えぴそど31 裸の王様
康「メイエリオ…このまっ黒いのは…?」
メ「ん?見たまんま卵焼きだよ?」
康「いや、これ…」
ユ「うまい!うまいよメイエリオ!ごほぉっ!ごほっ!」
「馬鹿な!確かに今斬ったはずだぞ!」
「魔法障壁か!?」
「いや!ずっと見ていたが詠唱はしていない!」
「見ろ!服は切れてるんだ!攻撃は届いている!」
「なんでもいい!とにかく矢を放て!」
「股間だ!股間を狙え!」
なんてこった
こういう事だったのか
俺達は今、盗賊の襲撃を受けている。
ブロスの森に入った辺りからどうやら目を付けられていた様だ。
先頭だった俺は木の上から急に落ちてきた男にいきなり斬られた。攻撃は弾いたものの、その拍子に俺は馬から落ち、その馬もどこかへ走って行ってしまった。
レベルも一番高い奴が23と、そこそこある連中だったし、人数も7人とこちらより多い。
メイエリオとユージリンには若干荷が重いので、フルブライトさんに後退しつつ2人を護ってくれとお願いしておいた。
強肉弱食を知らないユージリンは、頻りに『俺も残る!』と意気込んでいたが、メイエリオが遠くを見る目で、『大丈夫よ。』と肩に手を当てていた。
それはそれでなんだか寂しいぞメイたん。
フォローする様に俺は『ユージリン!メイエリオを頼む!』と言っておいた。これで奴は下がるしか無い。
7人。
その数から最初にゴブリンに襲われた事を思出す。
攻撃はもちろん強肉弱食に当たり弾けている。
身体には傷一つ付いていない。後は鎌を使うか短槍を使うか。いや、そんな事は正直どうでもいい。
問題は────
服が破れている事!!!!
あれか!?
なんとか平原で裸スタートだったのはこう言う事だったのか!!!
寝てる間に魔物の攻撃があったんだな!
そういや周りに布切れがたくさん落ちてたわ!
強肉弱食の光の膜は確かに服の上に現れとる!
攻撃はそこで弾かれているはずなのに、服や装備にはダメージが通ってるんですけど!!!
考えている間も矢がどんどん放たれている。
もちろん全部、強肉弱食さんのフンフンディフェ…全方位ガードでなんともない。
俺は棒立ちのまま絶望に苛まれていた
そもそも、なんちゅー雑な当たり判定だよ…
光の膜は服の上に出てきてるじゃないか…
戦闘が始まってまだ数分というところだろうか、既に半裸状態だ。
股間なんか真っ先に
『こんにちわ!よ!元気!?』
って言ってきたくらいだし、攻撃を受け弾いた所だけ装備が壊れていく。
待て待て待て、これさぁ、これから自分の国を創っていこうとしてるわけじゃん?襲撃を受ける度、裸体を晒していく事になるじゃん。それってもうさ………
「裸の王様じゃねーかよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
俺は怒りと共に短槍を握り、盗賊達に突っ込む。
これでもまだ、人を殺めたことは無い。
いつかはヤる日が来るのであれば、このイベントで乗り越えるのも一つかと思ったが、什造の言った『皆殺し』が気になって気が進まない。
人の死に慣れてしまう事は良くないと思います!
「くっ!散れ!引くんだ!」
練度がいくら低かろうとも、攻撃を弾き下半身丸出しのまま、まっすぐ突っ込んで来るのだ。
そら怖かろう
盗賊達は恐怖に慄き、弓を捨て散り散りに逃げ出している。俺は、指揮をしていたレベルの一番高いリーダーにだけターゲットを絞り、後ろから短槍の柄で思い切り殴った。
『ぐはぁ!』と唸り倒れ込むのを確認すると、逃げていった盗賊達の方を見る。バラバラに散っているかのように思えたが、どうやら同じ方向に進んでいる様だ。
「フルブライトさぁぁぁぁぁぁん!終わりましたぁぁぁぁぁ!」
俺は後退したフルブライトさん達を呼び寄せる。
その間も盗賊のリーダーの腕を後ろに捻り、逃げられないようにしていた。玉が盗賊の鉄の装備に当たりひんやりしている。
「コースケ!!大丈夫だっ……たか?」
うん、ユージリン。
大丈夫だ。大丈夫だからそんな可哀想なものを見る目をしないでくれ。
メイエリオを見てみろ。
感情が『無』だろ。
みんな早く慣れていってくれ。
「あぁ、俺は大丈夫だ!ありがとうユージリン。フルブライトさん、他の者は逃してしまいました。すみません。」
「いえ、謝る必要はありません。しかし、困りましたね。連れてブーメルムに帰るのも難ですし、ワイルドオークの討伐の日程もあります。かといって人を襲う賊を見逃す訳にはいきませんね。」
「とりあえず、そいつは殺しちゃえばいいんじゃないかな。」
メイたん!!なにこの子!さらっと怖い事言ってんだけど!そんな風に育てた覚えはありませんよ!
「ちょ、ちょっと待ちましょう。フルブライトさんが言う通り、こういった連中を野放しは良く無いと思います。こいつはリーダーぽかったですし、まずはアジトを吐かせてみましょう。」
盗賊のリーダーの手足を縄で縛り、尋問する。
ここはやはり軍人のフルブライトさんの手腕が光るかと淡い期待を寄せていた。
「ちっ!どのみち盗賊は死刑だ!俺は何も喋らねーぞ!」
「良いですよ、別に。じゃぁこうしましょう。5回だけ聞きます。それまでに教えてください。」
そう言うとフルブライトさんは杖を剣に持ち替え、そのまま盗賊の足の甲に思い切り刺した。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「貴方達のねぐらはどこですか?」
「あうぅぅぅ……」
フルブライトさんは無表情のまま剣を抜き、今度は左の足の甲に刺す。再び響き渡る悲鳴。フルブライトさんは同じ質問を重ねる。
手腕どころか完全に力技だった
直視できない。死生観の違いだろうか。メイエリオもユージリンもなんともなさそうに見ている。
3回、4回と同じ足の甲を刺し、フルブライトさんは質問を続けた。
「次が最後です。この質問に答えなかった場合、四肢の先より5cmづつ、貴方が絶命するまで徐々に刺していきいます。ではいきますよ。」
「か、か、勘弁してくれ!!もうやめてくれ!話す!話す!!もう刺さないでくれ!」
こうして急遽
盗賊討伐クエストが追加された
逸道:郭東の葛藤2
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死神:什造 じゅうぞう
貧乏神:丞之座 すけのざ
疫病神:郭東 かくとう
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高龗神様は
悪そうな神はだいたい友達的な方で
正直関わりたくはない
その高龗神様が
新しい遊戯を思いついたらしく
やってみないかと誘われた
条件はもう一柱用意してくる事
ただそれだけ
なんと
クリアできたら豪華な商品を
付けてくれると言っている
それは神器『黄鉞』である
大陸の神との抗争で
ボコボコにした挙げ句
巻き上げたらい
あの高龗神様が
正直にくれるとは考えにくいが
もし本当なら喉から手が出るほど欲しい
試してみる価値はある
俺は
神学校時代の同級生で親友の
丞之座に声をかける事にした
果てしなく長い
戦いの幕開けだとも知らず…




