えぴそど6 happened in a flash
主人公と別視点系の話って
どうしても説明くさくなりますよね
そういうの実は大好物なんです
草原の終わりを告げるハラハラ鳥の森が見えてきた。
国境都市ブーメルムには、明日の正午過ぎに到着できる距離まで来た事になる。
商業都市ヤーからの移動の場合、この森との境で野営を行うのが通例。この森はハラハラ鳥が多く生息している。大きなお腹をした全長3m程の大型野鳥だ。
滅多に人を襲うことは無いけど、縄張り意識の強い鳥で、魔物が森に入る事を許さない。冒険者や行商人からすれば、襲われる心配の少ないとてもありがたい場所なのだ。
ただ、難点を言うならハラハラ鳥は飛びながらフンをする。頭の上に落ちて来たというのも珍しくは無い。皆一様にこの場所ではフードを被ると言うのも、また通例。
初日は慣れない大所帯の野営にぎこちなさもあったけど、3回目ともなると手慣れたもの。17人分の食事作りも分担してあっという間に終わる。
いつもの様に、4組に分かれ焚き火を行う。
真ん中に商人の3人を配置し、残りの3組で三角形の様に陣取り、商人を囲む形になる。寝る時は交代で見張りを立て、馬車とテントも使う。
その為、馬車の荷物をいくつか下さなければいけないのがとっても重労働。
私は食事を摂りながら、先ほど見た全裸男の事を考えていると、冒険者仲間の1人が声をかけて来た。隣の焚き火に居た冒険者Cランクのユージリンだ。
ユージリンは今回の依頼功績があれば、Bランクに昇格できる事が決まっている。
努力家で鍛錬なども欠かさないと聞くし、剣技も中々のモノらしい。背も高く引き締まった身体つき、爽やかな顔立ちで、女性冒険者からの人気も高いみたい。だけどあまり酒場に来ないのでまともに話した事は無い。
今回の護衛でも、ユージリンとは別々に組む事が多かったので、挨拶程度の関係のままだった。私は私でリナイにべったりくっついて行動してるもんだから、傍から見れば恋心を疑われても仕方が無い。
まぁ全く無いと言えば嘘になるけど
「メイエリオ、ちょっといいかな。ブーメルムに着いたら一緒に狩りに出ないかい?」
国境都市ブーメルムに到着した後は、雇い主の用事が終わるまで5日間待機する事が契約で決まっている。ただ、街を離れなければ、近くの森やダンジョンでの狩りは許されている。行こう思えば可能だ。
リナイ達は報酬を見込んで5日間遊びまくると豪語していたし、私はそこまで豪遊するほど余裕がある訳では無い。ブーメルムの近くにはいいホットスポットも多いと聞く。
ホットスポットは魔物が送還されてくる場所を指す。
『魔王』が召喚した魔物が、全世界各地のホットスポットにばら撒かれている状態。
魔物自体に繁殖能力は無い。
長い年月をかけ、次から次へと召喚と送還を『魔王』にされているだけ。よく考えたら魔物にも同情の余地はあるのかな。
「いいよ。せっかくだし行こうか。」
私は狩りへの同行を承諾した。
ユージリンは一瞬後ろを向いてガッツポーズをした様に見えたけど、暗くてよく見えなかった。
「ありがとうメイエリオ。じゃぁまた明日!」
振り返ったユージリンがニコニコしながら立ち上がろうとしたその時、先程までの笑顔が嘘の様に、表情が一瞬で強張る。同時に後ろから悲鳴が聞こえた。
すぐに振り向くと、大きな熊2頭が御者と冒険者を襲っている。一番安全だと思われた、森に近い場所で焚き火を囲っていたグループだった。声を上げた御者含め5人が既に熊達の餌として喰われていた。
「くっそ!」
「スケアリーベアーだ!!」
「なんでこんな所に!?」
「最後にとんだサプライズだな!」
「「「ちげーねぇ!」」」
「2頭同時じゃ手に負えん!分断するぞ!リナイ達は左に当たってくれ!俺とドルガンで右を叩く!残りの奴は雇い主を馬車で逃がせろ!!」
これが経験の差なのだろう。
叫び声が聞こえ振り向く頃には、AランクBランクの冒険者達が、武器を手に取り陣形を作り始めていた。
私やユージリン、あと私の班にいたタンク職の子を含め、Cランクの3人は状況を把握するだけでもいっぱいいっぱいだ。
グラハムは熊の攻撃を身を低くして躱すと同時に、足を斬りつけている。そのまま転がりこみ距離を置くと、今度はその斬りつけた足に向け、ドルガンの魔法の矢が刺さる。
2人でダンジョンにも潜れる実力者だ。
スケアリーベアー相手にも引けを取らない。後はグラハム達が先に倒して、リナイ達に合流すれば乗り切れる。
リナイ達は人数の利を生かし、上手く攻撃を捌いている。元々攻守にバランスが取れたパーティだ。
普段はふざけていてもここぞという時には頼りになる。それにリーダーのリナイは無茶をしない性格だ。グラハム達と合流するまでいなし続けられるだろう。
だけどスケアリーベアーは、本来こんな所に出てくる魔物では無い。討伐レベルはA。冒険者Aランクが最低でも一人いるパーティで挑むべき相手。それも1頭でA判定なのだ。
とても硬い皮膚にたっぷりの脂肪、毛で覆われている事もあり攻撃や魔法が効きづらい。その上、巨体に似合わず脚が速いのだ。二足歩行状態であれば大した事はないけど、四足歩行で走れば馬車程度すぐに追いついてしまう。そんな厄介なのが2頭…
考えてても仕方が無い
私は私で出来る事をしないと
初めて評価を頂きました
読んでくれた方がいるという実感に涙が止まらず餃子をいっぱい食べました
本当にありがとうございました!