えぴそど246 殺意の波動
「ひぐっ…えぐっ…」
私は絶賛半泣き状態に陥っている。
「ひぐっ…よ…よし…わかった…だい…じょう………ぶ……えぐっ…わたし…に…まかせ………て…」
断っておくけど、無茶苦茶不本意です。
「本当かい?君、ありがとう。」
青年は、目を輝かせる雰囲気を醸しながらも、輝いてない瞳で手を差し出してきた。
ほんと気持ち悪ぃわこの人。
▶『私の家がそこにあるから傷の手当をしよう』
▷『薬草を売ってた所に行ってみようよ』
▷『チンピラを探しに行こう』
………まだ続くのこの選択肢…
んで、一番上は嫌に決まってるでしょ。
んーどうしようかな…つか、先に自己紹介とかするでしょ普通…ん?
▶『私の家がそこにあるから傷の手当をしよう』
▷『薬草を売ってた所に行ってみようよ』
▷『チンピラを探しに行こう』
▷『私の名前はメイエリオ。貴方の名前は?』
増えたんだけど!!
選択肢増えたんだけど!
え!?なに、私の思考が読まれてるの!?え!?やだ!
「わ…私の名前はメイエリオ…貴方の名前は…?」
「オレ、ナマエ、モナオ。ヨロシク。」
もっと元気よく挨拶せんかいモナオー!
こんなか弱い女の子の手を煩わそうとしてるのに、何他人事みたいなテンションで通そうとしてんのこいつ!!急な片言もキモいし、まじでうっざ!
▶『私の家がそこにあるから傷の手当をしよう』
▷『薬草を売ってた所に行ってみようよ』
▷『チンピラを探しに行こう』
「薬草を売っている所に行ってみようよ…」
「分かった。こっちだ、付いてきてくれ。」
私はここに連れてきたトモを少しだけ睨み、バツの悪そうに目を逸らしたトモに乗ると、モナオの後ろに付いて行った。
表通りに出る道を進んで行く中、私の目の前にはずっと選択肢が表示されている。
選択肢以外の言葉を喋ろうとすると、口の中だけ麻痺したかの様に重くなり、上手く発音が出来ない。
ともかく、一刻も早くこの変なイベントを終わらせる為にも、薬草を手に入れ、モナオに渡して逃げるしかない。
幸い、ユージリンやヤッパスタ達とダンジョンに潜り続けていたお陰で、金銭的な余裕はかなりある。
始めて聞いた薬草だし、いくらになるのか全く想像出来ないけど、盗品をお金に変えて手に入れられるのだ、大したことは無いと思う。
「着いた、あそこだ。」
完全に表通りの人混みを進む中、モナオが立ち止まり、指を指した方向を見ると、そこには花が並べられた露店があった。
モナオはそのまま露店に向かった為、私もトモから降りて店の前まで付いていく。
すると、そこには私に王冠花をくれた、あのダンディズムが立ってた。
「あー!もご!むごもご!」
喋れないわ…分かってたけど…
「やあ、いらっしゃい。ん?君は朝の…」
喋られずとも身体は動くので、私は精一杯の笑顔で頭を振り、肯定の意を表現した。
「それで、どうしたんだい?何か買ってくれるのかい?」
私は無理やり我に戻り、選択肢に意識を戻した。
▶『モンチロマッチョイの葉を下さい』
▷『私の家がそこにあるから傷の手当をしよう』
▷『チンピラを探しに行こう』
こんなん一択だ。
「モンチロマッチョイの葉を下さい!」
私はモナオを押しのけ、ダンディズムに向かい叫んだ。
すると、ダンディズムは少し困った表情を見せながら、申し訳無さそうに頭を掻く。
「ごめんよ。モンチロマッチョイの葉は、先刻彼に売ったもので最後だったんだ。あれはとても貴重なものでね。次の入荷がいつになるのかも分からないんだ。
」
まじかー
何となく、なんとなーくは想像してたけど、まじかー
ん?
▶『隠したって無駄だ。大人しく出さないと痛い思いをする事になるぜ』
▷『チンピラを殺しに行こう』
待て待て、ザ・物騒だわ!
なんで!?いきなりなんでこんな物騒な選択になったの!?言うわけ無いじゃん!この人の前で!
私はとりあえず、ダンディズムから距離を取ろうと、頭を何度も下げ謝りながら、申し訳無さそうにモナオの腕を引っ張り、その場を離れようとした。
が…
いかんせんモナオが動かんのじゃぁ!
いつの間に大地に根付いたの!?
ねぇ、何このうんともすんともしない硬さは!
モナオの腕を引っ張るも、モナオはダンディズムを眺めたまま微動だにしない。
女とは言え、日頃鍛えている私の筋力が、こんなもやし小僧に劣るとは思えない。
これは、やっぱり…
選択肢を選んで、次のシーンに進めということなのだろうか…
私はもう一度選択肢に意識を向ける。
▶『隠したって無駄だ。大人しく出さないと痛い思いをする事になるぜ』
▷『チンピラを殺しに行こう』
いや、無理だわー
どう転んでも、これ私の印象最悪になるんですけどー
どうせ悪くなるんでも、ダンディズムを脅迫するよりはマシかと、下を選ぶしか無いのが辛い…
幸い周りは雑踏、モナオには聞こえる位で、尚且ダンディズムには届かない程の声量調整をするしかない。
「チンピラを…」
「チンピラ?」
もーばっちし耳良いじゃーんダンディズムー!
もういいや面倒臭い!
「チンピラを殺しに行こう!」
「ああ!そうしよう!」
私が吹っ切れた状態でそう言うと、ガン無視決め込んでたモナオがこちらに振り返り、拳を握った。
くそきめぇ…
この不快感、チンピラ共にぶつけるしかない。
周りを歩いていた一般人の方の冷たい視線も感じながら、私はさっさとこの場を離れようとトモに乗り指示を出す。
「ちょ、ちょっと待ちなよ君。随分怖い事を叫んだけど、良かったら話を聞かせてくれないか?」
血走った目を見開き
殺意の波動に飲み込まれた私の腕を
ダンディズムが掴んだ
・
・
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「メイエリオだーーーーー!!!うがー!」
「シュ、シュナだよ。お、落ち着いておねぇちゃん(汗)」
「次回のカマ切り戦士はー!!!なんなんだーこれー!もういやー!台詞くらい自分で考えさせてー!」
「た、大変だよね。頑張っておねぇちゃん(汗)」
「もうほんと意味が分からないの!わ・か・ら・な・い・のー!ぎゃー!モンチロマッチョイってなにー!?」
「駄目だ…おねぇちゃんが壊れた…」
「ほんとあと数話この状況が続いたらトモを使ってこの街ごと壊滅してやる!」
「うわーん!おねぇちゃん戻ってきてー!」
「次回!泥酔社畜は異世界召喚でカマ切り戦士になる!【えぴそど247 花を求めて三里】って、探しに行くんかーーーーーい!!」
「さ、三千里じゃなくて良かったねおねぇちゃん(汗)」




