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えぴそど49-勇10 大願の蕾

「ただ、今回は戦いに来た訳じゃないからーそう早まらないでさー話を聞いてほ────」


カクトは言葉を待たずに跳びかかり斬りつけると、女の目が緋色に変化したのが闇夜でも分かった。そのまま女は、身を捩り笑みを浮かべながら斬撃を躱す。


カクトは構わず刀を切り返しながら距離を詰めるが、女はその動きを分かっていたかの如く半身を反らすだけで避け、カクトの背後に回った。


「カクト様!」

「カクト!!」


背中合わせとなった状態で膠着した2人に向かい、物音で目を覚ましたジョリーアンとコルピナが駆け寄る。


「熱くなるな。今の君じゃ私には勝てない。まずは話を聞け勇者。あの2人をまだ失いたくないだろ?」


「……ちっ!!2人とも来るな!!手を出すんじゃない!!」


先ほどと打って変わって冷たい口調で語りかける女に、カクトは〈歪〉を消した。


女はカクトから少し離れ振り向くと、改めて話を始める。カクトも警戒しつつ振り向いた。


「うんうん、良い子だねー。じゃぁさっそく。」


女は袋から大きな鉄の球体を取り出し窪みに手を当てた。球体は白くなっていき半分に割れると、そこから一つの宝玉を取り出す。


「パンパカパーン!これを君にあげるよー。ほらっ!」


放り投げられた宝玉をカクトは掴む。

水晶の様に透明感がある琥珀色の丸い石だ。眼球と同じくらいの大きさで、中心部には何かの模様が刻まれている。


「君にはもう少し強くなって貰わないと困るんだよねー。魔力の練習をしてるんでしょ?それレアアイテムなんだー。」


「…分からない。なぜ敵なのに強くする必要がある。」


「んーそれは魔王の所為かなー。あいつ強すぎて今の勇者じゃ勝負にすらならないと思うんだよねー。拳王も危ういけど。」


「…?……お前は魔族側では無いのか?」


「違うよー。どちらの敵でもあり、どちらの敵でも無いと言った方が正しかったかなー。君の行動次第では殺さないと行けないけどねー。言わば私は只の観測者。この世界の真実を追い求める者だねー。」


「この世界の真実……。」


「そ、君は何も思わないかい?そーだなー例えば、私達の歴史は700年以上前のものが一切無いんだ。一切だよ?おかしいよねー?他にも魔族の人間は私達と何も変わらないのに、何故憎しみ合う?不思議だよねー。」


この世界の真実。

カクトの胸の内にも在る、拭いきれないこの世界の矛盾と謎。


「そうだ、なぜ俺達は同じ人間を憎んでいる……。」


小さく呟いたカクトに対し、女は嬉しそうに笑みを浮かべながら口を開く。


「神託を授ける神は、アスタリア王国とオキリス帝国で違う事を君は知っているかい?これはあくまで例えばの話にはなるけど、神々の戦いに私達は巻き込まれているだけなんじゃないかなってさー。」


「────!?」


「私はそれが知りたい。この世界の真実を。その為にも君にはまだ死なれちゃ困るんだよー。そこでそのカテリアの石だね。それは魔力の流れを視認できる様になる優れものですー。やったねー。」


「流れを…?」


「そー最初はそれを使って練習すればすぐできちゃうよ-。まーその子の本当の凄さはそこからなんだけどねー。それは自分で考えてよ。」


「……。」


「じゃ、私は行くよー。」


「待て!お前は真実を知ってどうするつもりだ!?」


「壊す。王国も帝国も滅ぼして命が弄ばれない世界を創りあげる。神が敵ならば神にも剣を向けよう。それが私達フットプリンツの使命。」


「!?……俺も……一緒に────」


「それじゃ待たねー勇者!またどこかで会おうー。」


カクトの言葉を遮り、女は鉄球を袋に入れ担ぐと手を振りながらコーリンの方向へと歩いて行った。


「カクト様…!お、お怪我は…ございません…か!?」


「ああ、大丈夫だ。それよりコルピナ、ジョリーアン、奴を…フットプリンツと言うのを知っているか。」


「ん~聞いた事がある様な~無い様な~?」


「申し訳…ございません…存じ上げ…ません…教団で…探らせます…。」


「ああ、頼む。」


カクトはカテリアの石を袋にしまい、再び休む事にした。ジョリーアンが警戒に立ち、カクトとコルピナがテントに入る。



「カクト様…先ほどは…本当に…申し訳…ございません…護衛の任も…果たせず…狼藉者に…遅れを取るなど…。私では…カクト様の…お役に……」


「気にするなコルピナ。お前は充分役に立っている。今までも随分と助けられた。だからこれからも俺の傍に居ろ。…感謝している。」


「!?!?!?!?!?────め、めめめめめめ…滅相も…ありません!とととと当然のこここ事です!!!!!!」


「ん~何~?寝れないなら代わってよコルピナ~。」


「だだだ大丈夫…です!ねねね寝れます!」


そう言うとカクトは座っていたコルピナの膝に頭を降ろし、膝枕にした状態で目を閉じた。


コルピナは動揺しつつ、いつもの様に優しくカクトの頭を撫で始めると、カクトの寝息が聞こえてくる。


「ふ~なんやかんやこのお坊ちゃんはコルピナにべったりだな~。」


「ジョリーアン…ちゃんと…お名前で…お呼びしなさい…。」


「あ~いよ~あーあー私も誰か寝かしつけてくれないかな~。」


ジョリーアンは煙草を吸いながら夜空を見上げ、コルピナは優しい表情でカクトの寝顔を見ていた。


「大丈夫…ですよ…カクト様…このコルピナは…貴方様と…ずっと…一緒ですよ?」



そう

いつまでも一緒です────

2020/10/08 10:35編集内容


間違えて下書きを掲載してしまっておりました

申し訳ございません。

10:35に編集分を掲載しております

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