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泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる  作者: 青狗
今日から勇者!
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えぴそど25-勇4 節願の芽

「カ…カクト様!お気をつけ…ください!そちらに…毒蛇が!」


「あぁ、見えてる。」


「カ…カクト様!喉は…乾いて…おりませんか!?」


「いらん。」


「カ…カクト様!お召物が…汚れており…ます!コルピナが…拭きます!」


「…………。」


「カ…カクト様!これが…」


「女、少し黙れ。かなり鬱陶しいぞ。」


「ひっ、すすすみま…せん…。」


初めて人類が魔王に打ち勝ち、魔物が消えた世界を取り戻した最大の功労者、初代勇者であるパーフラを称え、後には後代の勇者と賢者を補助する事になる組織、パーフラ教団。


その熱心な教徒であるコルピナにとって、勇者の横を歩き、身の回りの世話を行える事はこの上無い至高の刻であった。


少年が求めるのであれば死ぬ事ですら厭わない。

勇者を神の化身とし崇める彼女達にとって、発せられる言葉の一つ一つが狂おしいほど愛しかった。


「許してやってくれカクト。このコルピナは、パーフラ教という歴代の勇者様にお仕えするべく生まれた組織の者なんだ。きっとカクトの役に立ちたくて仕方ないんだ。」


アズの言葉に、無言で首を何度も縦に振り肯定するコルピナ。少年は鬱陶しそうにコルピナを見る。


「じゃぁ服を脱げよ。今ここで犯してやる。」


「はい!…よ…喜んで!」


そう言うとローブを取りコルピナは服を脱ぎ始めた。


「ちっ!いらん!行くぞ。」


少年は気持ち悪いとさえ思い、コルピナを無視して先に歩き始めた。


ジュナ大森林を抜け、キジュハ王朝跡にまで戻ってくると、橋の上で立ち止まり、少年はアズに『馬代を除き今出せるだけの金を出せ』と言った。


硬貨が入った袋から中を取り出すと、橋の下に居る孤児達に向け、『金だ!』と叫び空に向かい放り投げる。


太陽に硬貨が反射し、星明かりの中に佇む(たたずむ)様なその美しい姿に、コルピナだけではなく、アズさえも見惚れてしまっていた。


孤児達は我先にと硬貨を拾い、中には殴り合いにまでになっている所もあった。少年は無表情のままその姿を見つめ、振り返るとその場を後にする。


少年はこの場にもう戻らないと決心していた。




馬を4頭買い、キジュハを出て暫く進むと、ジョリーアンとサブダブが意識を取り戻した。


「ゆ、ゆゆゆゆ勇者様ですって〜!?」


「普通に凄い事でしょうがそれこれ!」


アズに事情を聞いた2人は驚きを隠せない。

攻撃をした事を詫びながら跪くサブダブに対し、ジョリーアンは五体没地で泣きながら謝罪している。


カクトはまだ馬に乗れない為、コルピナの馬に乗り、コルピナと背中合わせに()()()かかっていた。


「うるさいな。もういい。それよりアズ、話の続きだ。」


「分かった。お前らも馬に乗れ、日が暮れる前にギャロー渓谷に少しでも近づくぞ。」


アズはカクトへ天舞について、歴代の勇者について、帝国とアスタリアについて等を説明していた。


時折コルピナが口を挟もうとすると、カクトは肘でコルピナの脇腹を強く突き、話を遮る。コルピナは『ぐふぅ!』と発しながらも恍惚の表情だ。


「角は生えていなかったんだな?」


「ああ、それにカクトが言う〈(うつろ)〉や〈(くるわ)〉の様なスキルを使ったとされる御方もおられなかった。」


「前の奴らと俺とでは神が違うのか?」


「いえ…それは…ぐふぅ!!」


「それは違うよ〜カクトが言った神様の特徴は〜歴代の勇者様や賢者様が言ってるのと全く一緒〜」


「螺旋の4つ目、長く太い4本の腕、短く細い一本の足、2本の紅角、これだけ揃えば同一神でしょうよ。」


「とにかく300年ぶりの天啓に神託だ。それに最後のお二人は、魔王討伐を成し遂げられず亡くなられている。新しいお力をお与えになられたと思えばいいんじゃないか?」


カクトには疑問があった。

皆の話を聞けば聞くほど、あの神がまるで、帝国領に住む人達を護っている様に聞こえる。


だが、奴は帝国すら好きにすれば良いと言った。

そして人の事を『駒』だと呼んでいる。果たしてそんな奴が、本当に人々を守護する神なのだろうか。


奴が放った言葉『アスタリアを滅ぼせ』


奴は一言も自分に対して『勇者』だとは呼ばなかった。国を救えだの人を救えだの何一つ言っていない。ただ、力を与えるから滅ぼせと言っただけだ。


何故だか腑に落ちないカクト

何かが違っている

だがその何かが分からない


アスタリアの魔族は、見た目も中身も帝国の人間と変わらない。ただ、3人の『魔王』と7人の『拳王』はいずれもアスタリア領から生まれていた。それ故に呪われた種族『魔族』と呼ばれている。


対して『勇者』と『賢者』は帝国領にしか生まれない。自分達が圧倒的正義と信じ、この世界を救うストーリーとなる。出来過ぎだ。おかしい。


貧民街で暮らす人は、自ら望んでそこに居る訳では無い。親を亡くし、捨てられ、行き場の無くなる者達の集合体だ。


金を持ち、通りを堂々と闊歩(かっぽ)する奴が正義と名乗れば、貧民街はたちまち悪とされる。何処かその構図と重なる部分があった。


「よし!ギャロー渓谷が見えて来たぞ。あそこにキャンプがある。今日はあそこで休もう。いいか?カクト。」


「あ?ああ…なんでもいい。」


カクトは一先ず(ひとまず)考えるのを止めた。神の前で誓った言葉。何者でもいい。崇めろと言うのであれば崇める。殺せと言うのなら殺す。滅ぼせと言うのなら滅ぼす。



だから力が欲しい

世界をぶっ壊す為の

次話を9/13 10:00に予約投稿しました

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