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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
モナオ(仮)
251/258

えぴそど251 七人目

「……分かった、いいだろう。」


期待しつつも、断られる事前提でお願いしたにも関わらず、思いがけないと言えば嘘になっちゃうけど、了承の言葉を貰う事が出来た。


『いいの? 本当に? いいの? 待ち人は?』


私は相変わらずブロックサインで真意を再度問う。


「…待ち人か…大丈夫だ、既に会う事は叶った。次の任務までには時間があるしな……それに、モンチロマッチョイを素人が見分けるなど不可能に近い。一緒に行ってやろう。」


私は内心『やった!』と喜び、嬉しさ全開でシュナにハイタッチをしようとしたが、シュナは何がなんだか分かっていない様子だった。


そこから、スケイザーから貰った地図をイノイチさんに見てもらい、路地裏でそのまま作戦会議に入る。


「この距離なら、魔物に遭わなければ3時間もあれば着くだろう。このまま行くのか?」


私が頷くと、イノイチさんは面を取り、シュナに向け手を差し出し『イの壱だ、よろしく』と挨拶をする。


もちろんモナオにも手を差し出したが、やはりというか、反応は無く、どこか遠くを見ているようだった。


私はその様子を見届けると、台詞の選択肢を確認する。



▶『行こう!ガルガン砦に!』

▷『行くぞ!ガルガン砦に!』

▷『いざ参ろう!ガルガン砦に!』



ツッコむ事より、頼もしい人が仲間になった事への嬉しさが勝り、私は自信満々に叫ぶ。


「いざ参ろう!ガルガン砦に!!!!」


しばしの沈黙の後、シュナの『お…おー』とモナオの『よし!行こう!』が木霊した。





【遡る事三時間前 商業都市ヤー内のとある宿屋】


宿で目覚めたイの壱は、解かれた長い髪を紐で結ぶと、椅子に腰を下ろし、刀の手入れを始める。


途中、時計に目を配ると、時刻は午前7時を過ぎた所だった。


ヤーに訪れる前のイの壱は、王国北西部にある、ゴーロン近くに築かれた拠点防衛指揮官として、警戒任務に当たっていた。


既に何度も王国内拠点の襲撃を許してしまっており、その都度壊滅的な被害を出していた事から、分散していた勢力をゴーロンに結集し、襲撃時に迎え撃つ姿勢を組織は作っていた。


桃犬からの伝令役として、たまたま王国内に潜入していたイの壱であったが、組織の実質的な支配者であり、自身の生みの親でもある紅梟に命じられ、そのままゴーロンに留まり、任務をこなしていた。


にも関わらず三日前、敵対勢力の強襲に遭うと、相手は報告以上の戦闘能力を有し、更に味方戦力の分断工作にまんまと嵌ってしまい、防衛遂行に陰りが見える。


そんな中、紅梟の指示により、防衛指揮権を別の者へと譲渡し、自身は紅梟に付き従うと、共に拠点を放棄し撤退した。


撤退途中、イの壱に命じられた新たな任務は、生き残りの保護と、保護した人員を次の拠点へ誘導する事だった。


手入れが終わり、イの壱が刀を鞘に収め紐で縛ると、不意に部屋のドアがノックされる。


「……開いている、入れ。」


扉が開くと、そこには妖艶な出で立ちをした、長身の女と、自分より下位を示す面を付けた男達が立っていた。


イの壱はすぐさま椅子から離れ膝を折ると、そのまま頭を下げる。


「ダリア様、よくぞご無事で。心配しておりました。」


ダリアは部屋に入ると、手にした扇子を時より小さく振りながら、部屋の中を観察した。


「……そう、私は無事よ……それで…あなたは、何番なのかしら?」


「……イの壱でございます。」


「壱……イ種の主席…まあ戦力としては十分でしょ。」


ダリアはイの壱の横を通り過ぎ、椅子に腰をかける。


「もう、分かっていると思いますけど、私がここに居るという事は、前の私はきっとどこぞで死に果てているでしょう…そうですね、ざっと3人目位といった所かしら。」


「……今ここにおられるダリア様がノービスだとおっしゃられるのあれば、私が知りうる限り7人目かと。」


イの壱のその言葉に、ダリアは静かに足を上げ、そのまま眼前で跪くイの壱の肩に、ゆっくりと下ろした。


「……少なくとも7人、多いのやら少ないのやら。まあいいわ。邪眼は使えるようだし、早くクラバナと合流しましょ。」


「その事でございますが、ダリア様にご相談が。」


「…許すわ、言いなさい。」


「反逆者である緋猫、ハピオラ・スカーレットの仲間と思われる者と、偶然ではありますが、この街で接触出来ました。」


「…緋猫ね、本当にそんなに強いのかしら。手合わせしてみたものね……それで?その仲間が居るのなら殺したのでしょう?」


「いえ、襲撃に関与している者では無く、ブーメルム滞在時に懇意にしていた者と報告ではあり──」


その瞬間、イの壱の首元へダリアの足先が向けられる。


ダリアの履いているヒールからは、刃先が突き出しており、いつの間にか、手にした扇子で口元を隠す姿になっていた。


「あぁ?聞こえなかったなイ種の雑魚が。裏切り者の仲間を見つけたのに、まさかまさかまさかのま、殺して無いとでも言おうとしてんのか?あぁぁん?」


「……ダリア様、お聞き下さい。ゴーロンの拠点が既に壊滅している事は存じております。しかしながら、その後の緋猫の足取りは追えておりません。」


「だから何だよ?代わりに私がお前を殺せばいいのか?ああぁ?」


「私がその者と距離を詰め、緋猫の事を探ろうと考えております。」


イの壱がそこまで話し終わると、ダリアは足を首筋から外し、扇子を閉じた。


「……ま、あなた如きが居なくとも、何とでもなるわ。いいでしょ、クラバナには私から言っておきます。その代わりしくじる事は許しません。」


「はっ!有難う御座います。」


「それより、次の集合地の地図を出しなさい。」


立ち上がったダリアが手を差し出すと、イの壱は荷物から地図を取り出し、頭を下げたままダリアにそれを差し出す。


ダリアは地図を無愛想に受け取ると、そのまま言葉を発する事無く、面兵と共に部屋を出て行った。



部屋にはイの壱と

ダリアから発せられた強烈な薬品臭が残っていた

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