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えぴそど77-勇20 萌黄の実

「もう手加減はしてやらねぇぞボケが。」


男の頭からは青色をした鹿の角の様なものが生えだし、額が割れ、大きな目が現れる。


〈身体強化(麒麟)〉


男は牛の魔物に飛びかかると身体を捻り、回し蹴りを放つ。蹴りが届くか届かないの距離に到達する瞬間、馬の魔物の斧が男を襲った。


「ちっ!またかよ!」


男は斧の速度に合わせ身体を回し、斧を足蹴に反対方向へと跳んだ。そこにレイス達の鬼火が放たれる。


「うぜぇな!…じゃぁお前らからだ!」


〈上級格闘スキル トリックスター〉


男は空中で両足を使い、蹴りを7発繰り出した。

その一つ一つから魔力の塊がレイスに向け放たれる。


レイスが避けようと揺らめいた瞬間、放たれた魔力は急に方向を変え速度を上げた。そのまま、本来向かっていた対象とは別の対象の身体を切り裂く形となる。


「くそ!二匹も残ったのかよ!」


そのまま落下する男に対し、牛の魔物が角を突き上げる。男はその角をギリギリで躱しながら角を掴み一回転すると、その反動を使い再度トリックスターを放つ。


残りのレイスを片付けると同時に、こちらに斧を振り上げていた馬の魔物にも当てる事ができた。


しかし馬の魔物は身体に当たった事を意に介さないままこちらに向け斧を振る。


「うぉ!!!」


〈石渡 土蜘蛛〉


男は咄嗟にスキルを使い身体を硬質化させた。

斧は勢いよく振り抜かれ男に直撃すると、甲高くも鈍い音が響き、男の身体は壁に叩きつけられた。


「あっぶねぇなぁ~」


スキルにより無傷で攻撃を凌ぐも、残す二体に対しての有効な戦い方を、男は見出だせていなかった。


牛も馬もどちらも身体が非常に堅いのだ。


スキルを使えど、致命傷を与えられない。

更に、男には別に気になっている事があった。レイスを統制していたのはこの二匹では無い。


明らかに別の何かが近くに居る。


男は首を捻りながら骨を鳴らすと、左腕を顔の前で曲げ、目を閉じる。


「女!そこから動くなよ!!」


〈風堕 無無霧〉


急に辺りが霧に包まれた様に霞がかってくる。

牛と馬の魔物は少し困惑した様に周りを見渡すと、霧の中から男が現れ蹴りを浴びせる。


それも、一人では無い。

男の数は15人になっており、一斉に二匹に襲いかかった。


その様子を見つめていたのはベルは、徐々に濃くなっていく霧の中で戦う男の姿を目に焼き付けていた。


(動きが早いし全く読めない。それにあんなスキルは見たことが無い…あれが拳王…)


するとベルの真横から男が急に現れた。


「ひっ!」


「馬鹿か、静かにしろ。立てるか?」


「…麻痺が残ってしまっていて足に力が…。」


「ちっ!」


男はベルを再び担ぎ上げると、壁沿いに走り出し、小声でベルに向け言い放った。


「分が悪すぎる。俺の影と戦っている間にここを抜ける。大人しくしてろよ。」


「ええ…分かりました。足を引っ張ってしまい…本当にすみません…。」


「うるせぇ。黙ってろ。」


男はベルを左肩に担いだまま、霧の中を走り出口を抜けようとしていたが、急に足を止める。


「ど、どうされたので……あれは……。」


「あぁ、あれがレイスを操っていた奴だ。まさかこんな所で出くわすとはな…。」


穴から少し先に不気味さを醸し浮いている魔物が居た。


体長は2m程でローブを纏いフード被っている。

顔の部分は黒く闇が広がっている様で、顔として物体は視認出来ないが、真ん中の辺りで何かが赤く発光していた。


右手には魔道士が使う杖を持っており、左手には魔導書の様な物を持っている。


「デミリッチだ……ちっ!余裕かましやがって。」


「デミリッチ!?な、嘆きの山の番人じゃないですの!?」


「あぁ、よく知ってるな。一度戦った事はあるが倒せなかった……もしかして俺を追って来たのか…?」


デミリッチが持つ本のページがめくれ、文字の部分が赤く発光する。


「ブモォォォォォォォ!!」

「ビギィィィィィィン!!」


応答する様に牛と馬の雄叫びが響き、こちらに向かって来るのが地面の揺れと音で分かった。


「どう…されますの…?」


「……一か八かの技はある。だが、ここがもたねぇかもしれない。生き埋めになりゃ元も子も無いからな。ひとまず…。」


男は出口から距離を取り、再び霧の中に潜った。

牛と馬の魔物を避けつつ、ベルが元居た方とは反対の壁に向かい、ベルを下ろす。


「いいか、息を潜めておけ。ここに居ろ。あの二匹が操られているとすればアンデッドの筈だ。目や鼻は良くない。」


「はい…。」


男の身体強化の効果は既に切れており、鹿の角は無くなっていた。


「さて…。」


「お待ちになって。」


「あ?」


ベルは持っていた杖の下部をくるくる回すと、ジョイント部分を外し、男の折れた右腕に添えた。そのまま男のほどけかけていた包帯を使い添え木代わりに固定する。


「ご武運を…どうか…どうかご無事で。」


ベルは男の右腕を掴みながらおでこを当て、祈る様にか細く言い放つ。


「いてぇよ。ま、やるだけやるさ。」



徐々に晴れていく霧の中

男は再び走って行った

拳王共通スキルのおさらい


〈炎帝 強羅〉

両の腕に炎を纏い放つ事が出来る技


〈石渡 土蜘蛛〉

自身の身体を硬化させ耐久力を高める技


〈風堕 無無霧〉

霞を発生させ目眩しと同時に幻影を創り出す技


〈氷姫 六花〉

地面を凍らせ対象の動きを封じる技


〈雷音 舞夢〉

対象までの最短距離を瞬時に移動する技

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