えぴそど29 鬼軍曹
康「社畜にも人権を!拒否権を!」
メ「どうしたのコースケ?」
康「なんでもない!!」
「では早速向かいましょう。ワイルドオークが出たブロスの森は、ここより南東に途中野営を挟み2日の位置です。馬を外に用意してあります。」
おい!まだこの世界で一回しかベッドで寝てないぞ!寝床に関して社畜時代と大差無いんだが!
俺はブツブツ文句を言いながらギルドの一階に降りると、青髪が居た。そうタルガージだ。
「今日はちゃんと服を着てるんだな。」
また煽りに来たのかとムッとした表情で出方を伺う。タルガージは袋を差し出してきた。
「まさかジャクシンさんの客人だったとはな。昨日は悪かった。これは詫びだ。」
まさかの謝罪が来た。
だがこのパターンは既視感が半端無いぞ!
「ははっ警戒すんなよ。昨日みたいな事はしないさ。ワイルドオークを狩りにブロスへ行かされるんだろ?これは貴重種のピリオの実だ。あの森は麻痺を使う魔物が多い、すぐ治せるこれがあった方がいい。」
メイエリオの方を見ると無言で頷いている。
「分かったよタルガージ。こちらこそすまなかった。腕は大丈夫か?」
「あぁ、あれくらい魔法ですぐ治るさ。」
袋を受け取ると、タルガージ達は酒場に戻って行った。奴ら昼間から酒ばっかり呑んでないか?
いや別に羨ましいとか…そういうんじゃ…
外へ出ると、兵士が馬を用意してくれていた。
馬に乗った事が無かった俺は、簡単なレクチャーを受け、初めての乗馬を経験する。
フルブライトさんが言うには、途中で馬を変える場所が無いので、走らせず歩かせながら練習すればいいとの事。
馬に乗り街を出る。
門兵はフルブライトさんを見るとすんごいビシッとなって敬礼していた。やっぱりこの人偉い人なのか。
道中、特にやる事も無いのでメイエリオやユージリンの職なんかについて詳しく聞いていた。
「なぁ、2人はどういう関…じゃなくて、どういう適正や役割なんだ?」
「ああ。俺から言おう。メインはさっきも言ったグラディエーターだ。剣闘士そのものが統合職だから二次職は特に無い。役割はアタッカー、職能は上級の剣技と中級の格闘技と盾技、それと初級探知魔法だな。他にも冒険者として必要な物はいくつか持ってるぞ。」
「基本はゴリゴリ前衛って事だな。メイエリオは?」
「私はアーチャー。二次職はまだ書ける程の物は無いよ。職能には弓術と魔物学が中級、薬学とサバイバル学を初級で書いてるかな。4つとも中級を取れたらレンジャーって名乗れるから勉強中。役割はシューターね。」
「メイエリオらしくて素敵だよ。ちなみにフルブライトさんはどんな感じなんですか?」
「私はあまり詳しくは話せない決まりになっておりますが、魔法は上級で攻撃も回復も使えます。後は剣技と言ったところでしょうか。」
「じゃぁこの4人ならバランスが取れてるんですかね?」
「私は今回あくまでサポートですので、基本は御三方で成し遂げられる事を期待しておりますよ。」
そう考えると皆しっかりと勉強したり鍛錬したりしているんだな。俺はいきなり凄いスキルを与えられそのお陰で生きている様なものだ。
だからこそ、この槍を使って戦えるようになっていきたい。な!相棒!
俺は短槍を掴み空に掲げた
「コースケ様、よろしければ基本的な槍の扱いをお教え致しましょうか?」
「え?いけるんですか!?ぜひぜひ教えて欲しいです!」
「かしこまりました。短槍となりますと、本来槍術と言うより棍棒等の棒術に近い所があります。片手槍として扱うのであればこう構えてみて下さい。」
フルブライトさんは自前の杖を持ってレクチャーしてくれた。その後も幾つか型を馬上で教えてもらう。
メイエリオが微笑ましくこちらを見ているので、俺もそれなりに真剣な顔で挑む。
「後は、組手や実戦を積むほうが良いでしょう。ちょうどほら、あそこにパークコボルトが居ます。コースケ様行っちゃいましょう。」
「へ!?」
この先生、スパルタが過ぎる。
確かに街道より少し逸れた所に狼男の様な魔物が2匹いるのが分かる。レベルは8と11だ。
メイエリオは『がんばれー』と言っているし、ユージリンに至って『やっとコースケの戦闘が見られる』と興味津津だ。
「俺一人で行くんですか!?」
「大丈夫ですよ。いざとなったら助けますし、それにパークコボルトは駆け出しの冒険者でもそれなりに倒せる相手です。いい練習台になりますよ。」
そこまで言われてビビっている場合じゃない。
俺は馬を降り、手綱をユージリンに渡すと槍を持ってパークコボルトに近づいて行った。
自分で立てた目標として、なるべく強肉弱食に頼らず自力で倒していきたい。フルブライトさんに教わった基本の構えを取る。
パークコボルトがこちらに気付く。
俺は多少緊張していたが、あの熊達と対峙した事を思うと自然と頭はスッキリしていた。
2匹共一直線にこちらに向かい走り出して来る
如何に武術や戦闘の経験が無いからと言って、こちとら男の子だ。学生時代に喧嘩の経験もあるし、鬼ごっこだってそれなりに上手かった。
俺は敢えて向かってくるパークコボルトに対し距離を詰める事にした。そのまま右側のパークコボルトに狙いを定め槍を突く。そのまま前転し今度は左側の…あれ!?
手に槍が無い!
見るとパークコボルトの脇腹に槍は刺さっているものの、手から離してしまっている。
『カキィィィィィ』
【経験値50を獲得しました】
くっそ!
もう一匹のパークコボルトの爪を受けてしまった。
早くも目標達成成らず。それより問題は槍が刺さったパークコボルトもまだ生きている事。
手前のパークコボルトの攻撃を躱し、奥に居る槍が刺さった方に向かい走る。死んではいないが痛がっており、蹲っている。
槍に手を掛けると、パークコボルトは爪で薙ぎ払おうとしてくる。お構い無しに思いっきり引き抜くと、血が吹き出した。そのまま今度は首元に向け穂先を振り止めを刺す。
【経験値35を獲得しました】
可哀想だが、仕方無い。
これがこの世界の日常だ。
早く慣れていかなければいけない。
振り返るともう一匹のパークコボルトがすぐ近くまで来ていた。教えて貰った右前半身構えを取り、タイミングを見計らうと、俺はパークコボルトの喉元に槍を突き刺した。
そのまま引き抜くと同時に今度は胸に一刺し入れる。
【経験値35を獲得しました】
終わった。
初めて〈かま〉以外で魔物と戦って勝てた。
振り向くとメイエリオとフルブライトさんは嬉しそうに拍手をしてくれている。ユージリンもにこやかにこちらを見ている。
俺は謎の達成感に意気揚々としていた
逸道:丞之座の憂鬱2
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死神:什造 じゅうぞう
貧乏神:丞之座 すけのざ
疫病神:郭東 かくとう
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郭東の地元の先輩でもある
高龗神様が
新しい遊戯を思いついたらしく
その遊戯をやってみないかと
誘われている様だ
なんと
クリアできたら豪華な商品を
付けてくれるとの事
それは神器『黄鉞』である
大陸の神からプレゼントして貰ったらしく
神界大辞典でのレア度は星4つ
喉から手が出るほど欲しい
郭東は一緒に参加する神を探しており
真っ先に俺に声をかけてくれた
ほんとにいい奴だ
悪い噂しか聞かない高龗神様だけど
このチャンスは逃せない
俺は二つ返事で参加を決意した
果てしなく長い
戦いの幕開けだとも知らず…
 




