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えぴそど37 Person's karma

ユージリン視点続きます

ブーメルムに戻る頃にはすっかり陽は落ちていた。


兵士から、メイエリオ達も無事に着いている事を聞いて安堵する。直ぐにでも会いに行きたいがギルド長へいの報告が待っている。


ギルドに入ると1Fは酒を呑んでいる奴等でごった返している。安全と言われた街道で討伐ランクAの魔物が出ようとお構いなしの雰囲気だ。


受付に行くと二階に案内され、踊り場の椅子で待つ様に指示され座っていると、ギルド室へ向かう扉の方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「分かっている!いちいち口に出すなハイデン!」


声を荒げているのはジャクシン様だ


辺境伯カカ・ジャクシン様の一人娘であり、本名はテオドラ・ジャクシンと言うらしい。


そう呼ばれるのを頑なに嫌っており、万が一呼んでしまうと首が飛ぶと聞いた。


そもそもこんな事が無ければ、お話をする機会さえ無い貴族の中でもエリート中のエリートだ。ジャクシン様とお呼びするのが無難だろう。


30歳目前で独身。

跡継ぎ問題で親とは仲が悪いとも聞く。


中々子供が出来なかったカカ・ジャクシン様だが、このまま娘にも子が出来なければ、現拳王のキラハ様を養子に迎え入れ、後継にすると公言している。


『婿』にでは無く、『養子』にすると言う所に闇が深く感じられる。貴族というのはどこまで行ってもしがらみが多い人達だ。


扉が開くと初老の男性が出てきた。

俺の方を一瞥すると何も言わず下に降りて行く。


開いた扉は閉まる事無く秘書が顔を覗き、ギルド長室に案内される。その後、息をつく間もなくジャクシン様の質問に答えていった。


「うむ、それでユージリン、早速で悪いが一つ頼まれて欲しい。」


「ジャクシン様の頼み?なんでしょうか。」


「スケアリーベアーを倒した男、コースケと言うのだが、この者達と一緒に明日魔物討伐に行ってくれないか。もう一人のメイエリオには既に了承を得ている。なに、危険は無い。」


コースケ…

メイエリオと一緒にいた半裸の男だ。堂々とスケアリーベアー3頭を一人で倒したとホラを吹いた得体の知れない者。


「分かりました。ですが、ただ同行する訳ではないのでしょう?」


「そうだ。奴は記憶喪失だと言っているが、それは明らかに嘘だ。部分的には記憶の欠如はある様だが、奴は何かを隠している。帝国の間者の可能性もある。」


「それを俺に確認しろと?まともに話した事も無いですよ。」


「手は打ってある。お前は奴と距離を詰めていけばそれでいい。討伐の詳細は明日伝えよう。お前も疲れているだろう、今日はこちらで宿を用意しているからゆっくり休め。」


俺はギルドを後にし、宿に案内された。

メイエリオに会いに行きたかったが、夜も更けてきた所だ、今行くのは無粋だろうと我慢した。


翌朝、宿に兵士が来て待ち合わせ場所が変更になったと案内される。


そこにはメイエリオが既に待っていた。


「メイエリオ、昨日は本当に大変な日だったね。いきなりクエストへ参加するとか本当に大丈夫なのかい?」


「うん…お互い無事で本当に良かったよ。私の事は気にしないで。これでも冒険者になって結構経つのよ?これまでにも色々あったし、今回も乗り越えなきゃ。」


「君は本当に強い子だな。感心させられっぱなしだ。」


「うん…一人で居る方が色々と考えちゃいそうだしね。ところでユージリンも参加するの?」


「あぁ、ジャクシン様に昨日依頼されたんだ。危険は無いと言っていたけど、今度こそ君をま…まも…」


「ん?」


「…なんでもない……今日も頑張ろう。」


「うん!」


まだ話をするだけでも緊張している自分がいる。

そんな俺が『君を守る』と言えるにはまだ時間が必要だ。



そもそも彼女との出会いは今から1年前


19歳になった俺は、物心付く前から通っていた、親戚の剣術道場での稽古に精を出していた。


行く行くは自分の道場を開くのを密かな夢とし、家と稽古場を行き来をする毎日。時折、生活費の為に道場仲間と魔物を狩り、その素材を売る。


そんな日々を過ごしていた


ある日、いつもの様に魔物を狩り素材を剥いでいると、森の奥から5人のパーティが歩いてきた。明らかに初心者装備で歳も若く見える。


その一番後ろに居たのがメイエリオだ


身体に返り血を浴び、棒付きの飴を舐めながら、毛皮を剥がした魔物の死体を布に乗せ引きずっていた。


こちらに気付くと苦笑いを浮かべ一礼し、そそくさと街に戻って行った。


可憐で華奢な容姿とはアンバランスに飾られた狂気の数々は、俺の心を鷲掴みに今尚離さない。


それから俺は彼女の事を調べて行った


冒険者である事、弓を使うが学問に対する意欲も高い事、夜は酒場でよく呑んでいる事。


そして、両親含め彼女と縁のある多くの者が死に至っている事。その噂から周りにパーティを組む事を懸念され、ソロとして活動しなければならない状態だった。


時たま、駆け出しのパーティが近くの森を熟知しているメイエリオをゲストとして誘い、共に狩りに出ている。


だが、あれはゲストと言うより、完全に解体や荷物運び専門の汚れ仕事だ。奴等は彼女の純粋さに漬け込み利用してるだけだ。きっとそうに違いない。



俺がなんとかしてあげなければ

そう決意するのに時間は必要無かった


そこからの行動は早かったと思う

俺は道場を辞め冒険者となった

拳王の説明全部省いちゃいました

また次の機会に

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