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えぴそど55 マイハウス

ギルドの一階に降りると、来た時より人が増えており酒場は大盛況だ。時刻は午後8時を過ぎたところ。俺の酒に対する欲求がひしひしと高まっていく。


「コースケ、とりあえずヤッパスタを迎えに行かないか?ジャクシン様から貰ったこの許可証があればすぐ牢から出せる筈だ。」


「うん、私もそれがいいと思う。早く安心させてあげないと。」


おうふ、酒に目が眩んで大切な事を忘れていた。

むしろそれは2人で迎えに行くと言っても良かったんじゃないかユージリン。


「そ、そうだな。行こう…。」


「?」


後ろ髪をひかれる思いで酒場を後にし、ギルドを出る。トモを見守ってくれていた兵士にお礼を言い、トモを連れて懐かしの牢に向かった。


「あのー、すみません。ここに今日連れて来られた盗賊のヤッパスタの件で来たんですけど。」


「なんだお前は、服も着ずに裸で街をウロウロするんじゃない。」


いやもうそこは良いんだよ。

そのくだりばっかり逆に面倒くせぇよ。


「こちらがジャクシン様から頂いた連れ出し許可証です。ご確認ください。」


ユージリンが兵士に書類を渡すと、『そこで待っていろ』と言い兵士は詰所に入っていった。


「ヤッパスタ喜ぶかな!」


メイエリオがうきうきワクワクの表情でトモに抱きつきながら感情の昂りをみせていた。


うん、かわいいなこれ。


しばらくすると兵士がヤッパスタを連れて戻ってきた。


「旦那達…これは一体…。」


「お前はまだ喋るな。貴様らこいつで間違いないか。」


「はい、彼です。このまま連れて行っても?」


「構わん。確認も取れている。あとお前これをやるから腰に巻いて股間くらい隠せ。」


粗暴な言い方の兵士だったが、布を俺にくれた。

これまた懐かしの最低限の文化的スタイルに逆戻りだ。


「ヤッパスタ!これで釈放だよ!みんなで呑みに行こう!」


「いや、あの、俺はまだ何が何だか分かってないんだが。」


「コースケがハイロックオーガの素材と引き換えに、ヤッパスタの身柄を引き受けたんだ。ギルド長がそれを承諾した。これでお前は自由だ。」


「…………だ、旦那ぁ……。」


ヤッパスタの表情はみるみる崩れ、ボロボロと泣き出し始めた。ユージリンとメイエリオは彼の肩をポンポンと叩きながら笑っていた。


「ヤッパスタ、自由と言うのは語弊がある。正確には君の事を買ったんだ。これからは悪事を行う事無く、できれば俺達と一緒に行動して欲しい。」


「あ、あだりまえで…ひぐっ!ごのヤッパスタばみなざんの…うぐっ!えぐっ!お役に…だってみぜ…。」


嗚咽で言葉が濁りまくっているが、どうやら分かってくれているようだ。


「よし、呑みに行くかコースケ!」


「ああ-っと、できれば先に家に行って風呂に入りたい。トモを家に置いておきたいしな。お前らも一度風呂に入れよ、結構臭いぞ。」


「え!?本当に!?ちょっと!やだ!コースケ匂わないでよ!」


思春期の娘の反応を見せるメイエリオに、俺は顔を近づけくんかくんかしてやった。


「でも俺達はこの街を拠点にしてる訳じゃないからな。みんなでコースケの家に泊めさせてくれよ。」


「あ、ああ。別に構わないがどんな家かも分からないぞ。あのジャクシンさんの事だ、下手したらとんでもないボロ屋かもしれない。布団だってあるかどうか…」


「野宿だってしてるんだから、どこでも寝れちゃうよ。」


「そ、そうか。じゃあ行ってみよう。地図を見る限りはここと真反対の区画だな。」


俺達は全員で俺の家に向かうことにした。

途中、トモのご飯等を買いひたすら歩いていく。




「えっと…どれかな…こ、ここでは無さそうだけど。」


「そ、そうだな。コースケ、道を間違えたんじゃないか。あ、灯りが点いてるしここじゃ無いよな?」


「旦那ぁすげぇぜ。これですかい?」


「…………ここだ………。」


今、俺達の目の前にあるのは豪邸だ。

周りは塀と鉄柵に囲われており、庭も見える。こちらからみるだけでも部屋数は実に8個以上ある様に見えた。


しばらく門の外から眺めていると、中から1人の女性が出てきてこちらに歩いてきた。


「コースケ様ですね。お待ちしておりました。私はコノウと言います。当面のお世話をする様にジャクシン様より仰せ付けられております。以後お見知りおきを。」


「え、ああ、ありがとうございます。じゃぁやっぱり僕の家はここで会ってるんですね…。」


「ええ、中を案内します。どうぞこちらへ。」


俺達はスーツ姿のコノウさんに連れられ門の中に入って行った。レベルが26もある事から、メイド要員では無く監視員だと言うのが分かる。


いつの間にかフルブライトさんの監視が外れたと思っていたが、まだ俺は疑われているらしい。


トモを庭に放置するのはいささか心配なので一緒に中に入れた。


「あの、コノウさん。全員泊まれる所はありますよ…ね?」


「はい、大丈夫です。どの部屋も清掃しておりますのでご自由にお使いください。夜間は私だけですが、日中にはもう一人使用人も来ており、いつでもお部屋は清潔に保てます。」


「お風呂なんかも。」


「ええ、大浴場が設置されておりますので、皆さん一緒に入れますよ。お食事はまだご用意しておりませんがどうされますか?」


「今日は外でみんなで食べようかと思っていて、ひとまず風呂とトモ…ハティを家に置きに来たんです。そうだ。良かったら一緒に行きませんか?親睦を深めておきたいですし。」


「かしこまりました。私はすぐにでも出られますので先にそちらの女性を湯船にご案内します。皆様はそちらの扉からリビングに入りお待ちください。」


メイエリオとコノウさんが風呂に向かう。

俺達はトモの足を拭いて一階のリビングに入った。


「ひれぇぜ。旦那は何もんなんで?」


「ヤッパスタ。これはイレギュラーだ。深く考えない方がいい。」


その後、メイエリオが風呂から出て来ると、男組はトモを連れて風呂に入った。小型プール並の湯船に広い洗い場。間違いなくセレブリティな屋敷だ。



俺は童心に還り

この世界に来て初めての風呂を堪能した

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