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えぴそど59 拳王

対峙した拳王は相変わらず瞬きもしないままこちらを凝視している。


ドライアイもいいとこだ。

その内視力に影響を及ぼすに違いない。まあ今はそんな事どうでもいいけど。


俺が一番危惧しなければならいのは、皆に被害が出る事だ。拳王が動けば誰もそのスピードに追いつけない。


「ユージリン、メイエリオ、ヤッパスタ。俺は拳王と話がある。シュナを連れて屋敷に入っていてくれ。」


俺はなるべく拳王を刺激しない様に冷静かつ穏やかな口調で言った。


「話?ははっ、違うだろ。そうじゃないだろ。」


「君と戦うつもりは無い。ハティについて少し聞きたい事があるんだ。」


拳王の気を逸す様に語りかける。

その間にユージリン達も意図を汲んでくれたのか、こちらを警戒しつつも屋敷に向かった。


「その前に、そろそろ足を下ろしてもらえないか?君の返答次第じゃ譲ってあげてもいい。」


「……ふんっ。」


拳王は表情を変えず素直に足を下ろした。

4人が完全に屋敷に入った事を確認し、俺は話を進める。


「なぜハティに拘るんだ?君ほどの強さがあれば魔物の仲魔は不要に見えるが。」


「お前は何も分かっていないな…そんなの…かっこいいからに決まっているだろ!!!」


ん?あれ?

初めて感情らしきものが見えたと思ったら、なんか急にキャラ崩れまくったんだけど。


「初代拳王が連れていたってだけでブランドなのに、あの大きさ!毛並み!顔立ち!その立ち振る舞い!全てが最高だろうが!それをこの国最強の俺が貰ってやるって言ってるんだ!なんで拒む!名誉と思え!」


「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ。」


いや、落ち着くのはどちらかと言えば俺の方だ。

これはまたとんでもない傲慢な子が拳王なんかになったものだ。


要するに、こいつはトモをファッション感覚で連れ歩こうとしているって訳だな。


「君の考えは分かったよ。だが、そんな理由でハティを…トモを渡す訳にはいかなくなった。」


「なら、俺と勝負しろ。俺は欲しいと思ったものは欲しくてたまらない性分だ。これ以上拒むなら、あの家ごと中の人間を消し飛ばす。」


「悪いが、先にも言った様に君と今戦うつもりは無い。それに、俺のスキルは相手を殺してしまう可能性が髙い。だが、万が一俺の仲間に少しでも傷を付けたら即殺す。」


「言うじゃないか。俺がお前なんかに殺されるって言いたいのか?」


「現に、君の蹴りは俺には届かなかっただろ?これ以上の問答は無用だ。そろそろ帰ってくれないか。午後からの予定も詰まっている。」


俺は脅しには屈しない。

少しでも変な動きを見せれば対応出来る様、スキル欄を開き『b』ボタンを押す準備をした。


拳王の身体は微動だにしていないが、先ほどの攻撃の際も予備動作を感じられなかった。


その代わりに殺気がかった視線をこちらに向けているのが、ひしひしと伝わってくる。


ヤる気だ


「何をしているキラハ!!」


不意に聞こえた怒声に振り向くと、門の方にたくさんの兵士が立っていた。その中央にいるのはジャクシンさんだ。


「あー?あんたか。何をしようが、咎められる筋合いは無いと思うけどね。」


「ここは貴様の家でも無ければ、そこに居るのは我らの特別監視対象の者だ。無許可での接触は見過ごせん。」


「見過ごせなかったらどうするんだ?あー?俺を止められるとでも?はっ!俺に家督まで取られそうなお前がか?」


なんだか凄く険悪な雰囲気だ。

ジャクシンさんの表情も凍てつく程に冷たく怖い。屋敷を見ると、皆が心配そうにこちらを見ている。


「あれを持ってこい。」


ジャクシンさんが兵に指示を出すと、後方から大きく金の装飾がついた木箱が2つ運ばれて来た。


「おいおい、そんなもん持ち出して本気で勝てると思ってるのか?」


拳王は中身を知っている様だが、武器でも入っているのだろうか。


「これをお前に譲る。」


「な!?……まじかよ。」


「…ああ。だからハティは諦めろ。」


「…………。」


え、ちょっと俺付いていけてないよ。

なになに!?何が入ってるのそれ!


「いいだろう。ハティは諦めてやる。その代わりこの男へ興味が出た。お前がそれを差し出してまで守ろうとしているこいつにな。」


「分かった。ならば試合の許可を出そう。だが、ブーメルム内では容認できん。やるならドボーク平原だ。明朝、貴様らを連れて行ってやる。」


「ははっ、明日だな。逃げんなよお前。」


そう言うと拳王はジャクシンさんに向かって歩き出し、木箱を軽々持ち上げると、兵の壁を割りどこかへ行ってしまった。


「あの…。」


「すまなかった。警戒はしていたのだが、奴は神出鬼没。こんなに早く接触してくるとは…。」


「いえ、いえいえ!助けて頂いてありがとうございます!でも、いいんですか。何か大切そうな物を渡してましたが。」


「ああ、あれは気にしなくていい。どのみち私では使い切れん。それより、明日の試合だがやれるか。」


そう、俺の許可無しにトントン拍子で決まった拳王との試合。俺が言った言葉に偽りは無い。鎌を使えば殺してしまう可能性がある。


「正直、相手を殺さずに戦う程、私は戦い方を知っている訳ではありません。どうしたらいいか。」


「お前は何もしなくていい。攻撃無効があるだろう。いくらかすれば奴も諦めると踏んでいる。」


「もし、諦めなかったら…?」


「それは知らん。一つ言っておくが間違っても殺すな。それだけだ。明朝迎えを寄越す。準備しておけ。」


ジャクシンさんはそう言うと兵を連れ引き上げていった。



俺は無邪気に尻尾を振り続けるトモを眺めていた

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