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えぴそど66 権力争い

俺達はブーメルムに向け走る馬車の中で、フルブライトさんに、ジャクシンさんが婚約と口走った事について聞いていた。


今は歴代の拳王一族についての認識確認中だ。

きっと、おそらくその筈…正直あんまり興味無いし付いていけていない。


だが、ユージリンとメイエリオは俺と違って興味津々の様だ。


「確か、三代目以降の拳王様の一族は全員爵位を持っていましたよね?」


「ええ、ユージリンさん。その通りです。初代と二代目拳王様に親縁の方がおられず、また勇者に殺されてしまったので現存では四家だけです。」


「でも、五代目や六代目は勇者と戦ってすらないんでしょ?ジャクシン様の方が凄そうだけど。違うの?」


「そうですね。勇者と戦い、更に打ち勝っている拳王様の家系は2つだけ。三代目の直系と四代目拳王様のジャクシン家だけです。メイエリオさんのその認識は、強ち間違ってはおりませんよ。」


「じゃぁ、権力争いって言っても有利そうじゃない?」


「いえ、それがそう簡単にはいかないのですよ。」


フルブライトさんがこんなにも濁しながら話しているのを始めて聞いたかもしれない。


「ミュラー家とヴィガルド家は王都に近い領地を拝領しており、内政にも深く関わっています。また、比較的新しい拳王様を排出した家と言う事もあり、取り巻きも多いのですよ。」


「でも、拳王様と言えばやっぱりジャクシン様の名前が出てくるよ。」


「それはもちろん、歴代最強と歌われるトラ・ジャクシン様の一族。拳王様が不在の折にも、幾度と無く帝国の侵攻を阻止し、屈強なオライオス軍が忠を持って支持する本物の名家です。」


「その強さ故に国境沿いに縛られ、国の中枢で力を付けるライバル達に遅れを取っているという事ですか。ジレンマですね。」


「コースケ様の仰る通りです。特にミュラー伯爵は貴族主義を掲げておられた方です。ジャクシン家の始祖となるトラ様は、一般市民の出自で元々爵位を持っておりませんでした。その流れ自体があまりよろしく思われていないのですよ。その為、王都の晩餐会などでは皮肉を言われる事もよくあります。」


フルブライトさんはどこか悲しそうに俺の方を見た。


「だけど、なんでカカ様は急にそんな権力争いに飛び込もうと思われたんですか?…私が知っている『カカ・ジャクシン』のイメージと何か違う様な気が。」


「………キラハ様の存在でしょう。」


ユージリンが抱くジャクシンパパのイメージは悪くは無いのだろう。だが、俺は現世でもそういった人間を幾度となく見てきた。


「欲が出てきたんですね。」


そう、そういった人間だ。


「これ以上は私の憶測の域ですのでやめておきましょう。」


話しているうちにブーメルムに到着した。

俺はフルブライトさんに簡単な書類を書かされ、そのまま解散しても大丈夫だと言われる。


「この後、皆で呑みに行くんですけど、フルブライトさんもいかがですか?」


「ええ、私も本日はこれで終わりますのでご同行致しますよ。」


ヤッパスタにはシュナとトモを家に置いて来るようにお願いした。シュナは疲れたのかすっかり眠ってしまっている。


俺はメイエリオとユージリン、ハピスさんとフルブライトさんを連れ、飲み屋に向かった。


ちなみにちゃんと服の替えは用意してあり着替えている。さすがにそこまで馬鹿じゃない。戦うと分かっていれば服を持っていくさ。


時刻はまだ15時。

の、筈なのだが酒場には人が溢れていた。

本当にこの街は四六時中飲み歩いている人間が多い。


後で知ったのだが、ブーメルムの周りは狩場が多いのだ。ダンジョンの数もさることながら、多種多様な魔物が召喚されて来ており、様々なランクの冒険者が入り浸るらしい。


俺達はまず、エールを頼みテーブルに置かれると同時に掴むと乾杯をした。


「でもさーさっきまでの話に戻るけど、さっきの話と康介の婚約と何が関係あるのー?」


乾杯と同時にハピスさんが急に食い込んできた。

確かに今までの話しの流れとジャクシン娘の婚約発言とは結びつかない。


フルブライトさんは周りを少し見渡し、伏目がちに切り出した。


「………キラハ様の目的は帝国への侵攻です。」


その言葉に驚くメイエリオとユージリン。


「んー?ちょっとさーそれ私が居る前で言っていい事なの?(笑)一応私は帝国の人間なんだけど。」


「構いません。拳王様がいざ出陣されるとなると、知っていても止められないので。」


フルブライトさんがハピスさんに向け、にっこりと笑顔を見せると、ハピスさんは小さく『やはりか』と呟いた様に聞こえた。


「いやいや、フルブライトさん。それとジャクシンさんが私と婚約する話しが出るのか分からないんですけど。」


本当にそう思った。

むしろ勝手に侵攻すればいいのでは無いのだろうか。


そもそも、この国はいつも受け身で、勇者や帝国の侵攻に対し抵抗はするものの、攻め入った話を聞いていない。


「んもー康介ってば理解力が低いのね(笑)ま、フルブライトの立場だと言いにくい言葉もあるだろうし、仕方ないから私が説明してあげるよ。」



急にハピスさんが生き生きと喋りだした

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