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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
今日から勇者!
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えぴそど27-勇6 泰然の芽

スキル〈身体強化(鬼)〉


カクトの額からは角が生え、時折身体の周りを紅い稲光がバチッバチッと弾けている。


地面を蹴り空中に大きく跳び出すと、カクトは飛んでいたワイバーンの方向に右手を向けた。


スキル〈(まがつ)


カクトの頭上に巨大な黄金の魔法陣が現れ、無数の巨大な光の矢が、ワイバーンに向かい次々と襲いかかる。矢と言えど、その大きさは悠に10メートルは超えていた。


ワイバーンは為す術もなく、一瞬で蒸発したかの如く、僅かな肉片を残し渓谷へと落ちていく。


その光景を目の当たりにしたアズ達は、開いた口が塞がらなかった。圧倒的すぎる。いや次元が違いすぎる。これが勇者────


突然の轟音と光に、遠くに居たワイバーンにも気付かれ一斉に襲って来た。その数は20匹以上。


自然落下するカクトだったが、左手で空中をなぞると、先程とは違う紫色の魔法陣が展開され体制を整えながら、空中で何かを蹴り出し、また大きく飛翔した。


スキル〈(くるわ)


直線的に破壊する〈禍〉と違い、平面的に光を放ち、広範囲を一斉攻撃できる技だった。側面は鉄の様な強度を持つ為、一時的だが盾の様に利用する事もできる。


ただし、範囲を広げれば威力や強度は低くなり、継続時間も短くなる。カクトは足場程度に縮小し、それを使い空中戦を可能にしていた。


ワイバーンが大きく口を開け、カクトに向け次々と火球を放つ。跳び上がった所を狙われ、その全弾がカクトに当たる。周辺は豪炎と雲煙に包まれた。


雲煙から跳び出したカクトの手には、光の剣が握られていた。形状からそれはこの世界のものでは無く、刀に近い形だった。


スキル〈(いびつ)


高熱量を一箇所に留め、使用者の武器を作り出すスキル。歴代勇者が使用していたスキルと唯一同じ物であり、他のスキルは今までに無かったものであった。


その形状は本人の意図したものでは無く、神による選択だとされていた。用途により大きさを変える事は可能だが、一度での使用回数が限られている。


カクトは空中を次々に蹴り出し、ワイバーンを圧倒していく。一匹のワイバーンが、カクトに向かい突貫を試み高速で迫るも、直ぐ様〈廓〉を使いその首を切り落とした。


その時、一際大きな青いワイバーンが現れた。最早その見た目はドラゴンと遜色無い。


「アイスワイバーンだ!カクト!そいつのブレスは絶対に避けろ!一瞬で凍って死ぬぞ!」


アイスワイバーンはカクトに目掛け無数の氷柱を放つ。その速さに、避ける間も〈廓〉を発動させる間も無く、何本かは刺さってしまった。鈍い痛みがカクトを襲う。


「ちっ!蜥蜴野郎が!ぶっ殺してやる!」


足場を巧みに使うも、その巨体に似合わず素早く飛び回るアイスワイバーンに追いつけない。手で軌道をなぞり足場の生成にまでに、どうしてもタイムラグが生じているのだ。


カクトは距離を詰める為、水平方向に跳ぶがそれが裏目に出る。カクトが跳ぶ前にはアイスワイバーンが(きびす)を返しこちらに真っ直ぐ突っ込んで来ていた。


ギリギリの所で体を捩り(よじり)、〈歪〉でアイスワイバーンの爪を弾く。すれ違い様に尾が当たり、カクトの頭部より血が吹き出した。


また、ここで〈身体強化(鬼)〉の効果が切れてしまう。およそ10分。次に使用できるまで時間が掛かる。


カクトは傷に構わず、直ぐに追いつこうと最短距離を進むが、あと少しという所でまた氷柱を放ってくる。


(すんで)の所で〈廓〉を盾の様に展開し耐えるも、元々範囲殲滅用の為、厚さが足りない。


氷の攻撃に対し、こちらは熱線。属性相性により幾らかは軽減されたが、やはり突き抜けてカクトに刺さってしまう。


カクトは一瞬だが痛みに蹲って(うずくまって)しまった。

その時、アズの叫び声が響く。


「カクトー!!ブレスだ!!!」


直ぐアイスワイバーンを見ると、口を大きく開けており、その中心に光が収束しているのが分かる。


ブレスを吐こうとしていたのだ。

カクトは咄嗟に左手を伸ばし、開いていた手の平を握り込む。


アイスワイバーンはブレスを吐く。正確には吐こうとしたが何も出てこなかった。


そしてアイスワイバーンは、ブレスの攻撃対象だった人間が、すぐ目の前に居る事に驚きを隠せなかった。


「終わりだ。蜥蜴野郎。」


カクトの手に握られた光の刀は突然巨大になり、アイスワイバーンを一刀両断にした。


スキル〈(うつろ)


単一対象の発動前のスキルを全て無効化する事が可能。


スキルの威力だけでは無く、レベル自体が高い事もあり、気付けば空を翔けるのはカクトだけになっていた。


空中の足場を使い、アズ達の元へ戻ってきたカクトだが、その表情は晴れない。


自分には戦いの経験が少なすぎる。知識も無い。今の様に攻撃がまともに当たれば傷を負う。血が流れるなら死んでしまう事だってある。


今後、邪魔になるであろう拳王と呼ばれる者は、武術を基礎から学んでいると聞いた。


このままではいけない


「す、凄いな。やっぱり貴方は勇者様だ。」


「かかか…カクト様!素敵すぎ…です!!!直ぐに…回復魔法を…!」


「もしジュナであんなの使われてたら、俺達何も残らないでしょこれ。」


「討伐ランクAのアイスワイバーンを一人で倒すとか〜前代未聞過ぎでしょ〜傷は大丈夫〜?」


足りない。圧倒的にまだ弱い。

何者にも屈せず、何者にも邪魔をされ無い為には、もっと強くなる必要がある。


「アズ、今の戦いを見てどう思った。」


「ん?さっきも言ったが、さすが勇────」


「そんな事を聞いているんじゃない!!戦い方はどう見えたんだ!!」


「………」


「相手が次にどう動くか全く予測してなさすぎでしょうよ。」


「おい!サブダブ!」


「黙れアズ!構わん!」


「空中だし分かりにくいけど〜要は足場の悪い場所での戦い方としては〜確かに無防備に跳び過ぎっすねぇ〜それにスキルのタイミングも〜」


「相手が魔物だから良かったってだけでしょうよ。拳王相手に今の戦い方は非常にまずいでしょ。」


「……カクト…2人が言う通りだ。基礎や経験が無いカクトの戦い方は魔物や獣と変わらない。だが、昨日目覚めたばかりの力だ、そんなに気にするな。」


カクトは、あの異質な神が言っていた『お前次第でまだまだ強く出来る』を思い返していた。


「アズ、サブダブ、ジョリーアン、それにコルピナ。俺に戦い方を教えてくれ……頼む。」



今まで誰も助けてくれなかった

それでも縋る(すがる)以外ない

カクトは4人に頭を下げた

ここで勇者編はいったんお休みです

次回より康介達の話に戻ります

次話投稿 9/15 6:00予定

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