」


二人はそのまま出口近くに着地すると、デミリッチに向かい攻撃を仕掛けた。


デミリッチは先に二人を射程に捉えると、手に持つ本のページがパラパラとめくれ、文字が赤く発光した。


〈上級魔法 ジャッジメントソード〉


デミリッチの杖から無数の剣が二人に向け放たれた。


ベルの杖が光ると、二人を光が包み、デミリッチから放たれた剣を次々蒸発させていく。


スキル〈断罪だんざい

一定時間、術者周辺への魔力による全ての攻撃を無効化する最上級魔法。


「ふふっ。今度は貴方の魔力が効かなくなりましたわよ。どうされますの?」


スキル〈白夜びゃくや

単一対象に光属性を付与し、次に放たれる攻撃スキルの威力を5倍にする。


ベルは不敵に笑うと、キラハに向け強化魔法をかけた。キラハの身体強化はまだ継続していたが、鹿の角が青色から白色に変化し発光し始める。


「知ってたかデミリッチ!!魔法が効かないなら蹴っちまえばいいんだぜ!」


〈上級格闘スキル デッドエンド〉


ベルを抱きかかえたまま、キラハが再び宙に舞うと、鋭角を辿り一直線にデミリッチに向かい急下降する。


突き出した片足は眩しい程に輝き、そのままデミリッチを貫くと地面に大きな穴を開ける。


轟音と激しい粉塵が巻き起こり、洞窟全体が大きく揺れ天井では所々崩落していた。



【特殊指定モンスターの討伐により以下の条件を満たしました】


【称号〈深淵を覗く者〉を獲得しました】


【称号〈深淵を覗く者〉により〈パイロン〉がスキルに追加されました】

【〈契約〉により〈パイロン〉がスキルより消去されました】


【称号〈深淵を覗く者〉により〈アポカリプス〉がスキルに追加されました】

【〈契約〉により〈アポカリプス〉がスキルより消去されました】


【称号〈深淵を覗く者〉により〈ジャッジメントソード〉がスキルに追加されました】

【〈契約〉により〈ジャッジメントソード〉がスキルより消去されました】



真っ暗な洞窟の中、揺れと砂塵が収まると、宙にベルが唱えた光の玉が上がった。その光に照らされたのは二人の姿だった。


「ベル…俺は一度アスタリアに戻る。やらないといけない事が見つかったからな。」


「ええ、私もこれから忙しくなりますわ。なにせ、貴方を殺す為に知恵を振り絞らなくてはなりませんもの。ふふっ。」


「ああ。俺の準備が整うまで、お前は賢者を全うしろ。この手に刻印がある限り、俺達は惹かれ合う運命だ。必ず会いに行く。」


「あぁぁぁ、エリシアになんと説明致しましょうか。ふふっ、まるで夢でも見ているかの様ですわ……キラハ、どうか息災で居て下さいね。待っていますわ。」


「とりあえず来月辺りには会いに行く。」


「え!!?ちょ、ちょっと思ってたのと違いますけども……はい。待っておりますわね。」


「ああ………………じゃぁな。」


しばらく見つめた後、キラハはベルの横を通り、出口へと向かおうとした。


「あ!キラハ!お待ちになって!」


「……なんだ?」


「あの岩をどかしてエリシア達と合流するのを手伝って下さらないと、私には無理ですわ。」


「…………わ、分かった。」



何とも締まらないまま

世界を巻き込んだ二人の物語は進んで行く

ここで二人の話は一旦お開きです。

また、今週の掲載は本日で終わりです。

次回11/30月より掲載を再開致します。


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