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えぴそど60 拳闘家

結局、午後からの狩りは中止とした。


俺達は食卓を囲い、コノウさんが用意してくれた料理を食べている。


「それにしても、あれが拳王様か。ジャクシン様が仰っていた様に、性格に難ありって感じだったな。」


「ああ、その上強すぎる。はっきり言って攻撃が全く見え無かった。」


「旦那の攻撃を弾くスキルがあれば負けねぇよ。」


そうだ。

拳王がどんな攻撃を行ってこようが、強肉弱食で防げる。だが、ハイロックオーガの件がある分、俺は慢心も油断もする訳にはいかない。


それに、強肉弱食を打ち破る程の技を持っていないとは限らないし、そのもの自体を打ち消す様なものもあるかもしれない。


「皆はどうする?一緒に来るのか?どんなスキルを使うのか分からないから、正直家で待っていた方がいいとも思うけど。」


「拳王様の戦いを見られるんだぞ。付いていくに決まっている。それにコースケの応援をしなきゃな。」


「私も行くよー。拳王なんかぶっとばしちゃえ。」


「メイエリオ、『様』を付けないと怒られるぞ。」


「だってあいつの態度めちゃくちゃムカつくんだもん。」


確かに、あれがこの国を護ってくれますと言われても、正直崇めるべきか悩んでしまう性格だ。


「俺も行くぜ旦那。理由はにいちゃんと変わらないが、旦那の戦いをもっと見てみてぇ。」


「シュナも…」


「おーとっ!シュナは駄目だ。流石に危険すぎる。コノウさんと一緒にここで待機だ。」


「………うん…」


う、すんごい切なそうな顔をしている。

いっそ連れて行くか?いやいや、もし広範囲の爆発技とか使って万が一の事があれば。


「シュナちゃんも連れて行ってあげようよ。拳王との試合って事は軍の人もいるんでしょ?」


「そうだぜ旦那。俺がずっと抱きかかえておくから万が一の時でも守ってみせるぜ?」


「……分かった。シュナも明日一緒に行こう。だけど本当に危険かもしれないんだ。みんなの言う事を絶対に守って離れちゃ駄目だぞ。」


「うん!!ありがとう!」


すんごい笑顔だ。

歳を取った所為か、最近幼子に弱い。


後は、拳王対策を今日中にできうる限りしておきたい。


「それで、皆は拳王について何か持っている情報は無いのか?それこそどんなスキルを使うとか。」


「私は全然分からないかも。」


「すまん。俺もだ。拳王様は基本独りで魔物討伐等を行っているから目撃談が少なすぎるんだ。」


「そうか…。リスクは極力潰しておきたいんだけどな…。」


「今の拳王の事は知らねぇけどよ、歴代の拳王の記録は残ってるだろうし、それを調べたらいいんじゃねーか?」


「それだ!ヤッパスタ冴えてるな!」


先代と現代が同じ技なのかは分からない。それでも傾向と対策は大切だ。


「一番良いのはジャクシン様に聞くか、ギルドの書庫に行くかだけど…あ、コノウさんは?」


「そうか!コノウさん、拳王について知っている事を教えてくれませんか。」


「……いいでしょう。まず歴代拳王様のスキルは…」




歴代拳王の共通するスキル



〈炎帝 強羅〉

両の腕に炎を纏い放つ事が出来る技


〈石渡 土蜘蛛〉

自身の身体を硬化させ耐久力を高める技


〈風堕 無無霧〉

霞を発生させ目眩しと同時に幻影を創り出す技


〈氷姫 六花〉

地面を凍らせ対象の動きを封じる技


〈雷音 舞夢〉

対象までの最短距離を瞬時に移動する技




「以上が歴代拳王様に共通した独自のスキルです。」


「名前は仰々しいけど、思ったよりもまともな効果なんですね。」


俺は素直に思った。

もっと一撃で星を割る様なそんな凄いスキルあるのかと思ったが、予想に反し普通だった。


「コースケ様。そう思われて戦うのはお止め下さい。歴代拳王様はその名の通り、拳闘術をお極めになられた方々です。帝国の勇者や賢者等と違い、天舞以前にそもそもがお強いのです。」


なるほど。

勇者がどんなもんか分からないが、『拳王は何故強いと思う?元々強いからよ!』理論か!!


「でも、拳闘家を極めると言っても、魔物相手に素手で戦うのうは効率悪くないですか?」


「コースケ、それは違う。拳闘家は素手が基本ではあるが、蹴りも使うし、様々な武防具を用いて戦ったり、それこそ剣技より遥かに多い魔力技を駆使する。」


「そうだぜ旦那。だいたい、冒険者を始めようと拳闘家になる奴なんていねぇ。拳闘家だったもんが冒険者になってると思えるくらい、ああいう奴らは最初から抜きん出てるぜ。むしろ格闘家だな。」


「んー、じゃぁ今の拳王も元々その格闘家だったって事か?」


「はい。キラハ様は元々カカ・ジャクシン辺境伯の囲う武術集団の門下生です。それも、13歳の時には既に、師範代級と称され神童だと言われておりました。」


まじかよ。

貧乏神の奴め。人の中でも強い奴を、更に強くしちゃってるパターンか。


これは帝国側の天舞も油断出来なさすぎだな。


「じゃぁ、拳闘家の技も知る必要があるって事だな。」


「だけどコースケ。スキルの数も半端ないし、拳闘家を極めてる系の人ってスキル以前に強いよ。本当にいけるのかな。」


メイエリオが不安を煽ってくる。


「それでもやれる事はやっておかないとな。」


「それなら俺が分かる範囲で説明していくぞ。グラディエーターは元々剣技と拳技のどちらも使えないと名乗れないからな。」


「ああ、頼むユージリン。庭で実際に見せて欲しい。」


試合は明日。

残された時間は一日も無い状況だ。ここから新たな情報を仕入れ組み込み、万全を期さなければならない。


だが焦りは無い。

社畜時代を思い返せば、急なプレゼン資料の作成を命じられる事なんか日常茶飯事だった。一日?十分すぎるぜ。



俺はどう圧倒してやろうかと

意気込みながら庭に出た

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