えぴそど247 花を求めて三里 α
ダンディズムが私の腕を掴み、チンピラ撲滅運動を引き止める中、モナオがスラスラと事情を説明し始めた。
「それで、助けてくれた彼女が手伝ってくれてるんだ。」
「そうか…盗られてしまったのは災難だったね。」
モナオとダンディズムが話を進める中、私の視界に台詞の選択肢は浮かび上がらないものの、依然として口は麻痺し自由に喋る事が出来ない。
「しかし、如何に無理やり奪われたからと言って、殺してしまっては君達が衛兵に捕まってしまうだけだよ。」
「そこは仕方ない、俺達は本気だ。」
仕方なくあるかい!
モナオが勝手に暴走し話を勝手な解釈で進めているのを目の当たりにして、私の怒りは再度燃え上がっていた。
「んー、そうだ。こういうのはどうだい?君達でモンチロマッチョイの花を探しに行くというのは?」
ここで私の視界に選択肢が現れる。
▶『どこにあるのか知っているんですか?』
▷『隠したって無駄だ。大人しく出さないと痛い思いをする事になるぜ』
▷『ひとまず私の家がそこにあるから、傷の手当をしながら考えよう』
下の二つは要らないよ…
「どこにあるのか知っているんですか?」
私は久々に声が出せた事に、少し感動した。
「大体の場所は、知っているんけどね。問題は、いくつかあるんだ。」
ダンディズムは少しもったいぶる様に丁寧に説明してくれる。
まず、大凡の生息地が判明しているにも関わらず、採取量が少なく、貴重だとされている点だ。
なんでもモンチロマッチョイは、もの凄く似た花を咲かせる、モンタロメッチョラという花の中に紛れ咲いているとの事。
専門家でも無い限り、見分ける事が不可能に近い程近似しているらしく、モンタロメッチョラをモンチロマッチョイと偽って売る悪どい商人も居るらしい。
次に、その生息地だ。
王国領内のほぼど真ん中に位置する王都より、東寄りある現在私達が居るヤーの街。
そこから10km程北上すると見えてくるが三大砦の一つ、防衛拠点ガルガン砦。
三大砦って言うのは、魔王が居座る嘆きの山から南北に15km程の間隔で築かれている砦と、東西に伸びる城壁の事で、ガルガン砦は最も山から離れた砦の名称。
左右に築かれた城壁はかなり長く、その中でも一番長いとされるガルガン砦の城壁は、東はフルブライト領の最西端、西はヴィガルド領の最東端まで連なってる。
砦や城壁自体は、嘆きの山に居る強力な魔物の進行を食い止める為にあるし、私達を守ってくれているありがたいものだからいいんだけど、砦と城壁のこちら側に居る魔物は強すぎないにしろ、数がとても多い。
長くなったけど、要するに沢山の魔物と対峙しながら、紛れ込んだレアフラワーを探さないと行けない。
私は言葉を発せなかったが、内心では『いや無理』
って叫んでた。
「ギルドに行けば、採集パーティの募集を出せるけど、魔物の遭遇率の高さから、集まりは毎回悪いらしいし、メンバーが居るからって見つかるものでもない。でも、どうしても必要なのなら、自分達で行くべきだろうな。」
なんだろ、それならいっそ奪ったチンピラを殺して取り戻した方が早い気がしてきたな。
ん?
▶『行こう!ガルガン砦に!』
▷『まずはメンバー集めにギルドへ行こう』
▷『ひとまず私の家がそこにあるから、傷の手当をしながら考えよう』
……ん、いや、良いの。
展開が進んだんだし、チンピラ殺す選択肢はもう使っちゃったんだし…
せめて、選択肢逆に配置しておいてくれないかなこれ。
イベントに飽きて、一番上の台詞吐きまくってたら詰むやつじゃん。
どのみち、トモが居たとしても、戦えるのが私だけってのは厳しいな。
かと言って、私と一緒にパーティーを組んでくれそうな冒険者がこの街に居るかと言われれば、そっちの方がモンチロマッチョイの花を見つけるより難しそう。
それでもそれしか道が……あっ!
あっ!だよ!あっ!
居た!居た居た!
お花に詳しくて戦えそうな人が居た!
そう、私の頭の中に出てきた人物とはイノイチさんの事だ。
植物学者って言ってたし、見るからに強そうだし、言うこと無しじゃん!
……でもなぁ、人と待ち合わせをしてるって言ってたし、忙しそうなんだよなぁ…付いて来てくれたらいいんだけど…
んもー!うだうだやってても意味無いし、一縷の望みにかけてアタックするしか無い!
明日の昼、もう一度ギルドに行ってお願いしよう!
そうなると、今ギルドに行って、この選択肢が消えるのも危ういから、選ぶとしたら不本意すぎるけど、これしかない。
『ひとまず私の家がそこにあるから…き、傷の手当をしながら考えよう…』
「分かった!行こう!」
「うん、よく考えて決めると良いよ。こっちでも何か手立ては無いか考えておくから、行くにしても行かないにしても、明日もう一度来て欲しい。」
上手く返答できる選択肢が無かった為、私は笑顔で何度も頭を下げる事をお礼に代え、トモとモナオを連れ帰路を進んだ。
まだ日は暮れるには早く、なんでこんな事態になっているのかを考え、落ち込むには十分な時間がありそうだった。
「あ、お姉ちゃん!お帰りなさい!早かったね。」
家の前にまで来ると、シュナが外の階段に座っていた。
魔法学校が終わるには早いけど、何かあったのだろうか。
自由に喋る事が出来ない私は
笑顔でシュナを抱きかかえながら家の中に入る




