えぴそど40 意思
俺達は一度、前日にキャンプを張ったブロスの森の入り口付近に戻り、メイエリオの体力が回復するのを待っていた。
馬は魔物に喰われてしまい、ブーメルムに戻るにしても時間が掛かってしまう。ボロボロになったテントで野営の準備に入っていた。
「やはり、明日一度ブーメルムに戻るべきでしょう。イレギュラーな事が積み重なりました。このまま継続するのは危険です。」
「あぁ、俺もフルブライトさんに賛成だ。メイエリオを少しでも早く安全な場所に移動してやりたい。」
「わたしはーお腹空いたかな(笑)」
若干一名、欲求に素直な人が居るが、フルブライトさんとユージリンの意見は一致している様だ。俺はと言うと。
「いや、俺は『ワイルドオーク』の討伐に行くよ。」
「今のメイエリオには無理だコースケ!」
「行くのは俺一人だ。」
「!?」
そもそも本来は俺が一人で戦う討伐だとジャクシンさんに言われた事だ。フルブライトさんは俺の監視の意もあるだろうが、受けた依頼はやり遂げたい。
これも社畜体質の性だろうか、イレギュラーな理由があれど、先方は納得してくれないのだ。ならば如何なる理由があろうともやり遂げる。それしかない。
「コースケ、お前の強さは理解したつもりだ。あんな桁外れずのスキルを見れば、お前を弱いとは思わない…だが────」
「私は…大丈夫。行くわ。いえ…行かせて!」
「メ、メイエリオ!大丈夫か!」
テントから出てきたメイエリオは、体調が万全とは言えない。しかし、振り絞ったその声は何より強い意思で固められていた。
「ええ、ユージリン。それにみんな…迷惑かけてごめんなさい。でも、足手まといのまま終わりたくないの…お願いコースケ…私も連れて行って!」
「……分かった。行こうメイエリオ。」
「おい!コースケ!」
「彼女が行くか行かないかを決めるのはお前じゃない。自分で決めた意思が何よりも尊重されるべきだ。ユージリン、あの目を見てまだ街に戻すべきだと思うか?彼女の意思はこの中の誰よりも強い。その想いを受け止めてやろうぜ。」
「…………。」
「あくまで戦うのは俺だ。最後まで付いてくるというのも時には必要な事だ。」
「ねーねーお腹空いたんだけどー。」
「…メイエリオ。行こう、みんなで一緒に!」
「うん!…ありがとうユージリン。でもコースケ…なんかそこまで言われると恥ずかしいよ。」
「おーなーかーすーいーたーしー!」
「おーい!捕れたぞー!」
盗賊のヤッパスタがウサギの魔物2羽と鳥の魔物一羽を持って森から出てきた。
ちなみにこの時、ヤッパスタは縄には繋いでいない。
ユージリンからメイエリオを必死に守ってくれたという話を聞き、また、本人も街まで大人しく付いて来ると言うので自由にさせていた。
フルブライトさんは特段何も言わず、目を伏せ頷いてくれていたし、おそらくヤッパスタはここで逃げてももう誰も追いかけない。
「ヤッパスタ!凄いな!まだ一時間も経って無いぞ。」
「はははっ!にいちゃん。もっと褒めてくれてもいいんだぞ!森での生活が長いからな、予め張ってあった罠もある。弓の腕前も食う為に上がってるんだ。」
「ピッタラビットだ!それ美味しいよねー。」
「待ってろ嬢ちゃん!俺がこいつとデリシャスキノコで、すぐに元気になれる食いもん作ってやっからよ!」
「ありがとう。ヤッパスタには…助けて貰ってばっかりだね…本当にごめんなさい。」
「気にするな!それに、先に助けてくれたのは嬢ちゃん、あんただ。俺は受けた恩はしっかり返す。それが筋ってやつだ。」
「うん、ありがとう。料理楽しみにしてる。」
「おうさ!任せろ。」
「なんか私の事みんなスルーしてないー?」
その後、俺達は食事を摂りながら、改めて今後の予定について話し合った。
「じゃぁヤッパスタはワイルドオークの出た場所が分かるのか?」
「ああ、もちろんだ。この森を拠点にしているんだからそら知ってるさ。奴は縄張りから出てこなかったからほっといたが、倒しに行くなら案内するぜ。」
「ではコースケ様、明日の朝にはヤッパスタとコースケ様を先頭にし、ユージリンさんとメイエリオさんを中間に、私とハピスさんを後方に配置する布陣にしましょう。それでワイルドオークの縄張りに向かうと言う事でよろしいでしょうか。」
「そうですね。皆さんは距離を空けておいてください。あくまで対峙するのは私だけでいいです。一瞬で方を付けます。」
「ではコースケ様、今回は槍をお使いになられないのですね。」
「はい、メイエリオやハピスさんの事もありますし短期決戦で行こうと思います。…ハピスさんには申し訳ないですが、明日もう一度森に付き合ってください。」
「むぐ?……『ごくん!』…うん!いいよー全然。康介の戦う所もっと見てみたいしー。」
「それにしてもよく食う女だな。嬢ちゃんの分ちゃんと残しとけよ。」
そうして、一つしかないテントにはメイエリオとハピスさんを寝かせ、男4人で持ち回り警戒と仮眠を取ることにした。
俺はスキルについてもっと把握する必要があると感じ、〈小かま〉だけではなく、〈大かま〉についても色々と試していた。
もちろん実際に発動はしない、決定前まで知り得る情報を全て頭に叩き込む。
『b』ボタンについては押せなくなっていた。
おそらくだが、クールタイムだろうか。使用から既に数時間以上経っている事から、一日一回制限の可能性が髙い。
これもこまめに観察し周期を知る必要がある。
今最も頼りになるのはこの『b』ボタンだ。
〈大かま〉についてもある程度の予想は付いた。
だが、俺の予想通りならこれは汎用性に乏しい。ここ一番の、それこそピンチの時に使うべきだろう。
辺りが明るくなってきた
今日こそ残業を終わらせてベッドで寝てやる
神々の雑談1
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死神:什造 じゅうぞう
貧乏神:丞之座 すけのざ
疫病神:郭東 かくとう
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丞「で、什造。これはどういうつもりだ。」
什「ん?なーに♡どれの事?」
丞「ふざけるな!経験値7億だよ!こいついつまで経っても無敵だろ!せこいぞ!」
什「でもでも、ちゃんとスキルの資料は渡した筈よ?ここにもほらちゃんと書いてあるじゃない。それを与えた後に言ってこられても。」
丞「暗闇で光る文字とか分かる訳ねーだろ!」
郭「もういい丞之座。什造が入った事で今までの流れは変わったんだ。俺達もそろそろ新しいスキルを作っていこうじゃねーか。」
丞「そうだな…什造の陣営にだけかかる病を持ったキャラとかアリだな。」
什「私のとこだけ狙い撃ち!?2人しかいないんだけど!?」




