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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
モナオ(仮)
256/258

えぴそど256 危険な夜

森の近くに築かれたキャンプ地に着くも、簡易的な塀で囲まれた中は、モナオの汚物汚染の所為で入れない。


どっちにしろ魔物がうろつく場所での野宿だ。


塀があろうが無かろうが、交互に見張りを立て、交代で休むのがセオリーだと思う。


とは言っても、そうなると実質的に、私とイノイチさんの二人が交代で見張る事になる。


幸いな事に魔物の匂いに敏感なトモが居る事と、未だ信用半分だが守備適正はある王冠花も居る。


明日の為にも、無理やり休んで明日に備えるしかない。


テント設営後に火を起こし、野菜を煮込んだだけの簡単なスープとパンで腹を満たすと、モナオとシュナは早々に寝てしまった。


いや、別にいいんだけど、秒速でいびきをかいたモナオにはイラっとした。


私だって朝から動いてて、結構疲れて眠いんですけど!!


「メイエリオ、一晩くらい寝なくても私は大丈夫だ。君も頃合いを見て休むといい。」


そんなイノイチさんの嬉しすぎる提案だったが、無理を言って付いて来てもらっているにも関わらず、申し訳ないと思い『交代でいこう』と慌ててブロックサインを送る。


「ふっ、そうか。なら、少し私の話に付き合ってくれ。」


腰から鞘ごと剣を抜き、焚き火の近くに腰を下ろしたイノイチさんは、火で沸かしたお茶をカップに入れ、私に差し出した。


私は差し出されたカップを受け取ると、イノイチさんの隣へと腰を下ろす。


焚き火が時折パキっと音を立てると、火の粉がほのかに舞い上がった。


「今回の件だが、もし私が断っていたらどうしていた?」


一息付いた様子を見計らい、イノイチさんは正面を向いたまま私に質問を投げかける。


私は少し首を傾げながら『今のメンバーで行く』とサインで返す。


「……花の見分け方も、危険性も知らずにか?」


『なんとかなる 突撃』


これは半分冗談だったが、私は半笑いの状態でサインを送る。


「ふっ、メイエリオ、君は強いな…昔からそうなのか?」


少し質問の意図が分からなかった。


昔からそうなのかと聞かれても、私は自分が強いと思った事は無いし、特に何も変わって無いと思う。


いや、変わったとすれば、コースケ達と出会った事が大きい。


自分でも気付かない内に、あの濃い日々で強いと思われる程になっていたのかもしれない。


『強い 教えてくれた 仲間 居る』


ブロックサインの中に適切なもの無い事が多いので、私は少しモヤモヤとしながらサインを送るも、イノイチさんは毎回見事に汲み取り答えてくれる。


「それは素敵な出会いがあったんだな……その仲間は今何をしてるんだ?」


そういや何してるんだろう。


別に手紙を送り合ってる訳でも無いし、もう半年以上会っていないけど、多分元気にはしてると思う。


『分からない グループ バラバラ みんな 強い 心配ない』


「班が…散り散り…消息不明か……喧嘩別れでもしたのか?」


『別々の目標 追いつめる』


「そうか、それぞれの目的に合わせ、別行動を取っていると。その間に連絡のやり取りはしていないんだな。」


そうそう!いや本当にすんごい汲み取ってくれる。


「その仲間とは、もう会わないのか?」


私は首を横に振り『一年 締切 集合 今 8ヶ月』とサインを作る。


すると、焚き火が照らすイノイチさんの口元が、少しだけ緩んだ気がしたが、見直してみると、いつものイケメンクールフェイスだった。


「そうか、あと4ヶ月程で会えるんだな。」


『問題発生 私 目的 達成ならず』


そう、私はまだレンジャーの試験に合格出来ていない。


ギルドでは二ヶ月に一度試験があるのだが、私はここまで2回挑戦し、二回とも落ちている。


「ちなみに、メイエリオの目的はなんだったんだ?」


『レンジャー』


「……なるほどな。今日の行軍中の立ち振舞から、君は既にレンジャーなのかと思ってしまっていたが、まだ見習い中だったか。」


私は嬉しいような悲しいような、カップを両手で包み、少しづつお茶をすすった。


「メイエリオ、正直君にはセンスを感じる。几帳面で繊細な感覚を持ちながら、決して臆病では無い。怖いもの知らずと言えば、レンジャーに向いて居るとは聞こえないかもしれないが、時には大胆な行動も必要だ。」


どうしよう、急に褒めちぎってきたんだけどこの人。


やだ、お茶じゃなくてお酒飲みたくなってきたし。


「だが、今はこんなトラブルに見舞われ、おまけに幼い子どもの面倒まで見ている。はっきり言って、これは君にとって不安要素な筈だ。違うか?」


正直痛い所を突かれた。


連れて行く事を了承したのは私自身だけど、シュナは自分で身の回りの事は一通り出来るからと、甘く見ていた所もあった。


そうは言っても、子供は子供だ。


元々捨てられていたシュナは、時々とんでもない事をしでかす。


人が見ている往来で、落ちている食べ物を拾いポケットに入れたり、何処で汚したのか、服が汚いままでも気にせず学校に行ったりと、衛生概念に難がある。


そのうえ、力の使い方に関しても、先に魔法で注意した様に、これからまだまだ課題が残りそうだ。


私はイノイチさんの言葉に、すぐに返す事が出来ず、改めてカップのお茶を呑んだ。


「……別にメイエリオやあの子が悪いと言っているわけじゃない。俺は……君の力になりたいと思ってる。」


その言葉に私が顔を横に向けると、イノイチさんは私の顎元を優しく掴み上げ、口づけを交わした。


「……君があと4ヶ月以内に試験に合格出来るよう、俺に手助けさせて欲しい。俺と一緒に住もう、メイエリオ。」



きたこれ

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