えぴそど8 男気
【経験値50を獲得しました】
【男気100を獲得しました】
なんとか間に合った
熊と女の子の間に滑り込み攻撃を弾く。
それにしても気合の入った子だな。そのまま俺の勇姿を特とご覧あれ!そしてお礼を特とください!できればお風呂になんかも浸かりたいです!
『カキィィィィィ』
【経験値50を獲得しました】
お決まりのフレーズにミュート機能を付けたくなってきた。さて、突っ込んだはいいがどうするべきか。先にこの1頭を倒し、残りの2頭をまとめて倒すべきか。それでも5ポイントは節約でき…る……ん!?
ちょっと待て!男気って言ってなかったかさっき!?スキルを確認するとやはり加算されている。聞き間違いじゃなかった!やっぱりあれか!その名の通り男気溢れる行動で得られるやつなのかこれ!
「ガァァァァァァァァ!」
熊が怒りの咆哮をぶつけてきた。
幸運な事に、鳴き声に反応した奥の2頭もこちらに走ってくる。好都合だ、これで一度に倒せる。それにしても走るの速いなこいつ等。
身を挺して女の子を救う。
確かに物語の王道だが、それを男気と置き換えるのは納得できる。さらに100ポイントはでかい。大カマすら使う事ができる様になったのだ。
〈小かま 145/5〉
〈大かま 145/100〉
3頭が揃うと、両サイドの熊が爪を振り下ろす。
『カキィィィィィ』
『カキィィィィィ』
【経験値50を獲得しました】
【経験値50を獲得しました】
そして最初に対峙していた真ん中の熊が噛み付いて来る。
『カキィィィィィ』
【経験値50を獲得しました】
そこからも3頭の連撃が続く。
俺は冷静にスキルを開き〈小かま〉を選択していく。距離が近すぎて3頭同時に刃筋をなぞるのが難しく、また、やたら動くのでタイミングを慎重に見計らっていた。
その間も執拗に攻撃してくる熊達。
正直ワンパターンな物理攻撃ばかりで飽きてくる。
攻撃が効かないと分かってからは、動物に戯れられているム○ゴロウさんの気分だ。そんな事を思いつつも3頭の動きが揃った時を見逃さない。
ここだ!
〈けってい♡〉を勢いよく押す。
空間が一瞬揺れたと感じた時には、鎌が3頭を貫いていた。若干思っていた形にはならなかったが、間違い無く致命傷を与える場所なので結果オーライ。
【経験値5400を獲得しました】
アナウンスも流れ、俺は彼女を救う事ができたのだ。
ドヤ顔で後ろを振り向くと、肝心な彼女は気を失って倒れており、どうやら失禁もしてるようだ。状況から仕方ないが、ここからどうすればいいのか考える事が多くて困る。
脱出した馬車はもぅ走行音も聞こえない程に遠くまで離れた様子。改めて周りを見回すと、そこら中に肉片や血がぶちまけられた地獄絵図。平和な日本で過ごしてきた俺には中々のハードモードだ。
死体を見るだけでも胸がざわつくのに、スプラッターでぐっちゃぐちゃだ。
なるべく見ないようにするのが精一杯。本来なら穴を掘って土に埋めてやるべきなのだろうが、アレらを運ぶ勇気も無ければ、そこまでしてやる義理もない。
そもそも火葬か土葬かも不明な異文化世界。
可哀想だがそのままにさせてもらう。落ちていた布の袋を拾い上げ、吐き気を抑えながら、何かないか物色してこの場を離れる事にした。
まずサンダルが目に入る。
血が付いていたので明らかに誰かが履いていた物だが、ありがたく使わせて頂く。
ちゃんと履く前に手は合わせておいた。散らばっている荷物の中から布を拾い、腰に巻きつける。これでひとまず最低限の文化的な見た目になっただろうか。
パンの様な物と、近くには革袋に入った水を見つけた。流石にここで食べる気にはならなかったので、布の袋に詰め込め、水だけをゴクゴクと飲ませてもらう。無論、味わう余裕など無い。
辺りから漂う鼻をつく匂いが中々に厳しい。
今、状況を分からない人がこの光景を見たら、間違いなく山賊案件だな。
不意に気配を感じ周りを見ると、狼やカラスぽい鳥が集まって来ている。鑑定眼を使うとレベル8前後。狼達は明らかにこちらを警戒している様だが、死体を引きずっており襲って来る気配はなかった。
小さい荷車を見つけ乗っていた武器などを下ろした。食料や飲物を積んでいき、失禁した彼女も一緒に乗せる。いきなり襲われない様に、彼女の上に布を被せておいた。
焦げまくった馬車に、一際装飾が派手な宝箱が2個見える。それも所々焦げてはいるが、無事な様なので一緒に荷車に積んでおく。鍵がついており中身は判らなかったが、今後の生活に役に立つかもしれない。
そのまま荷車を引きながら真っ暗な夜道を進む。
元々疲れていた身体に、ボロボロの足。だが飲み水を摂取できた事と、履き物が手に入ったのはありがたい。
これ程に追い込まれた状況であっても、社畜であれば笑顔で乗り切らなければならないのだ。
月明かりを頼りにどれくらい進んだであろうか、辺りが若干明るくなってきている。
異世界に飛ばされ
最初の長い夜が明けようとしていた