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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
今日から勇者!
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えぴそど26-勇5 矜持の芽

ギャロー渓谷前のキャンプでは、宿や商店等も多少ありそれなりに人も居る。帝国領中央部に進む為の近道になるからだ。


生憎と宿は一杯で野営をするしか無かった。


ジョリーアンは勇者だと言えばすぐ部屋は空くと言っていたが、国境沿いの非戦闘地域であり、アスタリアの者も居る。ここでは言うべきで無いとうアズの言葉に皆従う。


アズとサブダブはテントを借りに商店に歩いて行った。


その様子を目で追った後、カクトは〈(かんなぎ)の眼〉で周りの人を確認すると、商人や冒険者等、確かにアスタリア領の魔人が混じっている。


その時、不意にカクトは殺人衝動に駆られてしまう。


カクトからすれば、やっと殺してもいい獲物が目の前に出てきたのだ。衝動的に立ち上がり、スキルを使う為右腕を伸ばすが、コルピナに腕を掴まれた。


「な…なりません!カクト様!…非戦闘地域での魔族の殺害は…大戦の引き金に…繋がりかねます!まだ…時期尚早です…何卒…今はご容赦を!あの様な小者では…カクト様の気も…きっと晴れません!」


無言のまま止まるカクト。口元は緩み笑っている様にも見えた。(よだれ)が垂れ始めており、まるで獣だ。


カクトがコルピナを睥睨(へいげい)すると、涙目のコルピナは一度手を離し、カクトを背より抱き込む。


「大丈夫です…カクト様…必ずパーフラ教が…賢者を見つけ…大舞台を用意し…直にたくさんの魔族を殺せます…そうして…カクト様は世界を救うのです…それまで今しばらく…ご辛抱を…」


ふと我に返るカクト。

途中から意識が無かった。額には角も出ており、身体強化も知らず知らずの間に発動している。


胸の中に燻る憎悪の種が、いつ芽吹いてもおかしくない状態である事に、カクトはどこか安堵した。


一方、コルピナが言う時期尚早とは、まだこの世界に新しい『賢者』が生まれていないのだ。


賢者と一緒で無ければ魔王は倒せない。先の勇者が2人、それを証明してしまった。


「女……コルピナ。離せ。何もしない。」


「!?は、はい!」


コルピナは初めて名を呼ばれた事により天にも昇る気持ちだった。


カクトにとっては、大戦になろうが何なんだろうが一緒だった。だが、賢者の話も聞いている手前、話を聞き入れるしか無かった。


「俺の気が晴れないとか言ってたな。お前に俺の何がわかる。」


「す…すみません…」


「ちっ!早く元に戻れ!」


「は、はい!」


料理を作っていたジョリーアンは、そのやり取りを見ながら、『この勇者やばくない〜?』と先行きを案じていた。


「テントを借りてきたぞ。お?なんで泣いてんだコルピナ。またカクトに肘をくらったて喜んでるのか?」


「おやっさん…私を変態扱い…しないでください…」


『え!?違うのか!?』とカクト以外の3人は驚く。何せコルピナは今、四つん這いでカクトの人間椅子をしていた。


もちろんカクトが望んだ訳では無い。勇者を地面に座らせるなど言語道断だと、コルピナが強く懇願したのだ。渋々、テントと椅子を借りてくるまでの間という約束で、付き合っているだけだった。


アズとサブタブはテントを設置し、借りてきた椅子にカクトを座らせる。


火を囲い食事を摂り、時折起こる笑い。

無表情のまま淡々と食事を摂るカクトに、ジョリーアンは何度か冗談をぶつけるも、相手にされなかった。


話の中には、4人なぜあの森に居たのかという事も話された。


4人は元々、キジュハ王朝跡の更に南方にある、カジャ遺跡のダンジョンに行く予定だった。


そこは最大難易度を誇るダンジョンになり、冒険者Aクラスの中でも上位パーティである彼らは、腕試しとレアアイテムを求めていた。


盗賊討伐を受けたのは本当にたまたまだったが、そのおかげで、レアアイテムなんかよりもっと凄い勇者と出会えたと、アズは笑っていた。


そうして夜は更け、テントで一夜を過ごし、翌朝。


「ギャロー渓谷は長い。カクト、日が暮れてもエアレーまでは休めないぞ。しっかり食べておけ。」


5人はギャロー渓谷に入って行った。


二つの国を隔てる大渓谷。

一説には、初代勇者と初代魔王の戦いにより出来た場所とも言われている。


所々には馬車が通れる程の吊り橋が架けられており、お互いの国を行き来する最短ルートとなっていた。橋を渡りギザの森を抜けると、魔族の大要塞国境都市ブーメルムと言う街がある。


300年前、四代目の勇者オリオン・スターライトは、ブーメルムで拳王と戦い命を落としている。勇者を殺した四代目拳王の名はトラ・ジャクシン。今尚、歴代最強と謳われる拳王だった。


帝国の大軍勢を率いたオリオンの前に一人で立ち向かい、最終的には両の腕を失うも、オリオンの首筋を噛み切り殺したと言われている。


そこからブーメルム一帯は、代々ジャクシンの一族が辺境伯として統治する。現当主のカカ・ジャクシンは、今代の拳王に格闘術を基礎から教授していたらしい。


その強固な護りは、今も帝国側がアスタリアへの魔族討伐に踏み切れない原因となっている。


「つまり、俺が最初にぶっ壊すのは、そのブーメルムとかいう街か。」


「おそらくそうなるでしょうよ。後は海を渡るか、強い魔物がうじゃうじゃいるルートばかりでしょうし。」


拳闘家のサブダブにとって、拳王の称号は、敵ながらも憧れを抱いてしまう魅力的なものだった。歴代拳王についての語りが始まってしまったが、カクトは橋の先を見つめ、聞いていなかった。


「アズ、あれはなんだ?」


「あれはワイバーンだな。ここには幾つか種類がいるが、俺達のパーティに空中戦が出来る奴がいない。狩ればそこそこいい素材も手に入るが、まぁ襲って来たら逃げるのが得策だな。」


「あれとヤっても問題にならないかコルピナ。」


「はぇ!?…え、はい…魔物に…襲われた場合の武力行使は…認められています…」


「カクト、やめておけ。万が一渓谷に落ちればいくらなんでも助からんぞ。」


「うるさい。お前らと違ってこっちは……」



言葉を途中で飲み込みカクトは空中に跳んだ

どうなのかな…

少しでもおもしろいと思ってもらえてるのかな…

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