えぴそど28 カマ切り戦士
「なげぇーよ!一週間って!内容忘れちゃうよ!」
「どうしたコースケ。いきなり叫んで。」
「何でもない!話続けてジャクシンさん!!」
俺とメイエリオ、ユージリンはギルド長であるジャクシンさんに魔物の討伐を言い渡されたとこだ。
まだ冒険者にすらなっていないのに、強制討伐クエスト。この世界に来て四日目のスピード感にまだ慣れていない。
「あの、俺はまだ冒険者になるって訳じゃ…」
「あぁ、心配するな。既に登録は済ませたから問題ない。フルブライト、あれを渡せ。」
話が通じてそうで通じていないジャクシンさんは、モヤモヤ状態の俺を余所に、話を進めていく。
「コースケ様、こちらがギルドカードになります。登録情報については、ジャクシン様直々の代筆という珍しいものですよ。」
「フルブライト、余計な事は言わんでいい。コースケ、それは身分証にもなる。冒険者として生きるかどうかは別として、有るに越した事は無い筈だ。」
それを聞いて少し泣きそうになった。
この人は散々人を馬鹿にし玩具にするが、肝心なとこはしっかり見てくれており、手を差し伸べてくれる。
「良かったねコースケ!これで依頼も受けられるし、魔物の素材を売る時、高くしてもらえるよ!あ、でもジャクシン様、コースケはお金を持って無いですけど登録料10万ゴルは借金ですか?」
メイエリオの言葉の一瞬ビクッとした。
高くね!?この世界と日本の通貨価値はほぼ一緒だ。要するに10万円。
金が無くて冒険者するって言うのも叶わないのかこの世界は。
そして嫌な予感はする。
登録料が勝手に借金になっており、返済の為に強制討伐に行けとかそういう話なんではなかろうか。
「免除では無い。かと言ってコースケの借金でも無い。あぁ、そういう手もあったんだな…まぁともかくそちらはギルドで既に支払済みだ。今回の依頼ともそれは関係無い。心配するな。」
「ありがとうございます!ほんと何から何まで…大切にします!」
「礼は要らん。貴様が倒したスケアリーベアーの素材は大変高く売れた。エブリンへの金塊引き渡し料と合わせても200万ゴル以上の収益だ。いやぁコースケには感謝しているよ。」
やっぱりこいつ嫌いだ!
俺はとりあえず渡されたカードを見てみる事にした。
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アスタリア国認可ギルド所属証明書
氏名:コースケ
年齢:28
拠点:ブーメルム(牢)
ギルドランク:G
依頼達成数:0
功績評価:0
一次職:カマ切り戦士
二次職:乞食・裸族・露出狂
役割:タンク
職能:初級ソードスキル・初級ガードスキル・最高位雑魚寝スキル
特約:アスタリア国陸軍少将テオ・ジャクシン特別公認許可証
特記:記載内容の変更には軍部の審査が必要
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うん。何というかアレだね。
書いてある内容にツッコミを入れたら負けかなって思ってる。ジャクシンさんのニヤニヤ顔が視界の端に入ってるし、ここはスルーが正解だ。
「どうだ?ふふっ、気に入ったか?」
「ええ、この一次職って言うのは?それにソードスキルなんかも。」
え?そっち?とやや哀しそうな顔になるジャクシンさん。勝った。何となく対応の仕方が分かったぞ。
「コースケ様。職と言うのはいわゆる剣士であったり魔法使い等の大まかなスタイルです。一次職は現在のメイン職。二次職は今まで経験のある職ですね。新しい武具使いや流派に対応する為、基本は自由に書けます。」
「ソードスキルとガードスキルは、戦士として成立つ最低限のスキルだ。貴様はまだ取得していないだろうが、それより強力なものが使えるし問題無い。逆に正直に書くわけにはいかんからな、敢えてそうしておいた。」
「はぁ…じゃぁ『カマ切り』無くて良くないですか?普通の戦士とかで。」
俺の疑問が増えたところにユージリンが口を挟んで来やがった。
「箔だよコースケ。ただの『戦士』なんて書く奴はいないさ。Cランク以上になると、指名を受けられるんだ。その時に目を惹くものにするのが冒険者の慣しだよ。ちなみに俺は剣闘士『グラディエイター』だ!」
「そ、そうか…解説サンキュ。じゃぁなんでカマがカタカナなんです?」
どうせなら『鎌切戦士』いや『鎌斬戦士』とかならビシッと決まりそうな物を。それに鎌はスキルであって俺はこれから槍を使おうとしているのに。
そもそも、箔とか言うんであれば『乞食』とか『露出狂』なんか絶対マイナスだろ。この人達本当に大丈夫か?
「簡単だ。カマと言う武器を調べたが無かった。お前のスキルにあるものは全く新しい物となる。お前が今後呼ばれて行くであろう『カマ切り』という二つ名を贈ったんだ。これでも私はお前に期待をしているんだよ。」
「はぁ…分かりました…何はともあれ有り難く頂きます。」
こうして俺は社畜会社員から
『カマ切り戦士』へと転職した
「それで討伐と言うのは…」
「うむ、倒して貰いたいのはワイルドオークだ。なに、大した事は無い。お前達ならまず問題無いだろう。それにフルブライトを同行させる。ギルド所属ではないが、もし入ればランクはAだ。万が一にも対応できる。」
「ジャクシン様。お言葉ですが、ワイルドオークの討伐レベルはBです。いくら軍の方が同行されるとは言え、コースケやメイエリオには危険なのでは無いでしょうか。」
おぉ、ユージリン君。
サラッとマウントを取って来やがったな。だが確かにメイエリオを同行させる趣旨が分からん。
「あくまでワイルドオークと戦うのはコースケだけだ。だが、此奴のスキルには回数制限がある、ユージリンとメイエリオには道中のサポートをしてやって欲しい。先の依頼で顔見知りを失い、辛い思いもしているだろう。リハビリだと思えば良い。こんな事で若い芽を潰したく無いのでな。」
ぷークスクス。
残念。メインは俺でし…え!?俺ぇぇ!?
なんで俺一人で戦わなきゃならんのだ!
まぁそれでもやはりジャクシンさんだ。
なんやかんや言いながら良い所が多い。俺のスキルの回数まで考えてくれているし、これは受けても損は無い。
「分かりました。お受け致します。」
「最初から拒否権は無いと言ってるだろうが。」
くっそ!!!
逸道:丞之座の憂鬱1
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死神:什造 じゅうぞう
貧乏神:丞之座 すけのざ
疫病神:郭東 かくとう
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俺の名は丞之座
貧乏神の一族だ
貧乏神族ではまだまだ若く
神とは名ばかりの底辺で在る
持っている神器は
ランクの低い中古品ばかりで
不満しか無い
正直この神器だと
ポテンシャルの2割程度の存在でしかない
ジオ○グで言うと本体では無く
脚の方になってしまう
なんとしても
もっとレア度の高い神器が欲しい
これではヤル気も出ないし
福の神に成るなんて夢のまた夢だ
かと言って
真面目にこつこつ働くなんて性に合わない
ある日
神学校時代の同級生で親友の郭東が
面白い話を持ってきた




